勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

そして父になる

2013年09月29日 | 邦画
第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞受賞。10分間にも渡るスタンディングオベーション。それは、是枝監督が退場しなかったらいつまでも鳴り止まなそうだったので退場したと言うくらい。また、審査員長のスティーブン・スピルバーグは初めて見た時から本作品が賞に値するという確信は揺るがなかったと語り、審査員のニコール・キッドマンは後半一時間は涙が止まらなかったと語っています。公開初日、スティーヴン・スピルバーグのドリームワークスによるハリウッドリメイク決定の報告も行われています。

「家族とは何か?」と言うテーマを描いています。子供の取り違えという悲劇的な出来事により、家族とは血縁なのか、あるいは、育った時間・環境なのか、それを問うた映画だと思います。しかしそう言う悲劇を描いた映画なのに、不思議と心が重くなったり、悲劇的な気持ちになるような気がしません。確かに悲しい話であり、実際にラストシーンには泣きそうになってしまいましたが、何もかも投げ出したくなるような悲しさではなかったんですよね。むしろ、思いっきり考えさせられました。この作品のタイトルにもなっている「父になる」と言う事も描かれています。それは取りも直さず、「家族とはなにか?」と言う事と不可避なのかもしれませんが。

福山雅治が演じる絵に描いたようなエリートの野々宮良多と、リリー・フランキーが演じる地方都市の自営業者の斎木雄大。対照的な二人ですが、幸せそうに見えるのが斎木なのは、気のせいではないのだと思います。物語の殆どを通じて野々宮良多は、全てに対して一枚ベールを被ったような感じで、妻とも子供とも真に心を通わせている雰囲気はありません。ラストでやっと、ベールを剥いで本当に心を通わせることが出来た時、「父になる」と言う野々宮良多の回答が出たのだと思います。

こう言うテーマの映画の場合、夫婦も崩壊してしまうと言う描き方も有るんだと思います。この作品中でも、子供の取り違えにみどりが不安定になったり、良多の態度・反応についてみどりが不満を漏らす場面は有るんですが、それ以上の事柄は敢えてなのか描かれていません。あんまりそれを描くと、ドロドロしすぎるからですかね。確かに、そんなシーンがあったら、こんな感動作品にはならなかったでしょうね。それにしても「何で判らなかったんだ。母親なのに。」と言う言葉は、残酷ですよね。判るわけが無いと思うんですが・・・。

福山雅治演じる野々宮良多の妻みどりは、尾野真千子が演じています。尾野真千子と言えば、明るく、チャキチャキな演技を見ることが多い気がするんですが、この作品では一転、貞淑なエリート妻を演じています。そこが印象的でした。

演技派真木よう子は、三人の兄弟を持ち、たくましく生きる母を上手く演じていますね。まだ若いですが、いいお母さんだと思います。

一番いい味出していると思ったのが、リリー・フランキー。彼の、少しいい加減には見えるが、きちんと子供の目線で子供と対応している姿は、一線引いた野々宮良多と好対照です。いいお父さんだと思います。

さて、発表されたハリウッドリメイク。どう言うキャストで描かれるのか、興味深いですねぇ。早く見てみたいです。

なんかしらんけど、頭のなかで『家族になろうよ』はヘビロテになりました。描いているテーマは違うと思うんですけどね。

タイトル そして父になる / 英語タイトル Like Father, Like Son
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2013年/日本
監督 是枝裕和
出演 福山雅治(野々宮良多)、尾野真千子(野々宮みどり/良多の妻)、真木よう子(斎木ゆかり)、リリー・フランキー(斎木雄大/ゆかりの夫)、二宮慶多(野々宮慶多/良多の“息子”)、黄升げん(斎木琉晴/ゆかりの“息子”)、風吹ジュン(野々宮のぶ子/良多の義母)、國村隼(上山一至/良多の上司)、樹木希林(石関里子/野々宮みどりの母)、夏八木勲(野々宮良輔/良多の父)

