昨日、一ヶ月ぶりにクチンに戻って来た。全身原因不明の発疹の痒みに悩まされながら。さて、8月は、プナンの狩猟キャンプを転々とした。最初は、獲物がなかなか思ったように獲れず、ずいぶん空腹を経験したが、その後、次々にキャンプに獲物がもたらされるようになった。以下は、わたしが今回ついて行った狩猟キャンプでしとめられた獲物のリストである(数字は、獲物の数)。猪肉と鹿肉の一部は、販売した。
8.14. ヤマネコの一種(palan alut) 2、鳥(metui) 1
8.15. カニクイザル 1
8.20. カニクイザル 1、オオマメジカ 1、イノシシ 1
8.22. ブタオザル 1、リーフモンキー 1
8.23. リーフモンキー 2
8.24. セイラン 1、テナガザル 1
8.25. リーフモンキー 1、鳥(lekap) 1
8.27. ブタオザル 1、イノシシ 1
8.28. イノシシ 2、シカ 1、リーフモンキー 1
ずいぶんとサル類を食べた感じがする。カニクイザル(kuyat)2頭、ブタオザル(medok)2頭、テナガザル(kelavet)1頭、リーフモンキー(bangat)4頭。
おかげで、「サル」の話をたくさん聞くことができた。
プナンは、それらをほかの動物(kaan)から独立して、「サル」類と分類することはない。しかしながら、それらの4種(もう1種、彼らがkelaci と呼ぶ、赤毛のサルがいる)に特徴的な習性があることは熟知している。それらは、樹上に住み、単雄複雌で集団行動する。母ザルは、小さな子を胸の前に抱きかかえて育てる。それに対して人間は、一般には、おんぶして(mebin)子育てをする。子ザルの肉は、胸の前で抱きかかえるという意味の「トキヴァップ(tekivap)」と呼ばれ、ことのほか美味であるとされる。プナンは、「サル」を生け捕りにして飼育するというようなことはいっさいない。食べるためだけに捕獲する、
それらの種は樹上でなわばりを争うが、ブタオザルについでテナガザルが優位であるという。リーフモンキーとカニクイザルは、ほかの種に会ったときは逃げるという。力関係としては:ブタオザル>テナガザル>リーフモンキー、カニクイザル。ブタオザルだけが、複数の子を産む。リーフモンキーは、地上には降りてこない。特定の葉だけを食べるので、リーフモンキーの腸内の消化物(oreh)は、内臓とともにスープにして食べられる。糞便になる直前の消化物なので、糞の匂いがするともいうが、薬になるという。彼らは、腸内消化物のスープ(potok)に目がない。
プナンは、それらの「サル」が人間に似ているとか、人間のようだとは、けっして言わないが、近隣の焼畑民たち(=人間)が、それらになったとも言われることがある。カヤン人がブタオザルに、イバン人がリーフモンキーになったと。テナガザルの鳴き声は甲高いが、リーフモンキーはゲゲゲと低く鳴く。
それらの「サル」の肉には、それぞれに、独特の風味のようなものがある。わたしが食べてもいいと思ったのは、ブタオザルのそれである。カニクイザルは、臭みがあって、ちょっと苦手である。ブタオザルのトキヴァップは、柔らかくて、文句なしに美味かった。
(写真は、親子のリーフモンキー。両方ともメス。)