謎めいた出自の女性棋士・灰原由宇。彼女が囲碁を覚えたのは、四肢を失ってからだという。
肉体感覚が碁盤上にあるという彼女と、九段まで昇りつめたプロ棋士でありながら彼女の為に現役を退き、代打ちとなった相田淳一との関わりについて取材しているジャーナリストの「わたし」。
東京生まれだった由宇は、中学の卒業旅行で中国を訪れた折、土産物屋で一服盛られ、気がつくと四肢を失い、病院にいた。その後、賭碁師の馬に買われ、捕らわれの身に。やがてその環境から抜け出すべく碁を覚え、やがて能力を見いだされて、プロ棋士の相田に出会い、帰国。
その後、初の女性本因坊となるなど活躍したが、わずか数年で引退していた……『盤上の夜』、
チェス盤を使ったチェッカーというゲーム……チェスより軽視されがちなそのゲームにおいて、42年の長きにわたり、無敗を通したチャンプ、マリオン・ティンズリーは、アルバータ大学のシェーファーの開発したプログラム、シヌークに敗れる。完全な敗北というわけではなかったが、2007年、さらにシェーファーは完全解に至ったと発表し、そのゲームは葬り去られた。
そんなティンズリーにインタビューする「わたし」。無敵さ故に、人間に相手のいなくなった彼は、シヌークとの勝負を楽しんでいたという……『人間の王』、
麻雀連盟の歴史から消された幻の対局……白鳳位戦第九回。公式には前年の八回までしか記録されていないという。
卓を囲んでいたのは、アマチュアとして勝ち残ってきた三人と、プロが一人。
ひとりは、謎めいた打ち筋の主である、新興宗教団体<シティ・シャム>の代表、真田優澄。
ひとりは、アスペルガー症候群であり、確率計算や統計演算について天才(サヴァン)的な能力を持つ九歳の少年、当山牧。
ひとりは、工事現場での事故により前向性健忘となって以降、打ち方が変わったというプロの新沢駆。
そしてもうひとりは、精神科医で、優澄の主治医で婚約者でもあった赤田大介。
優澄の魔法めいた手により、ペースを乱された三人は、ある作戦を企てる……『清められた卓』、
コーサラとマガダという、二つの大国に挟まれ存在する、辺境の小国・カピラバストゥ。その最後の王子、ゴータマ・ラーフラ。優れていた父・ブッダは彼が幼い頃に国を出、信仰の道を歩んでいた。父と比較されながら育ったラーフラだったが、両者には決定的な違いが存在した。
ある時、新たなゲームを思いついたラーフラだったが、周囲の人々からはそのルールを理解されず、人知れずその夢想する。
大国との殺戮を回避すべく、さまざまな提案をするがうまくいかず苦心する中、一人の男が現われ……『象を飛ばした王子』、
北海道の孤児院で育った葦原兄弟…兄の一郎と、弟の恭二は、後継者を望む資産家の織部家に引き取られた。しかし織部家の娘・綾に引き摺られ、爛れた享楽の生活を送ることとなった彼らは、落合の平屋に隔離され、綾は半ば勘当のような処遇とされていた。
やがて二十歳を過ぎ、落ち着きを取り戻した綾は働き、最初の給料で両親との食事を持ち掛けたものの拒絶され、その折、綾が兄弟の夢を叶えられるかという賭けをすることに。勝ったら人間として認めて欲しいと。
その後、弟の恭二は、将棋の才能を現し棋士へ、一方の一郎は政治家となり、さらに量子歴史学という分野を立ち上げた。その背後には綾の尽力があった。しかし……『千年の虚空』、
由宇の名義で発刊された本のライティングを手がけていた「わたし」。
その後、数々のタイトルも奪取し、一躍時の人となっていた棋士・井上隆太から、相田がアメリカのシアトルにいるらしいと聞かされる。由宇もまたアメリカにいるのかと推測され、井上と共にアメリカに飛んだ。
原爆の落ちたまさにその日、広島で打たれていたという対局の棋譜を持ち……『原爆の局』の6編収録。
表題作は第1回創元SF短編賞・山田正紀賞受賞作で、直木賞候補作。
それぞれにゲームをモチーフとした短編集(『象は~』はチャトランガという、将棋などの元になったゲーム)。概ね同じ人物がインタビュアー的に登場してます。
ゲームを扱った作品といえば、竹本健治さんの牧場くんのシリーズや最近では『サラの柔らかな香車』などがありますが、遊びや競技としてのゲームというよりも、もっと観念的な、人生の縮図というか、世界の理の縮図的な意味合いっぽい、かな。
幻想小説寄りな雰囲気かも(精神的に不安定な登場人物が多いので、若干引きずられるからかも…)。
<12/8/5,6>
