たんなるエスノグラファーの日記
エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために
 



おそらくこういうことのなのだろうと思う。
吹き矢(keleput)を使った猟は、根気がいる。
他方、20年ほど前にプナン社会にもたらされた
銃(serepan)は、獲物を一発でしとめることができる。

あるプナン人の狩猟者に銃弾の持ち合わせがなくなり、彼は、しかたなく吹き矢を持って猟に出かけた。彼は、ジャングルのなかに入り、
樹上にいるサイチョウに狙いを定めて、それに矢を放った。しかし、矢に塗った毒は、すぐに鳥の身体には行き渡ることはない。サイチョウは、矢を受けた後、すぐに飛び立った。狩猟者は、サイチョウがやがて、毒が全身に回って地上に落ちるのを確信しながら、ジャングルのなかを執拗に、サイチョウを追った。狩猟者は、追跡者となった。1時間くらい経ったころ、ようやくサイチョウは、地上に落ちてきたのだという。ハンターは、毒死したそのサイチョウを持ち帰ってきた(写真参照)。吹き矢を用いた猟は、じつに手間がかかる。



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