黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ギフト』日明恩(双葉社)

2008-07-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
過去に犯した、ある過ちの贖罪に生きる男・須賀原。アルバイトをしているレンタルビデオ屋で、ホラー映画の並ぶ棚の前で立ち尽くしたまま、涙をこぼしている中学生の少年の姿をみた須賀原は、たびたび訪れるその少年のことが気にかかっていた。
そんなある日、町の横断歩道に飛び出したその少年を助けた須賀原は、そこで血まみれの老女を見てしまう。周囲の人には見えていないらしいその様子から、彼女は死者であると察した須賀原。しかもその姿が見えるようになったのは、どうやら少年の影響で、少年にもその姿が見えているらしい。やがて、昔のつてを使い、その老女が溝口稔子という名であるとつきとめた須賀原は、彼女が耳が遠い為、補聴器を使っていたものの、物忘れが激しくその電池を入れ忘れてしまったことから、音が聞き取れずに事故にあったのだと知るが……『とおりゃんせ』、
8日後。助ける為に飛び出した折、割れてしまった卵を約束通りに持って、店に現れた少年だったが、須賀原の姿を見た途端、何故か逃げ出してしまう。理由を訊ねると、彼のそばに虐待されて殺された犬がいるのだという。そんな犬の為に須賀原は……『秋の桜』、
少年の名前は、橋口明生。幼稚園の頃から死者たちの姿が見えており、それ故の苦悩から、見えないふりをしていたという打ち明け話を聞いた須賀原。そんな2人の前に、びしょ濡れの少女が現れ、“たぁくん”“宝箱が見つからない”という2つの言葉を繰り返す。そこから彼女の正体が、19年前に、自宅の庭の池に落ちて亡くなったらしい、江島医院の娘・美沙であることにたどり着いた須賀原。たぁくんというのは、当時生後1ヶ月だった弟の隆のことらしい。彼女の“宝箱”を探し当て、その中身を知った須賀原は……『氷室の館』、
突然2人の前に現れ、自分の主張をまくし立てる死者・小川圭子。派遣社員として働いており、周囲の誰より有能だったと自称する彼女。派遣先の石山久敏に当てつけて、狂言自殺をはかるつもりが、本当に死んでしまったらしい。彼女の死の真相について調べることになった須賀原たちは……『自惚れ鏡』、
アメリカに留学することになったという明生。その前に、つきあってほしい場所があるという彼とともに向かったのは、須賀原が償いを続ける、ある家だった。かつて警察官であった彼は、自転車にいたずらをしている少年・宇田川正義の姿を目撃。逃げた彼を追った為に、正義は交通事故にあったのだった。そんな彼は、2人が見に行った現場で、今でもその事故の様子を繰り返していた……『サッド・バケイションズ・エンド』の5編。

死者を見ることができる少年と、彼との接触によってのみ見ることができるようになった男が、死者の声を聞き届け、その思いを叶えようと奮闘するお話。
両親にさえ理解されない明生が、実に切ないです……;
須賀原に理解されたことで救いにはなったと思うのですが、もうちょっと明るい未来を彼にあげたいですね。

<08/7/6>


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