勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

ブレイブ ワン(2007年)

2007年10月27日 | 洋画(アメリカ系)
暴漢に襲われ、一緒に居た婚約者は死亡し、自身は重症を負ったラジオパーソナリティー。外出することに恐怖を覚え護身用に違法に拳銃を入手する。たまたま立ち寄ったコンビニエンスストアで強盗を撃ち殺してしまい、その事で、自分が変わってしまったことに気が付く。

主人公のエリカ・ベインを演じるのはイェール大学卒業の才女ジョディ・フォスター。彼女が、自分のしていることに対する罪悪感に苛まれながらも、止める事ができず、次の目標を探してしまう苦悩を、非常に上手に演じています。彼女じゃなければ出来なかったかもね。エリカの職業は、当初、新聞記者が想定されていましたが、ジョディ・フォスターが演じることになって、ラジオパーソナリティに変更されました。でもその方が、話的に良かったと思います。

ふとした事からエリカの事に気が付き、最後にエリカが思いを遂げることに手助けしてしまうことになるショーン・マーサー刑事を演じるのはテレンス・ハワード。派手な演技はありませんが、存在感たっぷり。いい演技を見せています。

この手の、復讐殺人と言うのは、アメリカでは時折耳にしますね。マスコミも、犯人を持上げがちになるので、英雄気取りの犯人による犯行がエスカレートしてしまう例は、結構あります。これも、そうなりかけるのですが、最後の一線は(まぁ、既に一線は越えているとも言いますが)、踏みとどまり、最後の、そして本当の目的を達成することで、こちら側に戻ってきているようです。

社会派の、非常に重いテーマの映画ですが、誰にでも起こりえることであり、身近な問題であるので、引き込まれてしまいます。アメリカの抱える矛盾、悩みが描かれた映画だと思います。

タイトル ブレイブ ワン
原題 The Brave One
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/アメリカ・オーストラリア
監督 ニール・ジョーダン
出演 ジョディ・フォスター、テレンス・ハワード、ナビーン・アンドリュース、ニッキー・カット、メアリー・スティーン・バージェン

[2007/10/27]鑑賞・投稿

インベージョン(2007年)

2007年10月21日 | 洋画(アメリカ系)
外見は全然違っていないのに、昨日までの人とは何かが違う。その原因は、地球外からの細菌への感染。眠ってはいけない。眠ってしまうと、その細菌が発症してしまう・・・。とまぁ、地球外生命体(細菌も生命体だとして)モノとしては、ありそうな話です。

冒頭、スペースシャトルの墜落・空中分解と言う衝撃的な話から始まりますが、これは2003年のコロンビア号空中分解事故の映像を利用しているようです。確かにあの話は衝撃的でした。このスペースシャトルの事故で、宇宙から、今回の事件を引き起こす細菌がもたらされたと言う設定ですが、別に、スペースシャトルを墜落させなくても良かったんじゃないかな? より衝撃をもたらす効果はあったけど、必然性に掛ける感じがします。

ちょっと良く分からないのが、スペースシャトル事故の当初から、細菌の感染が確認されていたにもかかわらず、CDC(米国疾病予防管理センター)の感染症対策の専門家であるはずのキャロル(ニコール・キッドマン)の元夫タッカー(ジェレミー・ノーサム)が、不用意に野次馬から差し出されたスペースシャトルの破片に素手でさわり、怪我をしてしまうと言うところ。彼は、専門家であるはずなので、その危険性は十分理解していたはずなんですがね。

CDCではなく、USAMRIID(米陸軍感染症研究所)でこの感染への対策の研究が行われますが、CDCがダメで、USAMRIIDが大丈夫な理由がイマイチ不明。民間での出来事なので、CDCが一義的な責任を負う組織だと思うんですが。最後の最後に、USAMRIIDも感染してしまい、希望が絶たれてしまうと言う「これでもか!」的な物語の転換を期待していたのですが、余りにも絶望的な設定になるためか、そう言う話にはなりませんでした。

この手のお話の一応のお約束として、キャロル、キャロルの友人ベン(ダニエル・クレイグ)、そしてキャロルの息子で今回の細菌への免疫を持ち、感染回復からの鍵を持つオリバー(ジャクソン・ボンド)は、物語の後半まで感染しません。もっとも、これもお約束として、この中の一人が終盤に感染・発症してしまうんですけどね。

原作は、1955年のジャック・フィニイの小説「盗まれた街」。これまで数回映画がされていますが、それぞれ、映画化された頃の時代背景を下に、赤狩りなどの裏のテーマを持った作品に仕上がっているそうです。今回の設定では、いきなりワシントンDCも感染地域になってしまっています。ということは、政府首脳も感染してしまうと言う意味でもあって、それが、アメリカ以外の地域(日本やヨーロッパ)では、この細菌への感染は特別危険な感染症として対策が行われているのに対し、アメリカ国内では、今回の感染症はインフルエンザであるとの情報操作が行われ、全く対策が行われない(逆に、感染している政府の官僚達によって感染を広げる行為が繰り広げられる)と言う事態を引き起こしているわけですが、この政府による情報操作は、いまのイラク情勢に対しての情報操作を示していると見るのは、考えすぎでしょうか?

