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続・持続可能的計画経済論(連載追補)

2022-06-08 | 〆続・持続可能的計画経済論

第三部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(5)告知と試行
 およそ経済体制の抜本的な移行は、生産・流通・消費の全サイクルに大きな影響を及ぼすため、経済的な混乱が生じやすい。一挙に移行するショック療法的な方法によった場合は特にそうであるが、漸進的な方法による場合でも、混乱は生じ得る。
 そうした移行期特有の混乱を完全に防ぐ技術的な手立ては存在しないが、混乱を可能な限り最小限にとどめるためには、移行の各段階において告知と試行の手順を踏むことである。
 告知と試行とは、移行過程におけるプロセスの全体像と個別の具体的な施策を解説し、情報開示を十全に行ったうえで、各施策を試験的に施行しながら、移行過程を進行させていくことである。
 中でも、情報開示の意味を持つ告知は、移行過程での混乱を最小限とするうえで重要な鍵となる。個人を含めた経済主体は、告知によって先行きを予測し、準備することができるからである。そうした意味で、告知されることはすべての経済主体にとっての権利であるとも言える。
 告知には大別して、各産業界向けのものと各世帯向けのものとがあるが、いずれも公報や公式ウェブサイト等に一括公開する告示では足りず、書面化して個別に配布する必要がある。それゆえの「告知」である。
 産業界向け告知は、持続可能的計画経済の仕組みと移行過程を詳細に解説した通達文書を通じて、各事業主体に対し、移行に向けた自発的な準備を促すものとする。
 各世帯向け告知は、持続可能的計画経済のもとでの生産と労働、生活全般の仕組みを平明に解説した冊子を全世帯に配布することにより周知徹底し、不安の解消を図るものとする。
 こうした告知を前提に移行過程における個別の施策が計画的に施行されていくが、この移行施策にも、机上演習にとどまる場合と実際に実施される場合、後者にも部分的に実施される場合と全面的に実施される場合とがある。
 その意味で、移行期における施策は試行的であるが、経過期間→初動期間→完成期という移行過程の三段階の中でも、過渡的な経過期間は試行性が最も強く、その後、初動期間から完成期にかけて、全面的な施行へ進んでいくイメージである。

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