たんなるエスノグラファーの日記

エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために

京大医学部実験動物供養碑

2011年02月06日 16時20分06秒 | 人間と動物

出張の合間を見て、前々から聞いていた京大医学部の実験動物供養之碑を見に行ってきた(写真)。

医学部構内には実験動物センターがあり、その裏手当りにあるのかと思って探してみたが見当たらず、構内を歩き回って、医学部棟の裏手に木々が並び、その奥に囲いがあって、異形の大木の前には祠があり、何体かの地蔵さまが祀られている手前に、
その碑はあった。

碑の裏には、いまから39年前、
昭和47年8月吉日医学部一同とあった。その前には花が供えられていたし、向かって左側には、それより小ぶりの石碑があり、裏には、実験馬宮海号之墓 昭和7年6月6日病没という文字が刻まれていた。

その碑と碑の間には、
地蔵さんや小さな石碑があり、それらの石の前にはお酒が供えられていた。前掛けを着せられて、新しく彩色されたのではないかと思われる顔のある地蔵さんの裏には、動物之碑と書かれていた。

勝手に類推すれば、実験動物に対する弔いの念から建てられた碑や地蔵さんが集積する場所に、新たに、実験動物供養之碑が建立されたのではないだろうか。

つい先日であるが、研究会で、アラスカ先住民の動物観に関する論文を読んだ。そこでは、動物を、ウサギ人、ヘラジカ人というふうに、人格を持つものとして捉えていて、それらを食糧として消費するのだけれども、人と動物の距離が非常に近いものだということを学んだ。日本における人と動物の距離感は、それとは幾分違うし、さらには、アニマルライツを唱える西洋発信の動物観とも違う。

医学研究において、人間の生命をめぐる研究に
寄与してくれた動物たちに対して、慰霊祭を行い、さらには、石碑を建てて弔うという、日本人の動物観と実践の独自のあり方は、医学者たちの意識が、医学的・科学的な実践の次元のみで完結しているのではなく、実験動物に対する憐みや感謝という心情という別の次元へと開かれているという点で、きわめて興味深い。

 

 

 

つぶやきへ

2011年02月01日 09時15分29秒 | エスノグラフィー

2月1日。今日は、一般入試の監督業務の日。早いもんだ、今年も、もう一か月が過ぎた。月と日と人が宿場町の宿に泊まった。人が起きると月と日は出発していた。「月日が発つ(経つ)のは早い(速い)」とかなんとかいう噺があったが、このぶんだとこれからも、どんどんと過ぎてゆきそうだ。5年近く前の2006年の3月からこのブログを開いている。ブログの効用ってなんだろう。最初は、狩猟民の調査の進行内容を現地から発信するために立ち上げたように覚えている。2007年4月に帰国してからも、調査地の状況を書き留めておくことを中心に、研究途上の事柄や教育で気づいた事柄をぽつぽつと書いてきた。研究の進展をひとまず書いて、考えるための足がかりとするという意味で、ブログは役に立ったと思う。幾つかの論文やエッセイを、ブログの記事をもとに書いたこともある。そのうち、国内の出張先での見聞を書き、研究会の記録を付けるようになり、加えて、過去を懐かしんで、ときには、音楽談にもはみ出してゆき、さらには、読んだ本の読書日記を付けたり、わるのりして、小説まがいのものを書いたりしもしたし、ざ~っと振り返ると、日常のスケッチであったり、その時々に抱えている問題や苦しい心情を吐露しているところもある。そのうちに、しだいに、「たんなるエスノグラファーの日記」という問題系の磁場にいながら、そこから少しズレていった。それは、それでいいのかもしれない。ある一時期の思考・心情の録として。文章道場という意味合いもある。何かを書くという行為は、読むこととともに、物事を考えるためには欠かすことはできない。出かけて書くこと、読んで書くことによって、書きつけたものがやがて自らぶつかるように跳ね返ってきて、激烈な一冊を書きたいという思いは、思いだけが膨らみ続けている。プナンの太いエスノグラフィーは、書く書くと言ってながら、いまだに書き始めてもいない。なんたることか。ブログは、たまに授業のなかでも、余談のためにだけではなく、本筋とかかわる部分の解説で使っている。この間に、ツイッターという新たなメディアができた。フェイスブックってのもある。ツイッターをやり始めたのはつい最近のことである。齋藤環は「ツイッターは殺伐とした風景をもたらす情報量ゼロの『失言装置』」であると言っているが(『日本の論点2011』)、それも一理あるかもしれないとも思う。ここで書いていることは、ツイッター的なつぶやきが多くなってきている。ブログとツイッターの境目がなくなってきているとも言える。今後、はまるかどうかは未知(未定)であるが、一部、ツイッターに移行してみるのがいいのかもしれない。ツイッター宣言にしようと思ったが、書いているうちに、迷いとともに決心も揺らいできた。
http://twitter.com/berayung
とにかく、いまの気分はボサノバ。Tom & Joy Meditation.
http://www.youtube.com/watch?v=s6yZ_qmT-og
お、そろそろ入試の時間だ。