黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『薄い街』佐藤弓生(沖積舎)

2013-04-26 | 読了本(小説、エッセイ等)
昭和八年、発表された左川ちかの散文詩『暗い夏』に登場する、ミドリという名の少年について語る……“少年ミドリと暗い夏の娘”、
「新世界交響楽は耳に雪触れくるようでしたか、ジョバンニ」
「ひとりまたひとり幼い妖精を燃やす市あり夜と呼びたり」
「弥生尽帝都地下鉄促促と歩行植物乗り込んでくる」
「花器となる春昼後刻 喉に挿すひとの器官を花と思えば」
「西空に草のかんむりいただいて逝ける王女の脾臓の茜」
「きたれ、きみ、むすうの薔薇がむこうからみつめる夜を掻きわけながら」
「五月五日わたしはふいごのようである風が枝踏む森に抱かれて」
「暮れながらたたまれやまぬ都あり <とびだすしかけえほん>の中に」
「ひらいたらただただしずか そしてまたたたんかたたん各駅停車」
「復讐はしずかなるもの氷たち製氷室に飼いならされて」……“コラージュ・新世界より”、
「六月は薔薇の月だとたれか言い、いとも渇ける薔薇シャルトルは」
「自らに短き影をおとしつつ塔はまひるを過ぐる旅びと」……“逗留記”、
「、と思えばみんなあやしい……このなかの誰かが死者である読書会」
「ボビンから糸を繰り出す音すんと少女時間を蜻蛉がよぎる」
「夏の朝なんにもあげるものがない、あなた、あたしの名前をあげる」
「うつくしいうみうし増えて増えて増えて増えて人を憎んでいる暇なんか」
「手ぶくろをはずすとはがき冷えていてどこかにあるはずの薄い街」……“パレード・この世をゆくものたち”を収録。

第三歌集。第一歌集の『眼鏡屋は夕暮れのため』から読みたかったのだけれど、入手困難っぽいので、まずはこちらから。
いくつか気になる歌を抜き出してみましたが(たくさんありすぎて、途中で疲れて挫折するくらい…)、ちょっと幻想寄りの作風が好みです♪
タイトルは足穂に由来。

<13/4/26>


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