[2013/09/29]鑑賞・投稿

スティーブ・ジョブズ1995 失われたインタビュー / Steve Jobs: The Lost Interview

2013年09月28日 | 洋画(アメリカ系)
2011年10月5日。惜しまれつつ世を去ったIT業界の巨人スティーブ・ジョブズ。

1995年にドキュメンタリーTV番組“The Triumph of the Nerds : The Rise of Accidential Empires”がスティーブ・ジョブズに対して行ったインタビューを実施し、番組では、その一部を使用したが、インタビューを収録したマスターテープは紛失していた。しかし2011年、スティーブ・ジョブズの死後、当時の監督のガレージからインタビューを収録したVHSテープが偶然発見。この映画は、そのVHSテープをHDリマスタリングした作品である。

ウォルター・アイザックソンによるスティーブ・ジョブズの伝記を読んだことが有るんですが、Lisaに関すること、仕事を行うチーム編成についてAクラスに限ると言っていること、マイクロソフトに関すること、アップルに関する現状(1995年当時)認識など、伝記と同じことを言っていますね。ジョン・スカリーに対しても、多くは語っていませんが、同じ様です。って言うか、違うことを言っていたら、それはそれで一大事ですが(苦笑)。でも、伝記は、2004年頃から2年間に渡りウォルター・アイザックソンが本人や周囲の人々に取材を行ったものですが、このインタビューはそれに遡ること9年ほど。と言うことは、このインタビューや伝記で語られていることは、彼=スティーブ・ジョブズの、長年の信念なんですね。

ただ興味深いのは、その信念の人スティーブ・ジョブズをして、1995年当時のアップルは、死んだも同然だと思われていたこと。だからこそ、1996年にアップルに復帰した時、大胆な事業の立て直しができたんでしょう。

いやぁ、でも、あの1995年の段階で、webがコミュニケーションの中心になると言うことを見通しているとは・・・。それが、1998年のiMac、2001年のiPod、そして2007年のiPhoneに繋がるんでしょうね。

タイトル スティーブ・ジョブズ1995 失われたインタビュー / 原題 Steve Jobs: The Lost Interview
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2011年/アメリカ
(1995年)
構成・プレゼンター ロバート・クリングリー
監督 ポール・セン
撮影 ジョン・ブース / 録音 ジーン・クーン / 制作 ジョン・ガウ、ステファン・セガラー
(2011年)
構成・プレゼンター ロバート・クリングリー
撮影 ジョン・ブース / 編集 ニック・ステイシー / 制作 ジョン・ガウ、ポール・セン
出演 スティーブ・ジョブズ、ロバート・クリングリー

[2013/09/28]鑑賞・投稿

クロニクル / Chronicle

2013年09月27日 | 洋画(アメリカ系)
高校生の三人組が、ふとした事から特殊能力を身につけてしまい、自分に身についた特殊能力に戸惑い、翻弄されるさまを描く。

ビデオブログをアンドリューが撮影していると言う設定から、映像がハンディカメラで撮ったような雰囲気になっています。映画というより、実際に起きた出来事の記録(まさにクロニクル)と言う設定ですね。そういう観点では、『クローバーフィールド/HAKAISHA』や『SUPER8/スーパーエイト』に似た感じになっています。

普段おとなしいやつを怒らせると怖いということの典型でしょうか。アンドリューが、最後に切れてしまいます。って言うか、その端々で、アンドリューがかなり危険な伏線は有るんですが、最後に行くところまで行ってしまいました。例えが適切では無いかもしれませんが、宝くじの高額当選者には、その後の人生を狂わせないように「その時の心得」みたいな冊子を渡されるそうです。これは、思いがけない出来事に対処できない人に対した配慮なわけですが、この作品の設定も“思いがけない出来事”な訳ですから、「その時の心得」の様なカウンセリングが必要だったのかもしれませんね。それがあれば、アンドリューも人生狂わなかったかも。

