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湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

外貨建て変額保険の資料を眺める@鎌倉七里ガ浜

2020-10-13 11:30:09 | モノ・お金
高齢者あるいはその手前の世代に大人気の個人年金保険である外貨建て変額保険の資料を、私は初めて深く読んでみた。GoogleでもYahoo!でも、「外貨建て 変額保険」と入れて検索すればいくらでも資料は出て来る。某米国系保険会社のある外貨建て変額保険の資料によれば、今持っているお金をまとめて一時払いで保険会社に預ければ、日本より有望な海外市場で大きく増やせることが期待できて、予定された運用期間終了後、今度は年金給付としてちょっとずつ受け取ることができるのだという。

では、その保険会社は保険契約者の資産を、海外市場でどのような方法で運用して増やしているのか? これ(↓)がその運用方法だ。極めて単純な仕組みだ。預かった資金の4割を米国株式市場に、6割を米国債券市場に投入して終わり。投入した先は米国株式・債券市場の代表的指数をトラックする2つのETFである。



しかしこの運用手法って、何も米国系生命保険会社と生命保険契約をわざわざ締結しなくても、だれでも直接自分で簡単にできることだ。例えばインターネット証券会社である楽天証券に口座を開き、この二つのETFを4:6の割合で買えばいい。

● わずかな手間賃を楽天証券に落としてあげれば誰でもこの2つのETF(ファンド)が買える。
● iSharesというETFの2つのファンドを運用しているのはブラックロックという会社だが、その運用手数料はチョー格安で年率0.05%以下である(*)



あとで見る生命保険契約で支払われる手数料と比べたら、この運用手数料はタダみたいなものだ。


********************************************

ところがこの単純な運用をこの生命保険会社と保険契約を締結しそれ経由で行うと、保険契約者は保険会社に対し莫大な手数料を支払うことになる。以下がそれだ。

● 保険契約管理費: 資産額の2.75%(1回限りじゃない。年率で毎年取られる)
● ブラックロック社に支払う運用手数料: ほとんどタダみたいなものだが、上記の*と同様
● 年金給付支払手数料: 年間年金支払額の1%

この保険会社は運用期間中(通常は10年)、毎年資産の時価評価額の2.75%を取ってしまった上に、運用期間終了後ちょっとずつ年金給付として契約者にお金を支払う時にその支払金額の1%を引き落とすという。累積すると、引き落とされる手数料が元本の何十パーセントにもなってしまう。


こうした保険の投資商品って、魅力的だろうか? 私はまったく馬鹿げていると思う。国内の保険会社でも外資系保険会社でも、それらが取り扱う外貨建て変額保険なんて、こんなものだ。そりゃ、保険としての機能は確かにいくつかついている。万が一保険契約者が死んだ時はどうする、みたいな機能が。しかしそれにしてもだ、説明がつかないくらいに手数料が高過ぎるよね。仮にあるサラリーマンが退職金の2,000万円を直近の過去10年間これに預けていたと想定すると、これから説明する例で言えば、本来ならそのサラリーマンが自分ではるかにうまくその10年間で達成できたはずの税引き前1,700万円強(=元本2,000万円の86%)のリターンから、半分ほどを保険会社にかすめ取られてしまい、その残りカスのようなリターンしか享受できなかったことだろう。その大雑把な計算は以下の通りだ。



この10年間に米国株式市場(S&P500指数)は、約3倍になった(↑のグラフ、つまり+200%だ)。米国債券市場(Bloomberg/Barclaysの総合債券指数)でも、1.1倍くらいにはなっているはずだ(つまり+10%)。話がややこしくなるので、ドル円の為替の問題や税金の問題は置いておいておこう(話の大筋は変わらないので)。これらを冒頭で見た円グラフの通り4:6の割合で混ぜ合わせて投資していたとすると、その資産は10年で+86%くらいになったはずである【株式のリターン(+200%)× 0.4 + 債券のリターン(+10%)× 0.6=+86%】。100の元本で運用を開始したなら、10年でそれが186にまで増えたことになる。

ところがここで説明した外貨建て変額保険が仮に10年前に存在したとして、それにわざわざ契約してそうした投資を行って来た人は、10年の運用期間中、毎年繰り返して、資産時価評価額の2.75%を手数料(他に消費税等)として取られてしまう。2.75%というが、それは資産時価評価の2.75%なので、資産額が2倍、3倍に増えれば手数料額も2倍、3倍を徴収されることになる。また年金給付を受け取り始めると、今度はその給付金額からも1%を手数料として取られてしまう。したがってこの仮定で行くと、保険契約者の差引ネットのリターンは+86%にはるか及ばず、おそらく半分以下になったはずだ。こんなことをやっていたら、保険契約者の資産は全然増えない。それがはっきりと分かっていて、保険会社にそれだけお金を差し上げてしまう投資をやりたい人って、本当にいるのだろうか? 株式や債券の運用で資産が増えればまだマシだ。仮に株式や債券の市場から得られるリターンが運用期間中ずっとゼロだったとしよう。それでも保険会社は累積で何十パーセントもの手数料をとろうとする。さすがに保険なので、最後にやられていれば契約者に元本は元通り返してくれる。ただしそれは運用開始時のドル建て元本だ。だから運用期間終了時の為替レート次第で、契約者には損得が発生することになる。

