ザ・コミュニスト

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ビン・ラディン以上

2014-06-15 | 時評

第二のビン・ラディン―。イラクで進撃を続け、首都を窺うまでになっているイスラーム原理主義組織「イラクとシャームのイスラーム国」指導者のアブ·バクル·アル·バグダディ師は、今やそう呼ばれている。

だが、彼が率いる組織は、米軍が法に基づかずに事実上処刑した初代ビン・ラディンのアルカイダとは異なり、明確に「国」を名乗っている。よって、これは単純な武装過激派集団ではなく、明確にイスラーム国家樹立を目指す革命組織と言えるだろう。

この組織は、シリア内戦にも参戦して戦闘能力をつけた後、出身地イラクの政情不安を利用して、ひとまずイラクで武装革命によるイスラーム国家の樹立を目指しているようである。となると、バグダディ師はビン・ラディン以上の存在となり得る人物である。実際、彼は本記事から2週間後、「カリフ」就任を宣言した。

これが、10年前のイラク戦争及び近時のシリア介入の結末である。欧米の介入があったところ、内戦と過激派を生み出す。これは、東欧のウクライナを含め、ほぼ法則と言ってよい。

元来イラクとシリアは対立的ながら、共に世俗主義のバース党社会主義独裁政権が長く統治してきたが、これを嫌悪する欧米は武力で介入し、イラクの政権は打倒、シリアの政権についても打倒を目指している。

欧米は隣接する両国に議会制と資本制のセットを移植して、自国資本の進出先にしようと目論んでいるわけだが、その目論見は完全に外れている。

元来、宗派対立の激しい中東で議会制党派政治を安易に導入すれば、戦後イラクのように政党は宗派別に形成され、多数宗派の支配が強まる。それは市場経済化に伴う経済的利権も絡んで宗派対立を激化させる。弊害を伴いつつも、社会主義独裁体制が強制安定化装置となってきたことには理由があるのだ。

そうした中東の特殊性を無視して、欧米式の政治経済構造の強制を性急に目論むことで、かえってイスラーム原理主義という欧米が最も望まない体制の出現を見ようとしているのだ。

そろそろ欧米も気がついてよい頃だが、欧米の経済的覇権主義と中東の政治的過激主義は共に社会主義を忌避し、互いを利用し合う敵対的共犯者関係に立っている。この共犯行為による犠牲者は、中東の一般民衆である。

ちなみに、日本の集団的自衛権が解禁されれば、イラクに現実にイスラーム原理主義国家が樹立され、石油権益防衛を図る欧米がこれに対する戦争を開始した場合、集団的自衛権に基づき、日本自衛隊が参戦するという事態も想定される。 

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