黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『いつも彼らはどこかに』小川洋子(新潮社)

2013-06-23 | 読了本(小説、エッセイ等)
モノレールの沿線にあるスーパーマーケットでデモンストレーションガールをしている彼女。
ある夏の朝、サラブレッド・ディープインパクトが渡仏する際、ストレスを軽減させる為だけに同伴する帯同馬・ピカレスクコートの存在を知る。
そんな彼女は、何度も試食を食べにくる小母さんと親しくなるが……“帯同馬”、
作家の<私>と翻訳家の二十年来の静かな交流があったが、とうとう会えないままに翻訳家は亡くなる。
作家は彼の家を訪ねて、その息子である青年Jと会う。翻訳家との手紙に書かれていた追伸の中で知っていたJ。
翻訳家からの忘れがたいプレゼントは、森で見つけたというビーバーの頭の骨。Jから、翻訳の時に必要だとしていたビーバーがかじった枝の話を聞く……“ビーバーの小枝”、
代々朝食専用の食堂を営んできた男の一族は、広場の中央に設置された日めくりカレンダーをめくる役目を負っていた。
オリンピックの開催日をカウントダウンするために設置された、ハモニカ兎をかたどった看板をめくる男。村で唯一行われる競技の開催に向けてカウントダウンは進む……“ハモニカ兎”、
地元出身の画家Sの作品を展示している美術館で、アルバイトをしている受付嬢の<私>。
移動修理屋アルルの老人は、ただ一枚の作品を見るためだけに、たびたび美術館を訪れた。目を瞑ったままその場所へたどり着こうとする彼を案内する私は……“目隠しされた小鷺”、
妹が盲腸の手術で町立病院に入院することになり、その間、彼女が大事にしている犬のベネディクトの散歩とドライフード十五粒の餌やりを頼まれた僕。
しかしベネディクトは、本当の犬ではなく、ブロンズでできたミニチュアの犬。住んでいるのはドールハウスだった……“愛犬ベネディクト”、
動物園の売店の女性が、失ったかけがえのないhという存在。その喪失感を抱えながら生きている。
ある時、動物園のチーターの英語の綴りの中に、人々に知られないhの存在を見出した彼女は、その存在に惹きつけられる……“チ一ター準備中”、
町の北の縁にある風車。その風車の中で、蝸牛を飼う風車守の男がいた。
断食施療院の患者である<私>は、たびたび出かけている。
そこで、いつもは陰気な下施療院の働きの女が、別人のような態度で彼と一緒にいるのをみて……“断食蝸牛、
人々の大切な物を収めた<身代わりガラス>とともに旅する彼女。
彼女には、竜の子幼稚園に通っていた賢い弟がおり、自分の誕生日3月3日にちなんだ物を集めるのが好きだった。しかし六歳の誕生日を迎える前に不慮の事故で亡くなり、代わりのようにその日付が刻印されたパッケージを集めるようになった……“竜の子幼稚園”の8編収録の短編集。

表題のついた作品はありませんが、どちらかというとその言葉がすべてを象徴している雰囲気…不在の動物たちとそれにまつわる人々のお話。
いつもながら、見逃してしまいそうな人達に光をあてる眼差しが良いですね。

<13/6/22,23>