現実の今はハロウィーンですが、この映画もハロウィーンの時期の話。ハロウィーンの”トリックorトリート”の風習が映画の中にも描かれています。それと、やっぱり、ニコール・キッドマンは美人ですね。こんなお母さんが居たら、自慢しまくりだな。

タイトル インベージョン
原題 The Invasion
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/アメリカ
監督 オリバー・ヒルシュビーゲル
出演 ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、ジェレミー・ノーサム、ジェフリー・ライト、ジャクソン・ボンド、ベロニカ・カートライ

[2007/10/21]鑑賞・投稿

グッド・シェパード(2006年)

2007年10月20日 | 洋画(アメリカ系)
1961年、ピッグス湾侵攻作戦が失敗。失敗の原因が、CIA内部からの情報漏れにあると睨まれた。情報漏れの元を探るため、ベテランエージェントのエドワード・ウィルソン(マット・デイモン)に送られた情報を下に様々な調査が行われるが・・・。と、こんな感じだと、スパイアクション満載の、大活劇であるかのように誤解しますが、実際は違います。CIA黎明期、もっと言えば、CIAの前身のOSSの頃からのエドワードの半生を振り返るような話になっています。

元々、エドワードの役は、監督ロバート・デ・ニーロの暴露に依れば、別の俳優にオファーされたらしいのですが、スケジュールが遭わず断念。マット・デイモンにその役は回ってきたそうです。大学生の青年期から、子供が大学生になる頃の年齢まで演じていますが、前半の青年期は良いとして、後半の、壮年期を演じるには、彼はちょっと若すぎるような気がします。同じことは、エドワードの妻クローバーを演じるアンジェリーナ・ジョリーも同様。子供が大学生の母親にしては若すぎます。

実際の出来事を下地にしていますが、微妙にいろんなところが違っています。ワイルド・ビルはサリバン将軍(ロバート・デ・ニーロ)と言う人物になっていますし、CIAの長官はフィリップ・アレン(ウイリアム・ハート)ではなく、有名なアレン・ダレスです。とは言え、それぞれモデルにした人物に、微妙に同じようなところがあるようになっているみたいですが。

イェールのスカル&ボーンズに、結構焦点が当てられていますが、このスカル&ボーンズがアメリカの政財官界に大きな影響を及ぼしているのは、有名な事実。歴代大統領の多くに、メンバーが居り、現在のブッシュ大統領もメンバーであると言われています。それに加え、イギリスでの活動に際し、大学の教授や上流階級の数多くの人間が、情報活動に携わってる描写がなされていますが、これも事実。実際、第二次大戦のとき、イギリスでは、直ぐに役立ちそうな物理・化学を専攻したものだけではなく、歴史学者・数学者も情報活動に対して大量に動員されています。

167分と、非常に長い映画です。しかし、陰湿な情報活動を描いている割には、それほど長いようには感じませんでした。物語の起伏が余り無いので、そう言うのが苦手な人にはダメでしょう。スパイを描いた映画と言うと、ドンドン・パチパチの激しいものが多いですが、これは一線を画す、むしろリアルなスパイ映画と言っていいと思います。

タイトル グッド・シェパード
原題 The Good Shepherd
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2006年/アメリカ
監督・出演 ロバート・デ・ニーロ
製作総指揮 フランシス・フォード・コッポラ
出演 マット・デイモン、アンジェリーナ・ジョリー、アレック・ボールドウィン、ウイリアム・ハート

[2007/10/20]鑑賞・投稿

大統領暗殺(2007年)

2007年10月14日 | 洋画(イギリス系)
現職のアメリカ大統領の暗殺を描いていると言うことで、公開前から『不道徳だ』などと言う激しい批判にさらされた、問題の作品。流石にアメリカの映画ではなく、イギリスの映画。”その日”2007年10月19日は、もう直ぐ。

映画の構成は、事件が発生し、一定の時間がたってから事件を振り返ると言うドキュメンタリータッチになっています。完全にフィクションと言うことは分かっているのですが、作り方が良く見るドキュメンタリーに完全に一致していて、一瞬「本当のことなのではないか?」と思わされてしまうほど。それほど、作りは巧妙です。しかし物語としてみた場合、後半になるとちょっと間延びした印象があります。もう少しテンポよく進んでくれれば良いのですが。

一応、”出演:ジョージ・W・ブッシュ、ディック・チェイニー”となっています。しかし、果たして”出演”と言って良いのでしょうか? 確かにブッシュはこの物語には欠かせない人物だし、チェイニーもブッシュ後を描くには必要な人物なのではあるけど・・・。彼らの”出演”シーンは、過去の演説などの映像を使っている模様です。(そもそも、顔は知られているので、別人は使えないし、演じてくれるわけが無い。)

