勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

ドリーム / Hidden Figures

2017年09月29日 | 洋画(アメリカ系)
アメリカがマーキュリー計画を推進するにあたり、計画の成功に貢献した、黒人女性エンジニアたちの活躍を描いた作品。

そう言えば、宇宙開発を描いた映画には、『ライトスタッフ』や『アポロ13』とかありますが、これらには白人男性しか出てきていないですよね?特に、『ライトスタッフ』は、この作品で描かれているマーキュリー計画を、宇宙飛行士の側から描いたものですが、その成功の陰には、こんな話があったとはね。

この物語は、1960年代初頭。公民権運動が盛んになる時代よりも、もっと前の時代。南北戦争では、南軍側についたバージニア州での話ですから、この作品で描かれたくらいの事は、“普通”だったんでしょうね。なんか、私の感覚から行くと、おぞましい差別ですけどね。ちまたの一般市民ならいざ知らず、みんな科学者なのにね・・・

新鮮だった?のは、IBMのメインフレーム計算機導入のくだり。コンピューターの大きさもまともに考えられない人たちが宇宙計画を推進しているって、何というパラドックスなんだろうと思いました。

当初予定されていた邦題は『ドリーム 私たちのアポロ計画』と言うもので、“私たちのアポロ計画”と言う【全く意味不明】の言葉が付け加えられていました。ですがこの作品は、アポロ計画ではなく、マーキュリー計画を描いた作品であるので、“私たちのアポロ計画”と言う言葉は全く不適切なんですよねぇ。結果として、邦題は『ドリーム』と言うシンプルなものになりました。

原作となっているのはノンフィクション小説ですが、物語をわかりやすくするため、ドロシー・ヴォーンの昇進のくだり(実際には、1949年の段階で昇進していた)、メアリー・ジャクソンの学位取得のくだり(実際には、1958年の段階で学位を取得し、エンジニアになっている)、アル・ハリソンの役職(実際には、アル・ハンソンの役職にあったのは別の人物)など、史実との相違点も見られているそうです。

って言うか、ケビン・コスナーかっこよかった(笑)

タイトル ドリーム / 原題 Hidden Figures

日本公開年 2017年
製作年/製作国 2016年/アメリカ
監督 セオドア・メルフィ
原作 マーゴット・リー・シェッタリー『Hidden Figures』
出演 タラジ・P・ヘンソン(キャサリン・G・ジョンソン)、オクタビア・スペンサー(ドロシー・ボ―ン)、ジャネール・モネイ(メアリー・ジャクソン)、ケビン・コスナー(アル・ハリソン)、キルステン・ダンスト(ビビアン・ミッチェル)、ジム・パーソンズ(ポール・スタッフォード)、マハーシャラ・アリ(ジム・ジョンソン/キャサリンの夫、軍人・陸軍中佐)、キンバリー・クイン(ルース)、グレン・パウエル(ジョン・グレン/宇宙飛行士)、オルディス・ホッジ(レビ・ジャクソン)

あしたは最高のはじまり / Demain tout commence

2017年09月15日 | 洋画(フランス系)
軽くネタばれあり。

嘗て、一度関係をもってしまった女性から赤ん坊を預けられたプレイボーイが、偶然知り合ったゲイとともに、赤ん坊を育てていくヒューマンドラマ。

元々は、「Instructions Not Included」と言うメキシコ映画。残念ながら、元ネタは見たことがありません。元々ネタでは、主人公が、メキシコ・アカプルコから、アメリカ・LAに行く設定が、この作品では、フランスからイギリス・ロンドンと言う事になっている様です。

サミュエルは、クリスティンとグロリアの親権を争い、勝ったわけですが、それだけで十分物語として成立していたのですが、そこに加えてそんな結末があるとはねぇ。

なんとも結末が悲しいですね。そう来るか、と。病院に行くシーンで、先が短いと言う趣旨の話があったので、サミュエルの事だと思ったんですけどねぇ。まさかね、そう来るか、と言う事ですよ。

