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旧ソ連憲法評注(連載第25回)

2014-11-15 | 〆旧ソ連憲法評注

第百十七条

ソ連最高会議代議員は、ソ連大臣会議、大臣およびソ連最高会議の設置するその他の機関の指導者にたいして質問をおこなう権利をもつ。ソ連大臣会議または質問をうけた公務員は、三日以内にソ連最高会議の当該会期において、口頭または文書で回答をする義務をおう。

 本条及び次条は、最高会議代議員の権利・特権に関する規定である。ソヴィエト代議員全般の権利・特権に関しては、第十四章に総則規定が置かれているので、本条以下の二か条は、最高会議代議員に関する特則という位置づけとなる。
 本条は特に最高会議代議員の質問権とそれに対する迅速な回答義務に関する規定である。ただ、回答期限として三日以内という制約は厳格すぎ、回答が形式に流れる恐れがあったであろう。実際のところ、最高会議自体が形式的な共産党追認機関と化していた中で、こうした個々の代議員の質問権がどの程度実効的に行使されていたのかは疑問である。

第百十八条

ソ連最高会議の代議員は、ソ連最高会議の同意がなければ、刑事訴追をうけ、勾留され、または裁判手続きによる行政罰の処分をうけない。ソ連最高会議の会期と会期のあいだは、この同意はソ連最高会議幹部会があたえる。

 第百六条は人民代議員全般に不逮捕特権を与えていたが、本条は最高会議代議員について、最高会議(会期間は最高会議幹部会)の同意なき限り、刑事訴追や行政罰まで免除する特権を保障する特則である。憲法上はソ連の最高権力機関と位置づけられた最高会議代議員の任務の重要性を考慮し、刑事罰・行政罰からの特別な保護を与える趣旨と見られる。


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