勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

栄光のランナー 1936ベルリン / Race

2016年08月14日 | 洋画(その他)
いままさにリオデジャネイロオリンピックたけなわですが、1936年、ナチス政権下で行われたベルリンオリンピックにおいて、史上初の4冠を達成したジェシー・オーエンスの半生を描いた作品。

134分と、二時間を超える長い作品ですが、時間を感じさせないほど中身に引きこまれました。単に“努力しました”と言う話だけじゃ無い気がするんですよね。確かに、ジェシー自身は努力しました。ただ、それだと、物語が薄っぺらくなってしまう気がするんですよね。

ベルリンオリンピックでのジェシーの活躍は、ジェシー自身の出場するかボイコットするかの悩み、ジェシーのコーチのラリーのオリンピックへの思い、ベルリンオリンピックの走り幅跳び決勝で戦ったルッツ・ロングとのやり取りやルッツの思いなど、それ意外の様々な人の、様々な立場での、様々な思いの結集なんだと思います。

特にルッツ・ロングには感動しました。まともなドイツ人も居たんだなと。あの時代、あのような考え方をドイツ国内でするのは、相手がアメリカ人であったとはいえ、中々勇気の要ることだったと思います。結構衝撃的でしたよ。

あと改めて感じたのが、月並みで薄っぺらいですが、ジェシー・オーエンスは、アメリカ国内でも人種差別と戦っていたんですよね。戦前の出来事なので、まだ差別の残る時代と言ってしまえばそうなのかもしれません。でも、そう言う時代に、構成に残る業績を残したジェシーは、強い人なんだったと思います。まぁその強さは、ルースとの結婚を巡っても発揮されたようですが(苦笑)

単に感動じゃないですね。色々と考えさせられ、心に残る作品でした。

タイトル 栄光のランナー 1936ベルリン / 原題 Race

日本公開年 2016年
製作年/製作国 2016年/カナダ・ドイツ
監督 スティーブン・ホプキンス
出演 ステファン・ジェームス(ジェシー・オーエンス)、ジェイソン・サダイキス(ラリー・スナイダー/ジェシーのコーチ)、シャニース・バンタン(ルース・ソロモン/ジェシーの恋人)、ジェレミー・アイアンズ(アベリー・ブランデージ/アメリカオリンピック委員会会長)、ウィリアム・ハート(エレミア・マホニー)、カリス・ファン・ハウテン(レニ・リーフェンシュタール/ベルリンオリンピック記録映画『オリンピア』の監督)、バーナビー・メシュラット(ヨーゼフ・ゲッペルス)

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ / Les héritiers

2016年08月12日 | 洋画(フランス系)
実話に基づく作品。

高校の落ちこぼれ達が、ナチスによるユダヤ人絶滅政策に関するテーマで全国歴史コンクールに参加する事で変わっていくと言うのは、いかにも学生物語にありそうな話ですが、実話という所が凄い。

もっと『凄い』と思ったのが、第2次世界大戦を巡るナチスの非道の歴史を語り継ぐために、“全国歴史コンクール”と言うものがフランスで催されていると言う事。フランスは戦勝国と見られる所もありますが、実際には一部は枢軸側に居たので、歴史を語り継ぐという事は重要なことなんだと思います。自身の負の歴史に目を向けるということは大変ですが、誠実に実行しているんですね。

この作品は、高校生たちが全国歴史コンクールを通じて成長していくという物語と言うところに感動したんですが、もう一つ、やはりその全国歴史コンクールと言うオブラートに包んで表現したナチスによるユダヤ人絶滅政策の非道さに心を動かされました。こんなことは二度とあってはいけないです。

