インテルやAMDのx86プロセッサと並ぶ、いや現在ではむしろ世界でも最も重要とも言えるプロセッサアーキテクチャにARMがあります。ARMは主に組み込み用途のCPUとして、主に携帯電話や携帯ゲーム機といったモバイルデバイス向けに利用されていますが、その供給形態はx86に比べて大きく異なっています。
ARMはARMホールディングスという企業が開発を行っていますが、生産はしていません。実際のチップの生産は、ARMのパテント契約を結んだ企業が、自社のエッセンス(例えばグラフィックスコア)を加えた設計を元に行う形になります。NVIDIAのTeglaやフリースケール・セミコンダクタのi.MX51がそれに当たります。
要するに、大元はARMがライセンスし、それをチップメーカーが形を整え、ハードウェアメーカーが利用するという流れです。もちろん、ハードウェアメーカーが独自に拡張・製造を行う事もありますが・・・
では、「ソフトウェア企業」「データセンター運営」が主だった仕事であるマイクロソフトがARMのライセンスを結んだら、いったい何に使うのでしょうか?
マイクロソフト、ARMアーキテクチャの使用権を取得--独自プロセッサを開発か CNET Japan
Microsoftは米国時間7月23日、半導体の設計を手がけるARMとの契約を更改した。あくまでも理屈の上の話だが、この更改によって、Microsoftは独自のARMプロセッサを設計できるようになった。
新たな契約は、アーキテクチャのライセンス契約であり、Microsoftは独自のARMプロセッサを設計できるようになる。Qualcommもこれと同様の契約に基づいて、Dellのタブレット「Streak」やGoogleのスマートフォン「Nexus One」などの製品で採用されているプロセッサ「Snapdragon」を製造している。
元々、マイクロソフトはx86だけにOSを提供している企業ではありません。例えば『Windows Embedded』は組み込み型のWindowsサブセットとして、POSレジなどに採用されています。しかし、今回の件についてはむしろこっちの存在が重要でしょう。ヒントはiPhoneとNexus Oneです。
そう、『Windows Phone』ですよ。現在、マイクロソフトが独自プロセッサを開発しているのはXBOXのみ。しかしながら、今年の秋に登場するWindows Phone 7むけに、iPhoneのような・・・というよりも、むしろGoogleが直販したNexus Oneのようなフラグシップ機を自社から提供する為に、取得したARMライセンスを活用するのではないか?と考えるわけです。パートナーにとってはあんまりうれしくない話かも知れませんが、あくまでマイクロソフトが考える「理想の端末」を”提示する”という面においては、好き勝手にやれる分、理想的ではないでしょうか。アップルもiPhone 4及びiPadではApple A4という独自プロセッサをARMライセンスを利用して作っているわけですから、全く不思議な話ではないでしょう。
一方、データセンター用のサーバーに使うとか、XBOXの次世代機はARMを利用して作るとか・・・そういう怪しげな話はすでに出ている模様。・・・マイクロソフトが自社でプロセッサまで作り出したら・・・社内的にはより挑戦的なハードウェアも企画できるようになるなど、メリットも出ると思いますが、個人的にはOSを利用しているサードパーティとの関係をぎくしゃくさせてまで・・・とは思いますけれど。
もしくは、アメリカのみで売られているZuneかな?こちらだと、影響はかなり限定的になりますけど。どっちにしろ、OS屋がプロセッサまで作り出すわけですから、かなり後を引きそうな話ではありますね。