黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『あがり』松崎有理(東京創元社)

2011-10-26 | 読了本(小説、エッセイ等)
イカルが尊敬してやまない偉大な生物学研究者・ジェイ先生が老衰でなくなった。
イカルのおさななじみで、同じ生命科学研究所に通うアトリは、それ以降、突然一心不乱に実験を始めたイカルを止めるが聞こうとしない。
先生への追悼のためだというその実験は、彼が考えついた遺伝子淘汰論者に反駁する方法……あるひとつの遺伝子がものすごくたくさん、他の遺伝子が追いつけないくらいたくさん増えたとしたら、そこであがり、というわけで進化は終わっちゃうのかを確かめるのだというが……『あがり』、
飛び級で博士号を取った数学を専攻する研究員の男。三十前だというのに、小太りで薄毛。
ある日、老舗書店の数学書のコーナーで、若い女性と出会い、その後再会。数学好きな彼女は、会社の幹部候補で、期間限定で北の街に来ているのだという。
そんな彼は、医学部につとめる友人から、数日前にもらった論文に書かれていたことを実践に移すことに。効果は現われたが、思いがけない副作用が……『ぼくの手のなかでしずかに』、
論文を苦手にする研究者に代わり、論文執筆の代書を請負う稼業<代書屋>をしているミクラは、文学部社会学科応用数理社会学講座の教授から依頼を受ける。
退官間近の老教授は、先週、学部事務から最終通告を受け、早急に論文を出すようにいわれたという。
これまで全く論文を提出していこなかったという彼は、必要とされる被引用指数合計が二十三以上という厳しい条件を満たす論文を提出しなければならなかった。超有名雑誌“自然”に応募することにしたその研究は、“幸運と不運を予測する方法”についてだという。
彼はその研究で、ミクラの未来を予測するが……『代書屋ミクラの幸運』、
論文提出まであと半年に迫ったことから、論文への貢献度が同じである場合は、全員第一著者として認められることを利用し、論文投稿恐怖症の友人と共著で論文を提出することにした“おれ”。
テーマは“遺伝子間領域の存在理由について”。
だが、論文提出期限を目前に控え、後輩の代書屋から、法が改正され、ひとりしか認められなくなったと知らされ、ふたりの間に微妙な空気が流れる……『不可能もなく裏切りもなく』、
絵を描くことだけが楽しみな11歳の少年は、“永遠の転校生”だという少女と知り合う。
誘われて、彼女の母が働く大学の病院の、地下通路を歩くと、へむへむと音がして……『へむ』の5編収録。

北の街(仙台?)にある、蛸足大学を舞台にしたSF短編集。
『不可能~』とかは、掲載場所が<ミステリーズ>だったせいか、若干ミステリ寄りな雰囲気。
『へむ』は、ちょっとファンタジックで可愛さもあったり♪
人名以外は、あえてカタカナ語(電子レンジとかコロッケとか…)を使ってないところが、ちょっとレトロな雰囲気でおもしろいかも。

<11/10/25,26>


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