翻って我が国日本。自分の負の歴史にきちんと向き合っているだろうか。誠実に過去を見なおしているだろうか。そう言う問いかけをされたような気がします。

タイトル 奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ / 原題 Les héritiers

日本公開年 2016年
製作年/製作国 2014年/フランス
監督 ジェームズ・バンダービルト
出演 アリアンヌ・アスカリッド(アンヌ・ゲゲン)、アハメッド・ドゥラメ(マリック)、ノエミ・メルラン(メラニー)、ジュヌビエーブ・ムニシュ(イヴェット)、ステファン・バック(マックス)、モハメド・セディッキ(オリバー/ブラヒム)、レオン・ズィゲル(本人、強制収容所の生存者)

ニュースの真相 / Truth

2016年08月11日 | 洋画(その他)
2004年にアメリカで実際に起きたジョージ・W・ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑にまつわる“スクープ”報道による騒動を描いた作品。

結局は、ブッシュ大統領の軍歴詐称の『証拠』とされたものが、偽造されたものであったと言うことになるのですが、これってもはや典型的な陰謀論になってないですかね?一応、公的には軍歴は詐称していないということになるのだと思うんですが、実は本当は軍歴を詐称していて、その調査を潰すために逆に偽造した証拠を掴ませて、それ以上の追求をされないようにした・・・とか。ブッシュ大統領が空軍州兵になるために口を利いたという人物もいるわけですしね。真相は闇の中ですね。

ダン・ラザーをロバート・レッドフォードが演じているのですが、似てない?って言うか、「ロバート・レッドフォード歳取ったな」と思ってしまいました。

この騒動の中心に居た人物に寄る自伝を原作としているので、内容的には、微妙に自己弁護的雰囲気を感じずにはいられません。独立調査委員会の描写にしても、実際にもそうであったのかもしれませんが、結論ありきのシャンシャン委員会であったと言わんばかりの描写ですしね。

この作品で判ったことは、報道に携わる人達は、時の権力に萎縮してはいけないということじゃ無いかな。作品中、CBSの親会社バイアコムが、時の政権ベッタリなので“スクープ”を葬ろうとしているという趣旨の描写がありましたが、報道の自由の国のアメリカとしては、そういう事は無かったと信じたいですけどね・・・。翻って今の日本。報道機関よ、もっと頑張れ。もっと質問しろ!もっともっと勉強しろ!

タイトル ニュースの真相 / 原題 Truth

日本公開年 2016年
製作年/製作国 2015年/オーストラリア・アメリカ
監督 ジェームズ・バンダービルト
原作 メアリー・メイプス『大統領の疑惑』
出演 ケイト・ブランシェット(メアリー・メイプス)、ロバート・レッドフォード(ダン・ラザー)、エリザベス・モス(ルーシー・スコット/60Minutesチーム)、トファー・グレイス(マイク・スミス/60Minutesチーム)、デニス・クエイド(ロジャー・チャールズ中佐/60Minutesチーム)、ステイシー・キーチ(ビル・バーケット中佐)、ブルース・グリーンウッド(アンドリュー・ヘイワード/CBS CEO)

シン・ゴジラ

2016年08月01日 | 邦画
「いま日本にゴジラが襲来したら」と言う事を描いた作品。

こう言う作品好きです。内閣府(防災担当)が制作協力したこともあり、“防災”と言う視点からの、ある意味シミュレーションになっていると思います。実際、制作に際しては、様々なところの見学や関係者とのインタビューなどがあったらしく、官邸危機管理室などは、「あまり忠実に作るとマズイ」と言う制限もありながらも、かなり似た作りになっている様です。

それと、首都防災という観点では、東京都の存在も無視できないわけですが、東京都庁の災害対策本部室も描かれていて、これも結構似た感じ。東京都庁の災害対策本部室は、昔は見学できたんですが、いまはどうなんですかね?警備上の理由で、出来なくなっていても不思議ではない昨今のご時世・・・。

この作品の防衛大臣が女性で、本物の女性の防衛大臣だった小池百合子さんが新東京都知事に当選したのは、なんか妙な巡り合わせのような、そうでも無いような・・・。

以下微妙にネタバレ。

ゴジラの活動を停止させるために、ゴジラに凍結液を経口注入するんですが、その時にコンクリート圧送車を使うというのは、これは福島第一原発事故の際に、水を注入するのにコンクリート圧送車を使ったことになぞらえていますよね。なんか、その任務も、当時の水注入部隊に似た感じがしますし。それと、このあたりの件については少し疑問も。第一小隊が注入中に全滅しているのですが、凍結液って、ギリギリの量なんじゃ無かったっけ?注入第一小隊が全滅したことで、凍結液が足りなくなったりしなかったんでしょうか?

