「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

植田日銀総裁はウケる、経済見通しって当たらない、企業の運命を考える@鎌倉七里ガ浜

2023-07-01 15:30:18 | モノ・お金
日銀新総裁の植田先生と私が連れションしたことがあるという話は以前書いたとおりだ。

植田先生は絶対それを記憶していないという自信が私にはあるが。

我が国の国会や記者会見ではとても固い表情の植田先生だが、海外ではとてもリラックスしているように見える。

3日前のポルトガルでの記者会見。米国、欧州、英国の中央銀行各首脳と一緒で、植田先生は彼らや記者たちを笑わせ続けた。

BOJ’s Ueda Keeps Central Bankers Laughing in Sintra


Q: 新総裁のポジションについて
「こんなにあちこち出張に出かけ記者会見をしないといけない仕事だなんて知らなかった・・・」

Q: 今の円安と日本の金融政策について
「円安という現象は、日本の金融政策だけでなく、この方々の3中央銀行の金融政策からも影響をされているわけで・・・」

Q:金融政策の影響が実際に経済に現れるまでの時間のズレについて
「日本はまともに金融引き締めをしたことが30年もないくらいで、その意味では金融政策の転換とその実際の効果が表れるまでのズレは少なくとも25年はあるかもしれない」

米国FRB議長のパウエル君(植田先生のすぐ右隣りの人)もご機嫌で大笑いだ。

米国のインフレは日本のそれどころではない。最も一般的な消費者物価指数は大変な上昇を見せた。しかしピークからはかなり下がって来ている。そして米国中央銀行はこうしたインフレ率を2%以下にしたいと思っている。

【米国労働省】

問題はここからだ。インフレって長い間世界のほとんどの地域で忘れられて来たことだが、実は一旦始まるとなかなかなくならない。40年前には先進諸国はその処理で大変だった。

8%のインフレ率を半分の4%にするのは簡単ではないがまだ楽な方だ。しかし4%を目標の2%以下にするのはそんなに簡単じゃない。そのため、米国の中央銀行FRBは昨年からどんどん金利を上げて来ている。

下のグラフは利回り曲線だ。横軸は金利の期間で左へ行くほど短期の金利、右へ行くほど長期の金利になる。縦軸はその金利の水準。一般の預金金利や固定金利住宅ローンと同じで、期間が長いほど通常は金利が高い。2022年1月3日の青い線のような右上がり状態が正常な状態だ。長く貸すほど貸し手にとって貸し倒れのリスクがあるわけで、通常は長期の金利の方が短期の金利より高く、この曲線は右上がりになる。

【米国財務省】

しかしインフレを収めようと、FRBは金融機関間で貸し借りをする時の政策金利(短期金利)をどんどん上げたので、現在では短期金利の方が長期金利よりも高くなっている。長期金利は文字通り長期の金利であり、30年先のものまであって、それらは金融政策が正常に戻った将来のことも織り込んで、短期金利より今ははるかに低い。したがって2023年6月下旬時点の利回り曲線(オレンジ色)は右下がりの状態になっている。

そこまで金利が上がっているんだから、企業も個人もおカネを借りることが大変になり、企業経営が苦しくなり、住宅購入も無理になり、いろんなことが不景気になるんじゃないかと思うが、経済は意外にしぶとい状況が続いている。

労働市場は全体的には非常に需要が多く、賃金も上がり気味で推移している。住宅ローンの焦げ付きはそんなにひどくはない。商業不動産はちょっと問題がありそうだ。家賃(これも消費者物価指数の一部だ)は上昇を続けている。経済成長率はそれなりにあり、景気後退にはほど遠い。インフレはFRBが目標とする水準よりかなり高い。

そうであればいろいろ問題はあって高金利にもかかわらず、それなりに経済は回る。不況になんて、もうしばらくはなりそうもないんじゃないの?・・・ということで、株式市場は意外にしぶとい。

2022年の最初に私はS&P500(米国株式指数)を全部償還してしまった。それはそれで正解だったと思うが、ウクライナ侵攻を受けても市場は意外に底堅い。右下がりの青い矢印方向に進むと考えた私の予想に反して、米国株式は、2022年10月を底にして、昨日まで恐ろしくしっかりした上昇を8カ月ほど継続している。

