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旧ソ連憲法評注(連載第22回)

2014-11-01 | 〆旧ソ連憲法評注

第十四章 人民代議員

 本章では、ソヴィエトの構成員である代議員の任務や権限についての通則がまとめられている。

第百三条

1 代議員は、人民代議員ソヴィエトにおける人民の全権代表である。

2 代議員は、ソヴィエトの仕事に参加し、国家建設、経済建設および社会的、文化的建設の問題を解決し、ソヴィエトの決定の実施を組織し、国家的な機関、企業、施設および団体の仕事の監督を行なう。

3 代議員は、その活動にあたり、全国家的な利益にみちびかれ、選挙区の住民の要求を考慮し、選挙人の訓令の実施につとめる。

 ソヴィエト代議員は人民の代表であるが、命令委任制のため、単なる代表ではなく、訓令に従う義務があった。一種の職能代表制でありながら、選挙区制も採るため、第三項が定めるように選挙区代表として地元選挙民の要求も考慮する必要があるなど、その性格付けはやや曖昧である。

第百四条

1 代議員は、本来の勤務または職務をつづけながら、その権限を行使する。

2 代議員は、ソヴィエトの会期中および法律の定めるその他の場合に代議員としての権限の行使のため、勤務上または職務上の義務の履行を免除され、常時勤務の場所から、自分の平均賃金を支給される。

 ソヴィエト代議員は専従職業ではなく、一つの任務であった。これは、ブルジョワ議会の議員と大きく異なる点である。そのため、本職にとどまることは当然であり、会期中は休職が認められるとともに、給与も本来の職場から支給された。

第百五条

1 代議員は、該当する国家機関および公務員に質問する権利をもつ。質問をうけた国家機関および公務員は、ソヴィエトの会期において回答する義務をおう。

2 代議員は、すべての国家的および社会的な機関、企業、施設および団体にたいし、代議員活動から生ずる問題をしめし、その提起した問題の審理に参加する権利をもつ。当該の国家的または社会的な機関、企業、施設または団体の指導者は、遅滞なく代議員と会い、定められた期間にその提案を審理する義務をおう。

 本条は、代議員の質問、問題提起の権限を定めている。これは、ソヴィエトにオンブズマン的な監察機能が期待されていたことに相応する権限である。

第百六条

1 代議員は、支障なく、効果的にその権利を行使し、義務を履行するための条件を保障される。

2 代議員の不逮捕特権および代議員活動のその他の保障は、代議員の地位にかんする法律ならびにソヴィエト連邦、連邦構成共和国および自治共和国のその他の法令が定める。

 本条は、代議員活動の保障に関する規定である。不逮捕特権が認められる点はブルジョワ議会の議員と同様である。

第百七条

1 代議員は、自分の仕事およびソヴィエトの仕事について、選挙人ならびに自分を代議員候補者に指名した集団および社会団体に、報告する義務をおう。

2 選挙人の信頼にそむいた代議員は、任意のときに、法律の定める手続きにより、選挙人の過半数の決議によって、リコールされる

 非職業性と並び、ソヴィエト代議員の特色を示すのが、このリコール制度である。これは命令委任制の現れである。


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