いやぁ、ヒューマンなドラマでした。良かったです。

タイトル あしたは最高のはじまり / 原題 Demain tout commence

日本公開年 2017年
製作年/製作国 2016年/フランス・イギリス
監督 ユーゴ・ジェラン
出演 オマール・シー(サミュエル)、クレマンス・ポエジー(クリスティン)、アントワーヌ・ベルトラン(ベルニー)、グロリア・コルストン(グロリア)、アシュリー・ウォルターズ(ローウェル)、ラファエル・ボン・ブルメンタル(トム)、クレマンティーヌ・セラリエ(サマンサ)、アンナ・コティス(アップルトン校長)、ラケル・キャシディ(グロリアの担任)、ハワード・クロスリー(判事)

ダンケルク / DUNKIRK

2017年09月10日 | 洋画(アメリカ系)
第二次世界大戦の序盤、破竹の勢いで勝ち続けるナチスドイツの勢いに押された連合軍が、ヨーロッパ大陸から必死の撤退を行うダイナモ作戦を描いた作品。

ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』などの作品で、不思議な世界をCGを使わず欲しいままに映像にしてきた、クリストファー・ノーラン監督が描いた現実世界の話。

現実世界を描いた作品でも、クリストファー・ノーラン監督の映像は、やっぱりすごかったです。元々CGが嫌いで、可能な限りセットを組んで、実際の映像として描き出すと言うポリシーを持った監督ですが、そのポリシーはこの作品でも健在。空中戦も実際の飛行機で撮影されており、CGとは違う本物の迫力を感じました。

作品は、陸(波止場の脱出兵)、海(救出船)、空(戦闘機)の視点で描かれているんですが、ぞれぞれの時間軸が、陸は一週間、海は一日、空は一時間と、全然違うスケールになっています。ですが、スクリーン映像で見てみると、時間軸の違いは全く意識することなく、上手く絡み合って見事な映像作品に仕上がっているんですねぇ。今回は、画面が回転したりはしませんが、時間が絡み合っていました(笑)。

実際の結末は歴史が語っている訳ですが、映像ではハラハラドキドキ。新しいクリストファー・ノーランを見た気がします。

タイトル ダンケルク / 原題 Dunkirk

日本公開年 2017年
製作年/製作国 2017年/アメリカ
監督 クリストファー・ノーラン
出演 フィオン・ホワイトヘッド(トミー/二等兵)、ジャック・ロウデン(コリンズ)、ハリー・スタイルズ(アレックス)、アナイリン・バーナード(ギブソン/無口な兵士)、ジェームズ・ダーシー(ウィナント陸軍大佐)、ケネス・ブラナー(ボルトン海軍中佐)、マーク・ライランス(ミスター・ドーソン/徴用船船長)、トム・グリン=カーニー(ピーター/ドーソンの息子)、バリー・コーガン(ジョージ/ピーターの友人)、キリアン・マーフィ(ドーソンに救助される英国兵)、ジャック・ロウデン(コリンズ/英軍戦闘機パイロット)、トム・ハーディ(ファリア/英軍戦闘機パイロット)

三度目の殺人

2017年09月10日 | 邦画
殺人の前科のある男・三隅による殺人。弁護士・重盛にとってはありふれた事件のはずであったが、事件を調べていくうちに、事件の持つ闇に深まり、次第に重盛は自信を失っていく。

そして父になる』『海街diary』でヒューマンドラマを描いてきた是枝裕和監督が描いたサスペンス。

「弁護するのに、被告を知る必要はない」それが、弁護士の本音だとすれば、ちょっと悲しいですね。「すべては依頼人の利益のため」とも言っていましたが、それは、真実と違っても“被告の利益”になるのなら、その方針で推し進めると言う事なので、やっぱりマイナスの印象を受ける言い方でしたね。

いやぁ、ましゃも良いですが、やっぱりこの作品は、役所広司の演技が見どころなんじゃないでしょうか?その芸名の持つ意味の通り“役どころが広い”俳優さんだと思います。

本編と無関係ですが、ちょっと気になったのは斉藤由貴。不倫疑惑が囁かれているところですが、この作品でも、そう言う風に向ける風向きもアリ、なんか現実とリンクして見えてしまいました。

あと、これも本筋では無いですが、広瀬すずは、やっぱり制服姿がかわいいですね。どんなに影のある役どころであったとしてもね。彼女の今後の課題は、制服を着ない役を、どのくらいうまく演じられるかと言うところにあるのではないかと、この作品を見て(大きなお世話ですが)心配になってしまいました。

