黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『あめりかむら』石田千(新潮社)

2011-10-20 | 読了本(小説、エッセイ等)
術後五年、病再発の不安を消そうと旅に出た道子。大阪のホテルで、マッサージを受けている最中に気分が悪くなり、町へ出た道子は、とある居酒屋へ入った。何故か成り行きで、ある店の手伝いをすることに。
そんな中で、道子は、ふと戸田のことを想起する。
大学時代、マスコミ就職試験の勉強会で知り合った戸田。会の世話人だった彼は、結局、周囲の人たちを踏み台にしつつ、エリート街道をまっしぐらに進んでいた。その後、仕事関係やらで幾度かあったものの、疎遠になっていたが、急に亡くなったという知らせを受けた。自殺だったという……『あめりかむら』、
連休に湯宿で過ごすことを決めた。その旅の途中、昔出会った犬の話を思い出す。
東京に引っ越したもの、他の子どもたちからは仲間はずれにされ、馴染めずにいた幼い日。
心の拠り所となったのは、公園で出会うおばさんが連れた、クリという名のうす茶いろの犬だった。しかし年上のお姉さんから、仲間に入るなら犬がきらいだ、というように、誓わされ……『クリ』、
出かけた新宿の街中で、中学時代、産休に入った教師の代わりに、みじかい期間教わった先生と再会。彼女に、“気もちがやさしい”といわれたことがあった。
当時のできごとを思う……『カーネーション』、
友人に勧められ受けた検診で、病気が発覚した。ひと月の療養に入ることになり、そのひと月前、その友人と一緒に旅に出かけることに……『夏の温室』、
S君との飲み屋の帰り、“かねの家”とかかれたのれんのかかる店に入った。
そこには、“古書大踏切書店”という名のきざまれた置物と、棚に収められた古本。なぜかあいうえお順で並べられているそこから、“アルプスの少女ハイジ”の本を買う。かねの家は居酒屋だが、ふみさんという女あるじの夫が、古書店をやっていた名残だった……『大踏切書店のこと』の5編収録。

表題作は、芥川賞候補作。『大踏切~』はいままで収録されてなかったデビュー作(タイトルだけは見てましたが、エッセイだとばかり思ってました…)で、今回は初の小説(中・短編)集。
小説だけれど、語り口は割とエッセイの雰囲気そのままで、フィクションとの垣根が低め。
石田さんご自身が病気をされたのか、そこかしこに病気の気配が漂っていて、影を落とす感じ。

<11/10/19,20>