9.11以降のアメリカの雰囲気を繁栄して、犯人は中東系の人物と言う線で進められますが、その後、驚愕の事実が発覚します。それは、イラク戦争が抱えるアメリカ国内の問題を反映していて、非常に奥深い意味合いを感じさせられます。「反戦の母」シンディ・シーハンさんと言う人もいますからねぇ。また、作中のブッシュ後のアメリカ政府の対応をみると、ブッシュがチェイニーに変わっても、何も変わらない、むしろ問題は悪化すると言うような事を暗示されいるように見ることも出来ます。って言うか、現実の世界でも、ブッシュがチェイニーに変わったところで、どちらも石油業界の利権を代表しているわけですから、この映画の通りのような気がします。

扱っている内容が、扱っている内容だけに、始まる前のクレジットが注意深くなされています。内容は、事件の現場とされるのがシカゴなのですが、それらの場所や、人々、政府機関は、完全に物語上のもので、実際のことではないと言う趣旨。そうでないと、ヘイトクライムなどを引き起こしかねないですからね。それと、原題が”Death of a President”と”Death of the President”で無いことに注目。”the”ではなく、”a”であることに、一応のエクスキューズがあるように思えます。

これは映画であり、完全にフィクションである筈なのですが、実際の出来事を見てしまったような気がするのは気のせいでしょうか? 非常に精巧な近未来シミュレーションのような気がします。その誕生からして疑惑に包まれていますから、その正統性に疑問をもつ人が少なくないわけですが、それにしても、史上ここまで嫌われる大統領と言うのも、結構稀有な存在かもしれないですね。

タイトル 大統領暗殺
原題 Death of a President
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/イギリス
監督・脚本・製作 ガブリエル・レンジ
出演 ジョージ・W・ブッシュ、ディック・チェイニー

[2007/10/14]鑑賞・投稿

キングダム/見えざる敵(2007年)

2007年10月13日 | 洋画(アメリカ系)
休日のソフトボール大会が開かれていたサウジアラビアの外国人居住地区で、自爆テロが発生。多数の外国人が犠牲となる。危険を理由に国務省がFBIの現地訪問に難色を示す中、現地サウジアラビアに、4人のFBI捜査官が捜査に赴くことに。しかしながら、現地でも歓迎されない雰囲気で、現地警察は冷淡な態度。しかも許された活動期間は5日間。そんな状況で、4人のFBI捜査官は果たして事件を解決に結びつけることが出来るか?

ジェイミー・フォックスが、4人のFBI捜査官のリーダ ロナルド・フルーリーを演じます。手を変え品を変え、文化の違う異国の地で、現地警察の協力を得て行きます。中々、いい演技です。流石にオスカー俳優です。

4人の中の紅一点、ジャネット・メイズを演じるのが、出産して復帰したばかりのジェニファー・ガーナー。イスラムの地での事件に女性の捜査官が行くという設定にしたのは、文化の違いを見せるためなのでしょうか? でも、どう言う意図があったにせよ、あまりそう言うシーンはありませんでしたねぇ。

しかしながら、何と言ってもこの映画で意味のある配役は、サウジアラビア国家警察のアル・ガージー大佐。アシュラフ・バルフムが演じています。最初は、FBI捜査官たちに冷淡な態度をとっていますが、徐々にフルーリーと心を交わすようになり、最後の最後では、非常に重要なシーンを演じています。彼が居ることで、この映画は締まりました。

映画の撮影は、流石にサウジアラビアでは出来ないので、アリゾナ州フェニックスで多くの撮影をしています。ここのアリゾナ州立大学の敷地にリヤドの街のセットを作ったそうです。いやぁ、セットだとは思えなかったです。サウジアラビアでの撮影は実現していませんが、アラブの地としてUAEでの撮影が行われています。ここのエミレーツ・パレス・ホテルが、サウジの王子の宮殿として撮影されています。

9.11以降、こう言うテーマの映画が多いですね。アラブの地で、アメリカ人がどのように見られているかと言うことが良く分かります。まぁ、それが今のイラクやアフガニスタンを作り出しているのかもしれませんが。この映画では、途中、フルーリー捜査官の尽力で現地警察の協力が得られるようになって、物語は一気に解決の方向に進んでいきます。この手の映画にありがちですが、最後は派手な戦闘シーン。犠牲を出し、危機に陥りながらも、何とか解決に導くと言う定番の終わり方。そして、最後の最後のシーン。フルーリーのセリフと、サウジの少年(?)のセリフ。うーん、怖いですねぇ。こう言う連鎖はまだまだ続くという事を連想させます。テロとの戦いは、終わらないんですね。

タイトル キングダム/見えざる敵
原題 The Kingdom
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/アメリカ
監督 ピーター・バーグ
出演 ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、アシュラフ・バルフム

[2007/10/13]鑑賞・投稿