黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『箪笥のなか』長野まゆみ(講談社)

2008-10-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
海辺の町にある親戚の家でもてあましているという、古い、紅い箪笥をゆずりうけることにした“わたし”は、弟の車で引き取りにいくことに。
子どものころ、親戚の家に一晩やっかいになったことがあり、姉弟があてがわれたのはその箪笥の置かれた部屋だった。幼いころから、目にみえないものの存在を感じ取ることの多かった弟は……『箪笥のなか』、
引き取った箪笥を見たいという、老婦人の訪問を受けたわたし。彼女は、かつて山猫女を演じた女優だったという。その晩、箪笥の小ひきだしをあけたわたしは、そこに黒く、つややかな獣の衿まきと乳白の珠をつらねた首かざりを見つけ、弟に相談する……『鳩のパン』、
弟が夕食にやってきた。招待したのを忘れていたわたしは、あわてて彼が好きなアサリを買いに出かけるが、その道で小さな仙人の話をする男女から、落ちていた財布を手渡される。そこに入っていたのは、小さな手鏡と貝のボタンで……『真珠採り』、
アーケードで大家に出喰わし、実のついたざくろの枝をもらったわたし。白ワインを入れた花びんに挿して、箪笥のうえにかざっていたが、目をはなしたすきに花びんが倒れてしまう。ところが箪笥にぬれた様子はなく、コウモリのかざり金具のついた小ひきだしの中には、いつのまにか、“お菊虫”と呼ばれるジャコウアゲハのさなぎがいて……『岸辺』、
訪ねてきた母が、閉まりが悪い箪笥がはんぱにあいているのを見つけ、布をかけておくようにと忠告。修繕を頼むことにしたわたしは、以前真珠の指輪を買った古物商・千石屋から、箱屋を紹介されるが、あいにく親方は留守。代わりに弟子らしき若者がきたが、彼曰く、この小ひきだしは別の箪笥のものだという……『箱屋』、
雨の夜。足にウロコが刺さったわたしは、朝になり、箪笥の前でもウロコを発見。
冷たい雨のなか、弟夫婦は息子・ハトをつれて遊びにきたが、箪笥のそばに近づくと泣き出してしまう。蛇の気配を感じるという弟。そんな中、箪笥が開かなくなってしまい……『蛇の目』、
箱屋に、箪笥の拭き漆をぬりなおしてもらうことにした、わたし。一緒にやってきた大家はわたしの刷毛をみた、亡き夫からコハクの手袋を買ってもらった思い出をかたる。その後、刷毛を買いに出たわたしは、ショーウィンドウの飾り付けをする人たちが小さな珠をばらまく音をきいて、かつてデパートで弟とともにで出会った女性を思い出す……『琥珀』、
正月。箪笥へのお年賀といい、真綿の束を抱えてあらわれた弟。真綿といえば、綿帽子。どこか男っぽい雰囲気の箪笥には、嫁が必要なのではないかと思うわたし。そんな中、白い文鳥が一羽迷い込み……『雪鳥』、
小ひきだしに四角く真綿を詰め、その中に白羽二重でくるんだまゆ玉をひとつしまいこんだ……箪笥の嫁候補として。ところが開けてみると、いつのまにかまゆには穴があき、カイコ蛾は逃げ出していた。そんな中、頼まれた画を描く為に碁盤を借りてきたわたし。ところがその仕事中に、見知らぬ人が訪ねてきて……『くちなし』、
桃の節句が過ぎたころ、わたしの元に遊びにきていた弟は、出かけた折にごみ捨て場に捨てられていた女ひなを拾ってきた。そんな中、ひな人形をかざっていた義妹の実家で、鳩の焼き物の人形が行方不明に。ハトがそれを飲んでしまったのではないかと義母から電話があり……『貝びな』、
紅い箪笥と同じ、蝶のかざり金具のついた小ひきだしが見つかったと、千石屋の若主人がやってきた。彼が預かったコウモリの箪笥に入っていたもので、同じ職人の手によるものらしい造形だという。それが本来、彼女の箪笥に収まるはずの小ひきだしなのではないかというのだが……『花ふる』の10編収録の連作短編集。

もらってきた古い箪笥の周囲で起こるさまざまな不思議な出来事と、主に弟との幼い日の思い出を振り返る女性(30代独身のイラストレーター?)“わたし”が語る幻想譚。
文庫版で再読しました。
何か雰囲気が違うような…と思っていたら、文字の表記が変わっていたのですね(思わず、単行本と比較してみましたが、使用されていた漢字が、簡単な漢字や、ひらがなやカタカナに変わってました)。
確かに読み易く、やわらかい印象にはなっているのですが、あの独特な漢字使いが長野作品の特徴(醍醐味?)だし、特にこの作品に関してはそれが古めかしいような不思議な場を創り出している感じがするので、ちょっと物足らない感が;

<08/10/6>


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