黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『てんとろり』笹井宏之(書肆侃侃房)

2013-10-23 | 読了本(小説、エッセイ等)
ああそれが答えであった 水田に映るまったいらな空の青
雨のことばかりがのっている辞書を六月のひなたに置いてみる
はじまりのことばがゆびのあいだからひとひらの雪のように落ちた
うつくしいみずのこぼれる左目と遠くの森を見つめる右目
雪であることをわすれているようなゆきだるまからもらうてぶくろ
しあきたし、ぜつぼうごっこはやめにしておとといからの食器を洗う
世界って貝殻ですか 海ですか それとも遠い三叉路ですか
ゆびさきのきれいなひとにふれられて名前をなくす花びらがある
ここちよい虚構 あなたが包帯のかわりに猫をまく春の夜の
さようならが機能しなくなりました あなたが雪であったばかりに

第二歌集であり、笹井さんが亡くなられた後に出された遺歌集。
全体的にひらがな多めの歌が多い所為か、受ける印象がやわらかで、透明感を感じます。

<13/10/23>