話はちょっと違うが、ろくにリターンも出ない投資信託を購入する人から、最初の投資信託販売時に販売手数料を3%もの高い水準で販売会社が取る(1回限り)、その後高い運用手数料を運用会社が取って、さらにその後顧客をそそのかして他の投資信託に乗り換えさせ、またそこで新たに高い販売手数料を取るなんてことが主流の営業手法となっている投資信託の世界のひどさを、何年か前から金融庁は是正しようとして来た。金融庁の森長官(当時)は2017年4月の講演でこう言った。



まったくごもっともな説明だ。今もこの講演の全文が金融庁のウェブサイトに掲載されているので、一度それを読まれるといい。

全文はこちらだ ⇒ https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20170407/01.pdf

いつまで経ってもどこか胡散臭い日本の金融業界から余計なモノを排除するためには必要な内容で、誠に的を射た講演だと思う。

しかしここで説明した外貨建て変額保険の世界って、森長官が酷評した投資信託の世界よりもっとひどいものだと言える。保険と絡めているからわかりにくくなっているものの、ほとんどタダで出来る運用をしておいて、とんでもない手数料を引き落としてしまう資産運用商品と言える。高齢な保険契約者たちは、自分たちの資産からどれだけのお金が保険会社に吸い取られてしまっているか、全部理解した上で保険会社と契約しているのだろうか。保険会社の図太さもすごいが、その内容を理解もせずに契約する保険契約者の多くにも問題があると私は思う。保険会社は自分たちにとって最もおいしい商品を販売したがる。運用商品ってなんでもそうだが、お客は業者の言いなりになってはいけないのである。

昨年、納税を先送りする効果が得られる法人向け保険が、金融庁の指導で販売停止に追い込まれた。この個人向け外貨建て変額保険にも、金融庁のキツイ指導がやがて入るかもしれない。

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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (えばら)
2020-10-13 12:44:16
ターゲットを元本の150%とか契約時、最初に選ばされますが、あれ、保険会社に散々取られた後の残額の目標値ですよね。自分でETF買ったらいいと私も思います。
返信する
Unknown (おちゃ)
2020-10-13 13:11:17
えばらさん

その150%のターゲット。ここで使った例
で言うと、市場のパフォーマンスは+86%、
ターゲットは+50%なのに、実際には手数料
が高過ぎてターゲットにすら遥か及ばずと
いう結果になりますね。
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Unknown (信州タケノコ)
2020-10-13 17:24:41
私もこういう投資商品としての保険は嫌ですね。いくら抜かれてるか考えたら、とてもそこにお金を投資しようという気になれないです。お金をゴッソリ保険会社に差し上げているようなものですね。
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Unknown (おちゃ)
2020-10-13 18:00:37
タケノコさん

タケノコさんもそう思われます?
直近10年で言えば、半分以上の上昇を
人に取られてるようなものでしょう。
嫌ですよね。

他の外貨建て変額保険もよく見てみよう。
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Unknown (トクノウ)
2020-10-13 18:13:55
はじめまして。こういう説明を読むのは初めてです。累積で数十%のリターンを稼いでも、手数料でゼロになることもありますね。私は普通の医療保険だけでいいや。
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Unknown (おちゃ)
2020-10-13 20:20:54
トクノウさん

はじめまして。そうなります。
10年で本来の累積リターンが30%ほどなら、
たぶん全部手数料で取られますね。あまり
面白くない。。。

返信する
Unknown (鎌倉山のおじさん)
2020-10-14 05:06:55
よく変額保険の資料なんてお読みになりましたな。私は読む気にならんなぁ。あれ、本当に中身を理解して契約してる人、ほとんどいないでしょう。で、たんまり保険会社にお金が落ちる。運用商品としては株式投信よりも業者の取り放題だ。確かにそのうち指導もあるかもですな。
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Unknown (おちゃ)
2020-10-14 06:17:46
鎌倉山のおじさん

まあそういわず読んでみてください。
いろんなのがあります。数値がはっきりわかる
ものもあるが、読んでもいったいいくら
取られてるのかさっぱりわからないものまで
あります。そのあいまいさがまた面白いです。
返信する
Unknown (ママーヘン)
2020-10-14 07:59:03
ファイナンシャルプランナーにすすめられたのが
まさにこれでした。
自分でも理解してお勉強して
自身でお金を増やす努力をしないと
年金が少ないと言ってる場合ではないですー。
保険料の払い込み総額より解約返戻金が上回るうちに
解約できる人はいいんですけどね。
返信する
Unknown (おちゃ)
2020-10-14 08:52:49
ママーヘンさん

保険代理店のフィナンシャルプランナーが
顧客にこうした保険契約を勧めて、その保険契約
が成約すると、かなりの手数料がその代理店
に入ります。

またそのフィナンシャルプランナーが、
保険代理店や金融機関から独立していて、
フィナンシャルプランナー専業、あるいは
会計士・税理士などを兼業する場合でも、
保険契約が成立すると、顧客紹介料
が彼らに支払われます。

保険会社はすごい手数料を取ってますから
その一部が回り回って紹介者に支払われます。
そうしたケースでは彼らはこうした保険商品
を熱心に勧めます。
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