“オトクロニクル”キャンペーンを実施していて、1000円で見ることが出来ます。9月27日(金)からの2週間首都圏限定公開です。

タイトル クロニクル / 原題 Chronicle
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2012年/アメリカ
監督 ジョシュ・トランク
出演 デイン・デハーン(アンドリュー・デトマー)、アレックス・ラッセル(マット・ギャレティ)、マイケル・B・ジョーダン(スティーブ・モントゴメリー)、マイケル・ケリー(リチャード・デトマー/アンドリューの父)、アシュレイ・ヒンショウ(ケイシー・レター)

[2013/09/27]鑑賞・投稿

エリジウム / Elysium

2013年09月22日 | 洋画(アメリカ系)
第9地区(District 9)』のニール・ブロムカンプの作品。

『第9地区(District 9)』でも、安全で快適な生活をしている地球人と、不衛生で危険な生活をしている難民の異星人という格差が描かれていましたが、この作品でも、安全で快適なエリジウムに暮らす超富裕層と不衛生で不快な地球に暮らす貧困層と言う格差が描かれています。超富裕層が地球を捨てて宇宙で暮らすというのは、言ってみると、問題を金で解決したということなんでしょうね。それにしても、何でもかんでもあっという間に治癒してしまうという技術は凄い!

地球の主な舞台は、ロスアンゼルス付近という設定になっています。それが故か、英語のみならず、少なからずスペイン語もセリフに混ざってきています。今でさえ、アメリカはヒスパニック系の人たちがたくさん居て、所によっては、英語ではなくスペイン語が幅を利かせているところがありますが、それは行き着くところまで行き着いた結果ということなんでしょう。ただ、地球からエリジウムに向かう宇宙船にチラリと南アフリカの国旗が描かれていましたね。監督の母国愛と言うことなんでしょう。

最初、貧困に喘ぐ人たちの、単純な武装闘争かと思っていたんですが、そう単純な話では無かったんですね。クールに策略を巡らすジョディ・フォスターが、中々怖いです。

ちょっと突っ込みたくなるのが、武器と輸送手段。上記にも記しましたが、簡単なスキャニングで病気を診断すると同時に、ありとあらゆる病気をそのまま直してしまうという恐ろしいほどまでに素晴らしい技術があるのに、人間が移動するには、旧態依然としたシャトル。転送装置くらい実現していてもいいような気がします。あと、武器。これも、現代のような形で、しかも、威力は非常に強いものの普通に弾薬を使う銃器って、ねぇ。治療装置への一点豪華主義なんでしょうか?

あと不思議なのが、エリジウムの構造。形は、2001年宇宙の旅で描かれるようなコロニーの形状なんですが、内側に壁がない?画期的ですね。回転による遠心力で、大気組成物をコロニーに引き留めておくという思想なんでしょうね。でも、あの程度の回転速度で、大気組成物を留めておけるほどの遠心力が働くんでしょうか?

もう一つ不思議なのが、地球から飛びだったシャトルを撃墜するのに、わざわざ地球からミサイルを撃っていること。これは、外れた場合にエリジウムに当ってしまう可能性があるので、合理的でないですし、危険だと思います。なんで、エリジウムから迎撃しないんでしょうね?

若干突っ込むところはありますが、意外に奥が深いテーマを描いている映画だと思いました。単純な、ドンドンぱちぱち映画ではありません。

タイトル エリジウム / 原題 Elysium
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2013年/アメリカ
監督 ニール・ブロムカンプ
出演 マット・デイモン(マックス・ダ・コスタ)、ジョディ・フォスター(デラコート/国土安全省長官)、シャルト・コプリー(クルーガー)、アリス・ブラガ(フレイ)、ディエゴ・ルナ(フリオ)、バグネル・モーラ(スパイダー)、ウィリアム・フィクトナー(ジョン・カーライル)、ファラン・タヒール(パテル/総裁)

[2013/09/22]鑑賞・投稿

私が愛した大統領 / Hyde Park on Hudson

2013年09月14日 | 洋画(イギリス系)
アメリカ政治史上、唯一大統領4選を果たしたフランクリン・デラノ・ルーズベルト(FDR)。彼=FDRが“強い”女性に囲まれていた事も有名な話ですが、その“強い”女性に囲まれたFDRが、数少ない心許せる相手だったのが、従兄弟でもあったマーガレット・サックリー。この作品は、そのマーガレット・サックリーの日記やメモ・手紙を下に、マーガレット・サックリーとFDRの関係を描いた作品。時期的には、1939年5月~6月の英国王ジョージ6世北米訪問を描いている。

