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リベラリストとの対話―「自由な共産主義」をめぐって―(8)

2014-08-21 | 〆リベラリストとの対話

6:貨幣経済廃止について②

コミュニスト:前回の対論では、マルクス『資本論』で資本主義的な貨幣経済システムの合理性を反証するというお話でした。

リベラリスト:はい。普通『資本論』は資本主義批判の書として読まれていますが、私はあの本を読めば読むほど、逆に資本主義経済システムの強靭さを感じ、資本主義ってなかなか合理的によくできているものだと感心してしまうのです。ある意味、『資本論』は米国礼賛論です。

コミュニスト:そういう逆さ読みができるかどうかは別として、私も資本主義経済が簡単に崩壊するようなことはないと見ています。しかし、それは資本主義の経済システムが合理的だからではなく、資本主義が自己保存に長けているからだと考えます。

リベラリスト:私は資本主義の強靭さは自己保存うんぬんではなく、そのシステムそのものにあると見ます。マルクスは資本主義貨幣経済のアナーキーさを指摘していますが、実はアナーキーに見えて資本主義は事後調節の仕組みを備えており、「神の見えざる手」ならぬ「人の見えざる手」によって上手く調節されているのです。その調節に欠かせないのが、貨幣流通です。つまり、個人も企業も「財布」の紐で適宜調節するので、需給バランスが総体としては大きく崩れることなく、基本物資やサービスの提供が滞りなく行われているのです。すなわち、資本主義には「計画」の代わりに調節道具としての「財布」がある。

コミュニスト:私はそうした「財布」による事後調節の仕組みも、資本主義の一つの自己保存策とみなしているので、あなたとの相違は視点の位置にあると思います。たしかに貨幣流通を通じた事後調節のシステムは巧妙ですが、実際のところ資本主義は恒常的な過剰生産によって物不足を免れているのです。しかし、過剰生産の裏には在庫の大量廃棄という問題が潜んでいることを忘れてはなりません。

リベラリスト:廃棄物問題は深刻ですが、それも資本主義はリサイクルのビジネス化という形で内在的な解決策を示しているわけで、これはこれでなかなか見事な事後調節だと思いますね。

コミュニスト:リサイクルにも物理的な限界があります。そもそも初めから計画的に生産し、リサイクルで対応しなくて済むようにするのが、共産主義的計画経済の長所です。

リベラリスト:でも、あなたは計画経済の適用範囲を環境負荷的産業に限定し、その余は自由生産‐物々交換に委ねると言っていますね。計画経済外の経済セクターの規模にもよりますが、これでは計画によって事前調整されず、なおかつ「財布」による事後調節もされない、まさにアナーキーな生産活動が立ち現れる恐れもあるのではないでしょうか。

コミュニスト:そこは「自由な共産主義」というキーワードの根幹にも関わるところなので、次回の対論に回したいと思います。

※本記事は、架空の対談によって構成されています。

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