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共産教育論(連載第23回)

2018-12-10 | 〆共産教育論

Ⅳ 基本七科各論

(6)生活技能
 生活技能科目は、日常生活における基本的な衣食住に関わる知識と技能を学ぶ科目である。共産主義社会では各人の生活体験に根ざす判断力が重視されるため、日常生活の基本技能を学ぶ生活技術教育は一般教科と同等の重要性を持つ。
 全般に、資本主義下でもたらした技術革新は利便性を偏重し、自分の手で何かを作ったり、直したりする体験を子どものうちから奪った結果、人間はその本来の創造性を失いつつあるように見える。一方で、利便性を促進する機械化・自動化の波を押し戻すことは、共産主義革命といえども無理であり、日常的に使用する機械を正しく安全に操作する訓練も重要である。
 そうした観点から、伝統技能と先端技術が複合された社会における生活人としての素養を涵養することが、当科目の目的と言える。その目的に沿って、当科目は衣食住に関する伝統的な技能を学ぶ「伝統技能分野」と情報機器の扱いに関する「情報技能分野」とに分けられる。
 前者の「伝統技能分野」では、衣食住に関わる日常的な生活技能全般を学ぶ。具体的には家事・育児・介助や簡単な日用大工仕事、さらに清掃などである。ここでは、男子=技術・女子=家庭といった性別役割論に基づくカリキュラムは採用されず、かつ将来家庭を持つ/持たないにかかわらず、およそ生活人としての基礎的な生活技能の習得が目指される。
 この分野は内容的には盛りだくさんであるが、基礎教育課程の初等段階では清掃や簡単な物作りなど子どもとしての生活技能から始め、中等段階以降、次第に家事・育児など独立した生活人としての生活技能へと発展させていく。
 一方、「情報技能分野」は社会道徳科で学ぶ情報倫理を除いた情報の技術的側面に関する総合分野であり、コンピューターの仕組みとその基本的な操作法など情報機器の機械的な技能及び情報ネットワークの安全かつ正当な利用に関する基本的な技能を学ぶ。 
 ちなみに、プログラミングの知識と技能も「情報技能分野」の対象範囲であるが、プログラミングに特化したカリキュラムを組むのではなく、それもコンピューターの仕組みに関する総合的な理解の一環としての位置づけとなる。
 基本七科中、最も実学的要素の強い当科目でも、基礎教育課程全般を貫く課題探求型の内発的教育が妥当し、生徒は一斉に同じ課題をこなすのではなく、自ら関心のある課題を発見し、自ら実習するという方法論が採られる。
 なお、当科目の実習に関しては、設備の必要上、一部は通学制で提供されるが、三次元動画を活用した通信教材を導入すれば、当科目もおおむね通信制で実習することができる。「情報技能分野」は生徒各自に支給される専用端末自体が教材である。


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