あと、内閣府立川災害対策本部予備施設を映画で描いたのは、少なくとも私は初めて見ました。そう言うリアルな所がいいですね。

物語終盤、矢口がヤシオリ作戦部隊を前に演説するんですが、これって、最初のインデペンデンス・デイのホイットモア大統領の演説、あるいは、アルマゲドンでハリー・スタンパー達が新型スペースシャトルで宇宙に向かう時に掛けられた言葉を彷彿とさせましたね。「自衛隊は最後の砦」と言う言葉。そう言う言葉を映画で言う時代になったんですね。時代を感じました。

それと、日本への核攻撃カウントダウンを中断させるために、フランスを使ったという点。これは凄い!イギリスがアメリカと歩調を合わせないことはないですから、五大国でそう言う駆け引きに応じそうなのは、リアルにフランスだけ。その設定痺れます。

残念だったのが、カヨコ。う~ん、石原さとみは好きなんですが、大統領特使には若すぎたんじゃ無いですかねぇ?ケネディ大使位であれば納得感が有るんですが・・・。頭が良くて、血筋も良いという設定ではありますが、無理筋ではなかったかなぁ・・・。

あと、鎌倉に上陸したゴジラの東京侵入を阻止するために、張った多摩川の防衛線。戦車が配備されていましたが、あれが本当であれば、他の防御ラインへの戦車配備は諦めていたということ?若干微妙に感じないことも無かったです。

いやぁ、それでも、良かったです。面白かったです。

タイトル シン・ゴジラ

日本公開年 2016年
製作年/製作国 2016年/日本
総監督・脚本 庵野秀明
監督・特技監督 樋口真嗣
准監督・特技総括 尾上克郎
出演 長谷川博己(矢口蘭堂/内閣官房副長官)、竹野内豊(赤坂秀樹/内閣総理大臣補佐官)、石原さとみ(カヨコ・アン・パタースン/米国大統領特使)、、高良健吾(志村祐介/内閣官房副長官秘書官)、市川実日子(尾頭ヒロミ/環境省自然環境局野生生物課課長補佐、巨大不明生物災害対策本部(巨災対)員)、津田寛治(厚生労働省官僚、巨災対員)、高橋一生(文部科学省官僚、巨災対員)、野間口徹(経済産業省官僚、巨災対員)、塚本晋也(生物学者、巨災対員)、神尾佑(外務省官僚)、松尾諭(泉修一/保守第一党政調副会長)、國村隼(財前正夫/統合幕僚長)、ピエール瀧(西郷/戦闘団長)、大杉漣(大河内清次/内閣総理大臣)、柄本明(東竜太/内閣官房長官)、余貴美子(花森麗子/防衛大臣)、中村育二(金井/内閣府特命担当大臣)、平泉成(里見祐介/農林水産大臣)、矢島健一(国土交通大臣)、浜田晃(総務大臣)、手塚とおる(文部科学大臣)、渡辺哲(郡山/内閣危機管理監)、古田新太(警察庁長官官房長)、モロ師岡(警察庁刑事局局長)、光石研(小塚/東京都知事)、藤木孝(東京都副知事)、嶋田久作(片山/外務省官僚)、原一男(生物学者)、犬童一心(古代生物学者)、緒方明(海洋生物学者)、斎藤工(池田/戦車中隊長)、鶴見辰吾(矢島/統合幕僚副長)、片桐はいり(官邸職員)、松尾スズキ(ジャーナリスト)、小出恵介(消防隊隊長)、野村萬斎(ゴジラ@モーションキャプチャーにて)