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続・持続可能的計画経済論(連載第18回)

2020-07-31 | 〆続・持続可能的計画経済論

第1部 持続可能的計画経済の諸原理

第3章 計画組織論

(4)領域圏計画経済の関連組織
 持続可能的計画経済の最前線となるのは、世界共同体の構成主体である領域圏である。各領域圏は通常、単立し、それぞれが世界経済計画の枠内で独自に経済計画を策定・運用していく経済計画主体ともなる。
 ただし、小規模な領域圏の場合は、単独で計画経済を運営するだけの経済基盤を持たないことが多い。そこで、こうした小規模領域圏は近隣の同規模領域圏またはより大きな領域圏と合同を結成し、合同領域圏という単位で計画経済を運用する。合同領域圏の主たる役割は、こうした共通経済計画の運用という点にある。
  これら領域圏経済計画は世界経済計画における汎域圏の地域計画をベースとして汎域圏内での経済協調を考慮しつつ策定されるところ、そうした汎域圏内経済協調の実務を担うのが五つの汎域圏の経済協調会議である。同会議は汎域圏内で経済協調の対象分野を担う生産企業体の代表者で構成され、汎域圏内の経済協調協定を締結したうえ、汎域圏民衆会議の承認・議決を得る。
 汎域圏経済協調協定に続いて、各領域圏経済計画の策定に進むが、単立、合同いずれの形態であれ、領域圏経済計画の策定機関となるのが、経済計画会議である。これは、旧ソ連の計画経済における中枢機関であった国家計画委員会のような行政機関ではなく、計画経済の適用対象となる生産企業体の共同運営による合議機関である。
 その構制は各生産企業体の計画担当役員を議員とする会議体であり、これに会議を実務的に支える事務局が付属する。会議は、一般、農林水産、製薬の三種類の計画に沿って一般産業部会と農林水産部会、製薬部会が分岐する三部会制であるが、これに消費計画の策定単位となる地方圏(または準領域圏)の消費事業組合の代表部もオブザーバー部会として設置される。
 三部会のうち一般産業部会の内部は、経済計画の基礎となる産業連関表の産業分類におおむね沿った専門部会に分かれ、それぞれ討議のうえで部会ごとの計画案を策定する。農林水産部会も同様に専門部会に分かれるが、製薬部会はそれ自体が専門部会を兼ねる。
 なお、経済計画の前提部分を成すエネルギー計画に関しては、経済計画会議の下部機関として、製油や電力等のエネルギー関連事業体で構成するエネルギー計画協議会が設置され、同協議会が発議するエネルギー計画案について、経済計画会議で審議・議決を行う。
 一方、領域圏の施政に関わる民衆会議も経済計画の策定にノータッチではないが、民衆会議が主導することはない。民衆会議の役割は、経済計画会議が議決した計画を改めて審議し、承認することである。その点、民衆会議と経済計画会議の関係性は、ある種の上院(≒民衆会議)と下院(≒経済計画会議)の関係に相当すると言える。ただし、民衆会議は計画を全面的に否決することはできず、できるのは一部不承認、差戻しのみである。
 なお、合同領域圏単位での経済計画の場合は、合同領域圏に民衆会議が設置されない代わりに、合同の政策協議会が計画の承認権を有することになる。この限りで、政策協議会が単立領域圏における民衆会議に相当する役割を果たす

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