う~ん。評価に困りますねぇ。駄作とまでは言いませんが、それ程、評価できるわけでもないです。ジョージ6世の北米訪問は、当時のアメリカの厭戦気分を和らげる必要があった非常に重要な訪問だったので、それだけでも、映画になりそうな内容なんですが、それを、デイジーと言う人物の目で描いているために、FDRとデイジー(及び、その他の女性)との不倫の話なのか、世界政治的に難しい駆け引きを描いた話なのか、焦点がボケてしまっています。FDRとデイジーの人目を憚る関係の話しなら、そこに集中すればいいのに。

FDRが、ポリオで下半身が麻痺していて歩くことが出来なかったというのも、今では非常に有名な話。この映画では、しっかりとその辺りの事も描かれています。マスコミは、FDRが準備できるまで写真を撮ったりすることがなく、殆どのアメリカ国民は、FDRが下半身麻痺だったということを知らなかったと言うのは、非常に驚きます。まだ皆が大人だった時代と言う事ですよねぇ。当時はテレビが無かったから、そういう事が可能だったとも言いますが、『人の口には戸は立てられぬ』と言う言葉もあるんですが、その時は、その事については、人の口に戸が立っていたんですね。

タイトル 私が愛した大統領 / 原題 Hyde Park on Hudson
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2012年/イギリス
監督 ロジャー・ミッシェル
出演 ビル・マーレイ(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)、ローラ・リニー(デイジー(マーガレット・サックリー))、サミュエル・ウェスト(ジョージ6世/英国王)、オリビア・コールマン(エリザベス/王妃)、エリザベス・マーベル(マルガリーテ・“ミッシー”・リーハンド)/FDRの秘書)、エリザベス・ウィルソン(サラ・ルーズベルト/FDRの母)、オリビア・ウィリアムズ(エレノア・ルーズベルト/FDRの妻)、エレノア・ブロン(デイジーの叔母)

[2013/09/14]鑑賞・投稿

スーサイド・ショップ (3D字幕) / Le magasin des suicides

2013年09月07日 | 洋画(フランス系)
ネタバレあり。

普段はアニメは見ないんですが、フランスアニメで、テーマも何かシニカルな感じがしたので行ってみました。って言うか、この前に同じくフランス映画の『大統領の料理人』を見ているので、今日は、一人でフランス映画祭です(笑)。

3D字幕です。アクションでもないし、3Dでみるのはどうかと思いましたが、やっぱり3Dの必要性を感じませんでした。2Dで見ても、3Dで見ても同じなんじゃないかな。

まぁ、3D問題はその位にして、内容的には非常にシニカルですが、最後はハッピーエンディングで終わり、少しホッとします。って言うか、スーサイド・ショップのまま終わったら、身も蓋もないですからねぇ。ハッピーエンディングに至るまでの終盤は、娘と母親は愛に目覚め、父は失って初めて命の大切さを理解していました。スーサイド・ショップをやっていたのは、人間の命の大切さ・人の愛の尊さを理解していなかったからということなんですね。

ところで、なんでフランスでスーサイド・ショップなのか?フランスよりも日本のほうが、10万人あたりの自殺者数は多いのに。

タイトル スーサイド・ショップ / 原題 Le magasin des suicides
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2012年/フランス
監督 パトリス・ルコント
出演 ベルナール・アラヌ(ミシマ)、イザベル・スパッド(ルクレス)、ケイシー・モッテ・クライン(アラン)、イザベル・ジアニ(マリリン)、ロラン・ジャンドロン(ヴァンサン)

[2013/09/07]鑑賞・投稿

大統領の料理人 / Les saveurs du Palais

2013年09月07日 | 洋画(フランス系)
フランスのフランソワ・ミッテラン大統領のプライベート・シェフとして1988年から2年間仕えたダニエル・デルプエシュの実話に基づく映画。映画化に際して、(もちろん大統領が不在の時ではあるが)実際のエリゼ宮でロケを実施した。