肉体感覚が碁盤上にあるという彼女と、九段まで昇りつめたプロ棋士でありながら彼女の為に現役を退き、代打ちとなった相田淳一との関わりについて取材しているジャーナリストの「わたし」。
東京生まれだった由宇は、中学の卒業旅行で中国を訪れた折、土産物屋で一服盛られ、気がつくと四肢を失い、病院にいた。その後、賭碁師の馬に買われ、捕らわれの身に。やがてその環境から抜け出すべく碁を覚え、やがて能力を見いだされて、プロ棋士の相田に出会い、帰国。
その後、初の女性本因坊となるなど活躍したが、わずか数年で引退していた……『盤上の夜』、
チェス盤を使ったチェッカーというゲーム……チェスより軽視されがちなそのゲームにおいて、42年の長きにわたり、無敗を通したチャンプ、マリオン・ティンズリーは、アルバータ大学のシェーファーの開発したプログラム、シヌークに敗れる。完全な敗北というわけではなかったが、2007年、さらにシェーファーは完全解に至ったと発表し、そのゲームは葬り去られた。
そんなティンズリーにインタビューする「わたし」。無敵さ故に、人間に相手のいなくなった彼は、シヌークとの勝負を楽しんでいたという……『人間の王』、
麻雀連盟の歴史から消された幻の対局……白鳳位戦第九回。公式には前年の八回までしか記録されていないという。
卓を囲んでいたのは、アマチュアとして勝ち残ってきた三人と、プロが一人。
ひとりは、謎めいた打ち筋の主である、新興宗教団体<シティ・シャム>の代表、真田優澄。
ひとりは、アスペルガー症候群であり、確率計算や統計演算について天才(サヴァン)的な能力を持つ九歳の少年、当山牧。
ひとりは、工事現場での事故により前向性健忘となって以降、打ち方が変わったというプロの新沢駆。
そしてもうひとりは、精神科医で、優澄の主治医で婚約者でもあった赤田大介。
優澄の魔法めいた手により、ペースを乱された三人は、ある作戦を企てる……『清められた卓』、
コーサラとマガダという、二つの大国に挟まれ存在する、辺境の小国・カピラバストゥ。その最後の王子、ゴータマ・ラーフラ。優れていた父・ブッダは彼が幼い頃に国を出、信仰の道を歩んでいた。父と比較されながら育ったラーフラだったが、両者には決定的な違いが存在した。
ある時、新たなゲームを思いついたラーフラだったが、周囲の人々からはそのルールを理解されず、人知れずその夢想する。
大国との殺戮を回避すべく、さまざまな提案をするがうまくいかず苦心する中、一人の男が現われ……『象を飛ばした王子』、
北海道の孤児院で育った葦原兄弟…兄の一郎と、弟の恭二は、後継者を望む資産家の織部家に引き取られた。しかし織部家の娘・綾に引き摺られ、爛れた享楽の生活を送ることとなった彼らは、落合の平屋に隔離され、綾は半ば勘当のような処遇とされていた。
やがて二十歳を過ぎ、落ち着きを取り戻した綾は働き、最初の給料で両親との食事を持ち掛けたものの拒絶され、その折、綾が兄弟の夢を叶えられるかという賭けをすることに。勝ったら人間として認めて欲しいと。
その後、弟の恭二は、将棋の才能を現し棋士へ、一方の一郎は政治家となり、さらに量子歴史学という分野を立ち上げた。その背後には綾の尽力があった。しかし……『千年の虚空』、
由宇の名義で発刊された本のライティングを手がけていた「わたし」。
その後、数々のタイトルも奪取し、一躍時の人となっていた棋士・井上隆太から、相田がアメリカのシアトルにいるらしいと聞かされる。由宇もまたアメリカにいるのかと推測され、井上と共にアメリカに飛んだ。
原爆の落ちたまさにその日、広島で打たれていたという対局の棋譜を持ち……『原爆の局』の6編収録。
表題作は第1回創元SF短編賞・山田正紀賞受賞作で、直木賞候補作。
それぞれにゲームをモチーフとした短編集(『象は~』はチャトランガという、将棋などの元になったゲーム)。概ね同じ人物がインタビュアー的に登場してます。
ゲームを扱った作品といえば、竹本健治さんの牧場くんのシリーズや最近では『サラの柔らかな香車』などがありますが、遊びや競技としてのゲームというよりも、もっと観念的な、人生の縮図というか、世界の理の縮図的な意味合いっぽい、かな。
幻想小説寄りな雰囲気かも(精神的に不安定な登場人物が多いので、若干引きずられるからかも…)。
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