ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】想い出のカルテット ~もう一度唄わせて~

2014年03月24日 | 演劇

「3月の舞台で復帰します」

俳優・演出家の高橋昌也さんから、亡くなる数日前に届いた手紙に書かれていた一文だ。
生きる希望に満ちあふれた内容のお葉書だった。

その「3月の舞台」というのが黒柳徹子さん主演の「想い出のカルテット」

高橋さんが演出を手掛ける「海外コメディー・シリーズ」は
昨年までご自身が芸術総監督を務める、ル・テアトル銀座で上演されていたのだけれど、
残念ながらこの劇場は閉館となってしまった。

で、このシリーズはこの春オープンした「EXシアター六本木」のこけら落しとして上演されることとなっていた。

そのことの喜びと期待を書いたご本人の文章が公演パンフレットに載っていた。



さぞかし無念だったことだろう。


高橋さん亡き後、予定通り上演されたこの公演の千秋楽である23日、
毎年一緒に観に行く友人と、妹と、セミナーでご一緒した方と4人で出かけて行く。

毎年、自分が観に行く日に、高橋さん宛てに、お花を贈っていたのだが、
今年は奥様宛てに、グリーンと白の花材でアレンジしてもらったお花を贈った

もと音楽家ばかりが集まる老人ホームが舞台のこのお芝居、以前にも一度観たことがある。

人気絶頂の時に引退したかつてのオペラ界のスター、ジーンに黒柳徹子さん。

ジーンと短い間結婚し、別れたものの思いを断ち切れないレジーに団時朗さん。

下品なことばかり言うけれど、優しくて、亡き妻を愛し続けているウィルフに鶴田忍さん。

天真爛漫な心をもち、ちょっと認知症がはじまっているシシーに阿知波悟美さん。

若く輝いていたころ、「リゴレット」で共演した4人が再会し、
ホームのコンサートで「リゴレット」をもう一度唄うまでの日々を描いている。

登場人物は4人だけだが、4人の会話から、人名や人柄がさりげなく具体的に語られるので、
ホームにいる大勢のもと音楽家やスタッフの姿が見え隠れして、
ここはホームなんだな、ってことがよくわかる。

プライドが高いゆえに、自分の弱みをさらけ出せないかつてのスターを演じる黒柳さんは、
やはり、4人の中でひときわオーラを放っている。
もう昔のように歌えない自分を受け入れられず、苦悩する姿は本当にリアル。

最近気になる滑舌の悪さや、足腰の弱り具合が、老齢の感じに深みを加えている。

絶妙な間合いでぼそっとつぶやく一言でしっかり笑いをとる黒柳さん、さすがです

年を経てもパリッとしていてダンディな団さん。
男性があんなふうに年を取れたらホントに素敵。
ジーンへのあふれる思いが伝わってきて、グッとくる。

皆がなにかと感情をあらわにする中、すべてをユーモアと広い懐で包み込む鶴田さん。
年をっても穏やかな気持ちを保てるってすばらしい、と思わせてくれる。

一言一言で場を和ませる、かわいらしくてほっとけないおばあさんを演じる阿知波さん。
あんなふうなおばあちゃんになって、見守られたいものだ。

最後に口パクだけれど、4人でリゴレットを熱唱。
盛り上る圧巻のラストだ。

が、いつものことだけれど、「リゴレット」の内容がわかりません・・・ごめんなさい

劇中「年を取った今でも、どう生きるかを考えている」と言うようなセリフがあった。
「若いときは死ぬことを考えることが死ぬほど怖かった」とも。

病気が回復し、仕事への情熱と希望にあふれた高橋さんのお葉書の内容がリンクして、思わず胸が熱くなる。

終演後、何度も何度もカーテンコールにこたえてくれていた黒柳さんはとてもチャーミングだった。

いろいろな思いがあったからか、前回よりもはるかに感動した舞台だった。

劇場も座席前がゆったりして、とても観やすかった。
このシリーズの拠点をここに移してまた頑張ろう、と思っていただろう高橋さんの想いは
黒柳さん達によって続いてくのだろうか。

あらためて、心からご冥福をお祈りします。






















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