パンフレットから受ける印象としては、フランス大統領官邸初の女性シェフが、周囲と上手くやって、ハッピーエンディングと言う感じだったんですが、必ずしもそうではありません。むしろ、人生の苦い厳しさを感じる内容になっています。冷静に考えて見れば、周囲とも全てうまく行き、成功していたのであれば、2年という短期間で辞任するわけはありませんよね。

まぁ、そう言う人の嫌なところは置いておいて、オルタンスも大統領も、何ともチャーミング。そう言う所を重点的に描けないのが、実在の人物を描いた作品の辛い所。そう言えば、オルタンスは、チャーミングなだけではなく、バイタリティ溢れる人物でもあります。作品冒頭、いきなり南極地域の映像から始まった時は、何が起きたのかと思いました。2年で大統領官邸を辞任してから、南極観測隊の料理人として1年間、南極に居たんですね。凄い。

いやぁ、それにしても、フランス人の食事に掛ける意気込みは凄い。大統領官邸が食事にこだわるのは当たり前として、南極観測隊の食事も、「さすが美食の国フランス!」と言う様な料理ですからねぇ。実は、お昼前に見たんですが、お腹が減って仕方ありませんでした(笑)。

美味しいけど、ほろ苦い映画です。

ところで、シネスイッチ銀座で見てきたんですが、映画館に行った時、一体に人集りができていて「何ごと?!」と思ってしまいました。この映画のチケット購入の行列だったようです。中に入ると、ほぼ満席だし。事前にチケットを購入しておいて正解でした。

タイトル 大統領の料理人 / 原題 Les saveurs du Palais
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2012年/フランス
監督 クリスチャン・ヴァンサン
出演 カトリーヌ・フロ(オルタンス・ラボリ)、ジャン・ドルメソン(ミッテラン大統領)、イポリット・ジラルド(ダビッド・アズレ)、アルチュール・デュポン(ニコラ・ボボワ)

[2013/09/07]鑑賞・投稿

サイド・エフェクト / Side Effects

2013年09月06日 | 洋画(アメリカ系)
奇才スティーヴン・ソダーバーグの作品。新薬に疑われる“副作用”がもたらす、悲劇と疑惑を描いた、社会派サスペンス。50歳になるスティーヴン・ソダーバーグの最後の劇場公開映画になります。

それにしても、スティーブン・ソダーバーグって、芸の幅が広い。私が見た作品だけでも、『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』の様な、若干コメディー要素もある作品を撮ったかと思えば、『コンテイジョン』の様な、非常にメッセージ性のある作品を撮ったりもしている。才能に溢れた人なんですね。

さて、物語の設定上、うつ病が重要なポジションを占めている。日本でも、(劇中のジョナサン・バンクスの言葉に拠れば)イギリスでも、うつ病とは完全に“病気”として扱われている。しかし、アメリカでは必ずしもそうではなく、心療内科・精神科・セラピストに通うことに関して、日英ほど否定的な響きは無い。そんなアメリカだからこそ、成立するストーリーになっている。

一見、薬害もの?と言う感じがするが、実際のところは、犯罪もの。巧妙なトリックが繰り広げられようとします。

R15指定ですが、あぁ、なるほど。そうかもしれません。

エミリー・テイラーが最初に見てもらっていた女医ビクトリア・シーバートをキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じています。怪しい・・・、いや、妖しいです。とっても。登場からしてミステリアスでしたが・・・。

主人公のバンクス医師を演じるジュード・ロウですが、上手いですねえ。ジュード・ロウはイギリス生まれですが、上記にも記したとおり、バンクス医師もイギリス生まれと言う設定のため、敢えて、英語のアクセントはイギリス英語のアクセントを直していなかったらしい。

ルーニー・マーラも、“か弱い”女性を上手く演じています。そのか弱い感じが、物語での重要ポイントになっているかも。

いやぁ、結構重たい話です。映画の中身と直接関係ないですが、アメリカ医療の一端を見た気がします。どんどんクスリを出すとか、保険を気にするとかetc.etc.。TPPで医療分野が自由化されると、医療はこんな風になってしまうんですかね?やだなぁ~。