【Investing.com】

今でも私は、長期的な下げの中でのこれは中間反騰に違いないと思っているのだが、それにしても長いそして十分な上げ相場で、米国株式を持っている人は今ウハウハしている(羨ましい)。

もっとウハウハして感激で涙がこぼれそうなのは、往年の日本株式ファン層である。苦節30年、日本株がよみがえりつつある。

あの悲惨な民主党政権が終わるのが2012年11月。そしてアベちゃんが登場。問題だらけだったと思うが、それ以前よりは良いと言えたアベちゃんに市場は飛びつき、そこからは上がる上る。そして直近では東証の本気の株式市場改革が続いていて、のんびりした日本企業たちもやっとお尻に火が点いた(点いてない企業も多いが(笑))もんだから、ついに日経平均は33,000円台だ。一生二度と見ることはないとついこの間まで思っていたバブル期の史上最高値を、我々も再び見ることが出来るかもしれない。

【Yahoo! Finance】

日米の株式相場が安くなれば買いたいと思っても、いつまでも上がってばかりなので買えない。しかし銀行預金に置いておいても利息が付かない。ところが世の中はインフレだ。困るよね。

この上げ相場の中で、私はゆっくりと、日本株式の高配当銘柄を購入している。まだ10銘柄だ。ゆっくりと買うので、いつになったら完成するかわからない。全部で少額ずつ100銘柄ほどにするつもりだが、完成するのは再来年か。どうせまた落ちることもあるだろうし、時間分散して買えばいいのだ。ここに書いた業種は四季報の分類による。


私が日本株で個別銘柄を買うのは35年ぶりだ。最後の購入は1988年のジャパンライン(今はない企業だ)。その後ジャパンラインは合併を二度経て、今は商船三井になっている。

買うと言っても日本株式もあまりに高いので、高配当で割安な銘柄のみ、最近の上昇相場でもあまり上がっていない、あるいは下がっている銘柄を買っている。基準はいろいろあるのだが、おおよそ以下のようなものだ。

配当利回り(配当金÷株価)が高い
PER(株価÷1株当たり純利益)が低い
PBR(株価÷1株当たり純資産)が低い
配当性向(配当金÷純利益)が高い
直近数年に株価があまり上がっていない

割安に放置されているものを買ってみただけ。来年にかけて少しずつやってみましょ。今後全体が下がったところで、これらは最初からあまり上がっていない銘柄群だから、わりに安心。長期的に配当が4%以上もらえれば十分だ。だって、利率がほぼゼロな銀行預金よりはいいでしょう。

米国株式は日本のそれに比べてもさらに高いと思われる。しばらくは手を出せないだろうね。下に先ほどのグラフを再掲する。

【Investing.com】

長期でPER(株価収益率=株価÷1株あたり純利益)を見る場合に便利なシラーPERで見た米国株式は今、31.07の水準にある。これはかなり高い。つまり割高だってことだ。


【multiple.com】

しかし悩ましいのは、これで割高だと判断されても、その割高なまま何年も過ぎることがあるということ。

結局経済見通しや相場見通しなんて当たらないんだねえ。

顧客ではなく自分が儲けることしか考えていない資産運用会社の中では、とても良心的な会社と思われてきたセゾン投信の、これまた良心的だとされる中野会長が、最近退任に追い込まれた。

【産経新聞】

内情を詳しくは知らないが、資産運用ビジネスではありがちなことだ。資産運用ビジネスとして正攻法であり顧客にとって良いと思われる資産運用会社の経営は、その資産運用会社の株主にとって良いものであるとは限らないということだ。

この中野会長は極めてまともな人だった。そして顧客の資産運用のことを考えてセゾン投信を起業しそれをうまく成長させた。出資者はあの元西武系のクレディセゾンだ。クレディセゾンも当初はそれで満足だったのだろうが、長い間には経営陣のメンバーも変わるし、クレディセゾンはクレディセゾンでその株主から「もっと儲けろ!」とプレッシャーをかけられているから、経営陣の考え方もどんどん変わる。それが我々自由主義経済国の企業だ。

顧客第一主義の真っ当な中野会長の経営スタイルが株主であるクレディセゾンの意向にそぐわなくなったのではないか。資産運用会社の運用サービス・商品のクォリティと、資産運用会社のビジネス的成功(=儲ける)の関係は、多くの場合矛盾を含んだものなのである。

