ザ・コミュニスト

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フランコの政治的DNA

2017-11-04 | 時評

腰砕けに終わろうとしているスペインのカタルーニャ自治州独立宣言の事後処理として、スペイン中央政府が州の自治権剥奪、罷免した前州政府閣僚らの検挙・投獄という挙に出ている。

国内的にも国際的にも充分な調整―日本流に言えば根回し―もなく、さりとて篭城してでも最期まで抵抗する覚悟もなしに、独立宣言に突き進んだ州政権にも総辞職に値する政治責任はあろうが、中央政府による報復的な仕打ちも看過できない。

詳細には通じていないが、問題の発端となった州による独立の是非を問う州民投票はスペイン憲法・法令に違反するらしい。とはいえ、そうした形式的な違法性のみを根拠に、治安部隊を投入して投票を妨害し、かつ賛成多数の結果を無視して自治権剥奪、前州政権閣僚拘束という権威主義的強権行使に出るのは、中央集権を強制した旧フランコ独裁体制を髣髴とさせる。

それもそのはず、現在スペイン中央政府の与党に座にある国民党は、フランコ時代のファシスト翼賛政治団体・国民運動を母体とする保守政党である。同党は表向きフランコ主義とは縁を切り、通常の保守政党として活動してきたものの、体内にはフランコの政治的DNAをなお保存していたと見える。それが、スペインの経済的屋台骨でもあるカタルーニャの独立という非常事態に直面して顕在化したのだろう。

しかし、これまでのところ、前州政権幹部が武装反乱などの暴力的行為を煽動、共謀等した形跡はなく、平和的な手法で州民投票を強行したというに過ぎない。それが形式的に法に違反していたとしても、政治的信念に基づく行動であり、かれらを捕らえれば政治犯・良心の囚人となる。

スペインも加盟するEUの共通価値として人権尊重が標榜されている。もしEUがスペイン中央政府の報復的措置を支持・黙認するなら、その標榜の真偽が鋭く問われよう。また、国際的人権NGOsにとっても、沈黙することはダブルスタンダードとなろう。

 
〔付記〕
このところ、カタルーニャやイラクのクルド自治区など、自治地域の独立の動きが活発だが、侵略の結果としての植民地からの独立ならいざ知らず、主権国家からの独立は技術的にも至難である。主権国家は、領土の縮小、経済基盤の喪失にもつながる地域の独立を容易には容認しないからである。
我田引水になるが、こうした「独立」は、国家という枠組みを廃した世界共同体の大枠で、緩やかな合同体を組む合同領域圏のような構想―スペインであれば、カタルーニャを含め複数の独立領域圏が合同した「イスパニア合同領域圏」のようなものを想定できる―において、初めて実現するだろう。

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