タイトル サイド・エフェクト / 原題 Side Effects
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2013年/アメリカ
監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 ジュード・ロウ(ジョナサン・バンクス)、ルーニー・マーラ(エミリー・テイラー)、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(ビクトリア・シーバート)、チャニング・テイタム(マーティン・テイラー)

[2013/09/06]鑑賞・投稿

マン・オブ・スティール (3D字幕) / Man of Steel

2013年09月01日 | 洋画(アメリカ系)
ケビン・コスナー、ダイアン・レイン、ラッセル・クロウと言う錚々たるメンバーが出演していますし、制作/原案にはクリストファー・ノーランも参加。なんか、それだけでも凄いことになっています。

凄いのは出演者だけではありません。出演者に応じて、内容もすごいです。これまでの、スーパーマンシリーズでは、スーパーマン誕生の秘密は、言葉では語られた事がありますが、映像化されたことはありませんでした。だってねぇ。ゾッド将軍って、名前は聞いたことがありましたが、マーベルでは出てきているのかもしれませんが、映画の映像で見たのは初めてです。

今回の作品で素晴らしいのは、スーパーマン誕生の秘密を描いたということにも関連しますが、スーパーマンの苦悩、人となりを描き出したということ。「鳥だ!飛行機だ!いや!スーパーマンだ!」ではなく、自分の脳力に悩み、どう生きるべきかを考えに考えた、スーパーマンの姿。しかも、同じクリプトン人との対立不可避で、単純な勧善懲悪ではないストーリーは、物語になります。

クリプトンライトに曝されたスーパーマンが、力を失う描写をした作品は嘗てありましたが、今回は、クリプトン星の環境に曝されると弱ってしまうという設定。それも、スーパーマンが地球で、地球人と一緒に育ったから、地球の環境に最適化されてしまったからという事のようです。

ラッセル・クロウもカッコイイけど、ケビン・コスナーもカッコイイんだよなぁ。たまりませんよ。カンザスでクラークが生まれ育ったという設定は、クラークの育ての父親ジョナサンが、ああ言う形で亡くなってしまうと言うこととも関連しています。あの最期は、『“父”の教え』なんですね。こう言う意味では、本当の父のジョー=エルも信念を持った人物。本当の父も、育ての父も、なかなかの人物なんですね。

ロイスが、ボツにされた記事をリークするために接触した人物が、何となく、ジョナサン・アサンジ氏の風貌を彷彿とさせるのは、意図的なんでしょうか(笑)?

いやぁ、それにしても、重厚なスーパーマンです。クリストファー・ノーランっぽい気がします。って言うか、物語終盤に“スーパーマン”の言葉は少しだけ出てきますが、基本的には、殆どスーパーマンと言うキーワードは出てきません。それも、この物語に流れている、「地球人と一緒にどう生きるか」と言う事と関連しているんでしょうね。いきなり「鳥だ!飛行機だ!いや!スーパーマンだ!」では、地球で生きるために苦悩すると言うコンセプトは描けないですからね。

なかなか、心にズッシリと来る素晴らしい作品でした。

タイトル マン・オブ・スティール / 原題 Man of Steel
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2013年/アメリカ
監督 ザック・スナイダー
出演 ヘンリー・カビル(クラーク・ケント/カル=エル)、エイミー・アダムス(ロイス・レイン)、マイケル・シャノン(ゾッド将軍)、ケビン・コスナー(ジョナサン・ケント)、ダイアン・レイン(マーサ・ケント)、ローレンス・フィッシュバーン(ペリー・ホワイト)、アンチュ・トラウェ(ファオラ=ウル)、アイェレット・ゾラー(ララ・ロー=ヴァン)、クリストファー・メローニ(ネイサンハディ大佐)、ラッセル・クロウ(ジョー=エル)、ハリー・レニックス(スワンウィック将軍)

[2013/09/01]鑑賞・投稿