チリの首都サンティアゴに住む、作家志望の若者フリオ。
学生時代、彼にはエミリアという恋人がいた。ある作家の助手をすることになったと告げた途端にその話はふいになったが、エミリアにはあたかもその話が継続しているかのようにその作家の書く『盆栽』について語り……“盆栽”、
ある晩、絵画教室から戻らない妻を待ちながら、幼い義理の娘を寝かしつけるために自作の物語「木々の私生活」を語り聞かせる日曜作家のフリアン。
去来する過去の記憶、そして娘との未来は……“木々の私生活”を収録。
どちらも淡々とかつ散文的に描かれるお話。
チリの作家のようですが、『盆栽』とか日本モチーフが出てくるのがちょっと面白いですね。
<13/10/6>
学生時代、彼にはエミリアという恋人がいた。ある作家の助手をすることになったと告げた途端にその話はふいになったが、エミリアにはあたかもその話が継続しているかのようにその作家の書く『盆栽』について語り……“盆栽”、
ある晩、絵画教室から戻らない妻を待ちながら、幼い義理の娘を寝かしつけるために自作の物語「木々の私生活」を語り聞かせる日曜作家のフリアン。
去来する過去の記憶、そして娘との未来は……“木々の私生活”を収録。
どちらも淡々とかつ散文的に描かれるお話。
チリの作家のようですが、『盆栽』とか日本モチーフが出てくるのがちょっと面白いですね。
<13/10/6>
生きるための本走に入る明後日より抗癌剤の点滴変はる
来年もこの花たちに会へるやうも一晩一晩ふかく眠らねば
一日ひとひ死を受けいれてゆく身の芯にしづかに醒めて誰かゐるなり
死より深き沈黙は無し今の今なま身のことばを掴んでおかねば
この子らの記憶の輪郭に添ひながら死に近づけるわたしの生は
襟足が美しいと言ひし君のこゑ抗癌剤は君のこゑさへ奪ふ
何でかう蝉はしづかに遠く鳴くものかされど夕蝉ふいに近づく
書きとめておかねば歌は消ゆるものされどああ暗やみで書きし文字はよめざり
月くらく落ちゆく暁に思ほへば逢ひたき人はなべて亡き人
手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
河野裕子さんの最後の歌集。
癌での闘病中、病床で詠まれた歌がほとんどで、口述筆記だったり、読めないほどの文字であちこちにメモされたものをご家族で解読されたりしたようです。
内容的にもかなり切なくなりますが、最後の最後まで歌を詠み続ける歌人としての(というか表現者としての)姿勢に鬼気迫るものを感じました。
<13/10/5,6>
来年もこの花たちに会へるやうも一晩一晩ふかく眠らねば
一日ひとひ死を受けいれてゆく身の芯にしづかに醒めて誰かゐるなり
死より深き沈黙は無し今の今なま身のことばを掴んでおかねば
この子らの記憶の輪郭に添ひながら死に近づけるわたしの生は
襟足が美しいと言ひし君のこゑ抗癌剤は君のこゑさへ奪ふ
何でかう蝉はしづかに遠く鳴くものかされど夕蝉ふいに近づく
書きとめておかねば歌は消ゆるものされどああ暗やみで書きし文字はよめざり
月くらく落ちゆく暁に思ほへば逢ひたき人はなべて亡き人
手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
河野裕子さんの最後の歌集。
癌での闘病中、病床で詠まれた歌がほとんどで、口述筆記だったり、読めないほどの文字であちこちにメモされたものをご家族で解読されたりしたようです。
内容的にもかなり切なくなりますが、最後の最後まで歌を詠み続ける歌人としての(というか表現者としての)姿勢に鬼気迫るものを感じました。
<13/10/5,6>