法廷を舞台にしたサスペンスであるわけですが、実際に見た後思ったのは、話が殺伐としているので一般に温かいと言う意味合いを持ちがちなヒューマンドラマと言う言葉は使いにくいですが、やっぱり描いているのは人でしたね。人を描くと言う是枝監督の本領を発揮した作品だと思います。

タイトル 三度目の殺人

日本公開年 2017年
製作年/製作国 2017年/日本
監督 是枝裕和
出演 福山雅治(重盛朋章)、役所広司(三隅高司/殺人犯)、広瀬すず(山中咲江/被害者の娘)、満島真之介(川島輝/朋章の事務所の若手弁護士)、市川実日子(篠原一葵/検事)、松岡依都美(服部亜紀子/朋章の事務所の事務員)、橋爪功(重盛彰久/朋章の父、元判事)、斉藤由貴(山中美津江/被害者の妻、咲江の母)、吉田鋼太郎(摂津大輔/朋章の友人の弁護士)

エル ELLE / Elle

2017年09月02日 | 洋画(フランス系)
社会的にも成功した女性が、ある日、自宅で男に襲われるが、なぜか警察に届けようとしない。女性が警察に届けようとしないのには、理由があった・・・。

中々複雑な人間関係ですね。それと、ミシェルの性格も、中々屈折している様です。って言うか、ミシェルの性格が屈折している事が明らかになっていくのは、自宅で襲われた事が切っ掛けなんでしょうね。何かのタガが外れたと言うか。だって、そこまで、会社を興して成功している訳ですから、それまでは、そんな異常な性格である事は、明確では無かったと言う事ですよね。

そんな屈折した性格のミシェルを、イザベル・ユペールが非常にうまく演じています。冷静であって、どこか変。“変”と言うのも、コミカルな意味ではなくて、サイコパス的な感じです。いや、会社を成功させているのだから、サイコパスなのかな、ミシェルは。

屈折しているのは、実はミシェルだけでは無いのかも。この作品に登場している人物、みんなそれぞれ、屈折している人間ですね。

ラストが、中々凄いです。怖いですね。

タイトル エル ELLE / 原題 Elle

日本公開年 2017年
製作年/製作国 2016年/フランス・ベルギー・ドイツ
監督 ポール・バーホーベン
原作 フィリップ・ディジャン『Oh...』
出演 イザベル・ユペール(ミシェル・ルブラン)、ローラン・ラフィット(パトリック)、ビルジニー・エフィラ(レベッカ/パトリックの妻)、クリスチャン・ベルケル(ロベール)、アンヌ・コンシニ(アンナ/ミシェルのビジネスパートナー、ロベールの妻)、シャルル・ベルラン(リシャール/ミシェルの元夫)、ジョナ・ブロケ(ヴァンサン/ミシェルの息子)、ジュディット・マーレ(アイリーン・ルブラン/ミシェルの母)

ザ・ウォール / The Wall

2017年09月01日 | 洋画(アメリカ系)
2007年のイラク戦争が舞台。狙撃兵に狙われたアメリカ兵の生き残りをかけた戦いを描いた作品。

ほう。実話では無くフィクションですが、中々、スリリングで、ドキドキする展開。もしかしたら、こう言う事もあったかもしれないと言う雰囲気を感じます。

途中で、謎の声の人物の場所は判りますが、最後の最後までその姿は明らかになりません。それが、この作品のドキドキ感、スリリング感を増しています。

ラストですが、やっぱりそう来ますか・・・。いや、もしかしたらそう来るかなぁと思いましたが、やっぱりね。そう来るよね。また、その前後に、謎の声が必要以上にアイザックの個人的な事柄を知りたがった理由もわかります。この作品は、戦場でのアクションスリラーですが、普通のミステリーとして使えるプロットだなと思いました。

後々冷静に考えてみると、アメリカ人の、アフガニスタン感と言うか、自分と異なる良く分からないものに対しての感覚を垣間見た気がします。自分が理解できないことは、やっぱり謎であって、最後まで理解できないものであると認識すると言うね。うーん、そういう物事のとらえ方だと、上手くいくものも、上手くいかないよ。

タイトル ザ・ウォール / 原題 The Wall

日本公開年 2017年
製作年/製作国 2017年/アメリカ
監督 ダグ・リーマン
出演 アーロン・テイラー=ジョンソン(アイザック)、ジョン・シナ(マシューズ)