ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




スタジオに着く前に、お弁当屋さんに寄りました。予定通り、唐揚げ弁当を注文。有言実行(←わりとどうでもいい事ですよね(笑))。

唐揚げが揚がるまで、少し時間がかかるということだったので、お店の外に出て待っっていましたら、一人のおばあちゃんがワンコを散歩させているのが目に入りました。ゆったりと、一歩一歩、止まるような速さで歩くおばあちゃんとワンコ。ワンコは時折立ち止まっては、辺りの匂いを嗅いでいます。おばあちゃんも、決してせき立てるようなことはしないで、じっとワンコを見ています。

「かわいいなぁ」と思ってずっと見ていると、おばあちゃんの方からゆっくり近づいてきて、話しかけられました。

「・・・もうね、おばあちゃんなの。」

もちろん、犬の事だとはすぐにわかりましたが、赤い毛糸の帽子を被ったおばあちゃんも、・・・おばあちゃんでした。

「もう、15歳なのよ」

人間の年齢で言うと、75歳くらいでしょうか。何となく、おばあちゃんも同じくらいかなぁ、などと思いつつ「あ、そうなんですかー。かわいいですねー。」と、しゃがみ込んで手を出すと、彼女はちょっとビクッとして、僕の手を避けようとしました。

「ごめんね。目がね、もう全然見えないの。耳もほとんど聴こえなくなっちゃってね。他にも、ホラ、鼻のところに小さなデキモノが出来ちゃってるでしょ?それも何とか言う病気のせいだって。前はね、元気な頃は、もっと愛想が良かったんだけどね。」

そう言っておばあちゃんは静かに「ハハ」と笑いました。確かに、彼女の目は白内障で白く濁っていました。おまけに、耳も聴こえないとは。いったい、彼女は今、どんな世界に生きているのか。真っ暗で、音も無い世界って、どんななんだろう。

「でもね、二匹、孫がいるのよ。あっちの○○町のほうにね。あげちゃったんだけど。それは、とっても元気。」

「そうですか。それは良かったですねー。」

話しながら何度か手を出していたら、ちょっと遠くからですが、そっと匂いを嗅いでくれました。

「でも、この子は、もうこんなでしょ。ご飯もあまり食べなくてね。こんなだと・・・また、一緒に年が越せるのかどうか。」

・・・。

「いやー、それは大丈夫ですよ。きっと。」

ほかに言葉が見当たりません。

「・・・だと、いいんだけどね。・・・じゃ、どうもね。」

と、またゆっくり歩き出したおばあちゃんに、なんだか言っておかないと気が済まないような気持ちになって、「おばあちゃんも、いつまでもお元気で。よいお年を。」と言うと、「はい、ありがとう。」と返してくれました。

しばらく後姿を目で追ってしましたら、おばあちゃん達とすれ違いに、20歳くらいの若い女性が二匹のミニチュアダックスを連れて、こちらに向ってきました。ダックス達は、元気一杯。せわしなく辺りを嗅ぎまわりながら、女性を引っ張って、先へ、先へと急ぎます。「・・・若いなぁ」。

ふと見ると・・・さっきのおばあちゃんワンコが、立ち止まってダックス達の方を振り返り、じっと見ていました。・・・見えていたのかはわかりませんが。でもダックス達は、おばあちゃんワンコの視線には気付いていないようで、前へ、前へ、と。

僕は、出来上がった唐揚げ弁当を受け取って、クルマへ戻りました。

 

ヘトヘトになりながら仕事を終えた帰りしな、スタジオの廊下で偶然「♪俺の話を聞け~五分だけでもいぃい~」のヒット曲でお馴染みの、クレ○ジーケンバ○ドのベーシスト、信也くんに会いました。ずっと前に一度、セッションライブをして以来、仲良くさせてもらってるんですが、今日は久々の再会でした。実に楽しくて、何につけてもまさにクレイジーな信也くん。「おわー、信也くんだ!」「あー、ケンちゃん!がっはっは!今日は誰で来てんの?がっはっは!」そんな挨拶から始まり、共通の友人ミュージシャンの話などで、15分位立ち話をしました。良く笑い、良くしゃべる、最高のクレイジーハッピーマン。嬉しい再会でした。そして彼も良く食べる(笑)。・・・お互いじーさんになっても、たまに会っても、ずっとこんな風に「がっはっは!」な友達でいられるといいなぁ、なんて。

 

スタジオを出ると、今日も雨。でも、年末のせいでしょうか、道は空いていて、快適ドライブで帰ってこれました。

クルマを降り、部屋のドアを開けようと鍵を出したところで、暗闇の中から、「ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャーッ」と声が近づいてきて、壁から、雨に濡れたネコ氏が顔を出しました。さしずめ「まて、まて、まて、まてー」だったようですね。「なんじゃ。お腹空いてんの?」と訊くと、僕を見て「ニャッ」。・・・うーむ、完璧に言葉が通じているように思える瞬間(笑)。

でも、ウチのマンションのロビーには「マンションの敷地内でノラ猫に餌やりをしないで下さい」という張り紙があります。なので、僕はドアを開けて、そのまま部屋に入りました。バタン。

 

・・・買ってある、ネコ用の餌を持ってくるためです。

 

禁止だろうがなんだろうが、こんな寒い日に、雨に濡れて、お腹を空かせたネコに呼び止められて、そのまま「帰れ」なんて、出来るわけないじゃないですかー。えーえー、どうせ僕は悪い住人ですよ(笑)。

でもね、「マンションの敷地内」ってのは、僕達人間が勝手に作ったテリトリーでしょう。彼らにとっては、そんなの良くわからんのですよ。ってか、関係ないし。むしろ、もしかしたら彼らの方が、このあたりの先住民だったかも知れないわけですよ。となったら、後から来た者の礼儀として、ご飯の一杯くらいは「お邪魔してまーす。いつもクルマでうろうろして、危なくてすみませんねぇ」ってご馳走したって、バチは当たらんでしょう。そのかわり、食べ終わるまでそばで見てて、残したらちゃんと僕が掃除しようとは思ってますから。・・・まぁそんな理屈で、「ま、軽くどうぞ」と、一食分位ザラザラと出しましたら、すっ飛んで来ましたよ。・・・ネコ、まっしぐら(笑)。

ガリガリガリガリ・・・。あっという間に、食べ終わってしまったので、「もしかして・・・まだ食べるの?」と訊くと、またもや「ニャッ」と(笑)。じゃあ、と、もうさっきの半分位ザラザラ。するとこれもあっと言う間に食べてしまい、また「ニャッ」と僕の顔を見ました。

「えー、お前さん、食べ過ぎだろう・・・って、僕に言われたくはないわな(笑)。よし、じゃあお腹一杯食べなされ」と、さらにざらざら、ざらざら。結局三食分位一気に食べたネコ氏は(←すでに、他人とは思えない感じ(笑))、食べ終わるやいなや、また雨の暗闇の中へ去ってゆきました。帰りは黙って帰っていったあたり、残念ながら、やっぱり完全な意思の疎通は出来ていなかったと言うべきでしょう。

「やいまて。ちゃんと『ご馳走様』、言っていけ。ニャニャニャーニャニャ、とちゃんと言っていけ。」

って事ですよ。・・・うそうそ(笑)。まぁ、いいんですよ

キミも、元気で長生きしておくれな。

沢山食べて、元気なのが一番。川村ケンの「老いと食を考える健康ブログ」でした(笑)。

ではー。



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