結局企業の命運って株主が握っているわけで、その利益を代弁したような企業の言うことなど信用しないのが無難だ。

その点最近上手くやったなと思うのが、米国企業のパタゴニアだ。上手くやったというのか、創業者が初心を貫いたのだ。創業者がサラリーマン社長ではなく、その企業を所有し、立派な人であり、その家族もまた立派だったね。

パタゴニア・インターナショナル・インク日本支社の旗艦店、鎌倉。



日本支社の支社長さんもとてもいい人だよ。

何度も会ったことがあるが、明るい人。愛犬家でもある。

これはパタゴニア創業者のシュイナード氏の著書だ。16年前の日本での初版本。


「波が良ければ、そして仕事に差し支えないということが判断できれば、勤務時間中であっても社員がサーフィンに行っていいではないか」というタイトル。

ダラダラした企業なのか?と思うよね(笑)。

しかしパタゴニアはその製品のクォリティや環境問題への取り組み方という意味では、徹底した経営哲学を持った企業だ。



耐久性はあるか。私の最大の関心事。



手入れや洗濯。これも私の好きなところだ。



政府が悪いと言うのは簡単だが、政府が悪いのは自由主義経済国では結局企業が悪いからで、企業が悪いのは結局消費者が悪いからだとする。


安価で便利であるというだけの商品を、米国なみのペースで世界中が生産して、世界中の人が消費してすぐ捨て始めたら、地球はすぐに死ぬ。

そうならないように消費者が変わって、それに対応しない企業が淘汰され、やがては政府も変わるくらいの企業経営。それをシュイナード氏は実践して来た。



しかしどんな良心的な創業者もやがて引退する。その時企業は変ってしまう。その企業の株主が変わり、経営方針が変わり、儲け第一主義の企業に変身することは、私も何度も見て来た。

しかし創業者シュイナード氏とその家族は、すべての株式を環境団体に譲渡することを決定した。最後まで立派だ。パタゴニアが企業としてこれからも環境問題、特に地球温暖化の問題に貢献してゆくためだという。

【BBC】

もし株式の譲渡先が投資ファンドだったら大変だったろうね。あの高潔なパタゴニアが儲け第一主義になり、今までとはちょっと違うあまりお利口でない製品を生産し、売り始めたと思うよ。
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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (信州タケノコ)
2023-07-01 15:59:05
続々出て来るすごい記事。高配当は王者ですね。私もやりたいです。
返信する
Unknown (おちゃ)
2023-07-01 17:36:36
タケノコさん

高配当株式って、草食動物的株式投資ですね。
昔の債券投資みたいなもの。ただし配当が出る
が、価格変動のリスクはある。時間分散して
割安なものをゆっくり集めます。
返信する
Unknown (極楽寺のおやじ)
2023-07-01 17:48:16
パタゴニアの製品って高いけどしっかりしてる。早くから包装もやめてた。環境を考えるってそういうことだよな。オレもいくつか愛用してるよ。
返信する
Unknown (おちゃ)
2023-07-01 18:00:10
極楽寺のおやじさん

パタゴニアは立派です。創業者の哲学、信念が
貫かれている。上場された、あるいはどこかの
株主に買われた企業とはまったく異なる
経営スタイルです。

株式会社とは何か?と考えさせられる事例だと
思います。
返信する
Unknown (Frenchy)
2023-07-02 02:29:22
日本の知人、親戚でも長年塩漬けにしていた株が値上がりし皆さん元気が出てきてる様です。日本に行った時はもてなしてくれると確約をもらいました。でも、バブル頃の反省もあるのでしょう、余り浮かれた雰囲気はなく結構なことですね。
因みに、おちゃさんは最後に購入された株はジャパンラインとの由。バブルの頃、親類が土地担保に銀行借入れで同社の株を購入、数日後に同社倒産。その人は、多額の損失を被り、不動産も処分。私はこちらにおりましたが1988年頃と記憶しています。
日本の株式は、日本の様に海外株式をオンラインで売買できる仕組みが米国にないので、残念ながら取引はしていません。
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Unknown (鎌倉山のおじさん)
2023-07-02 05:31:35
日本株のグラフを見ていると、よくまあここまで戻れたなと思いますね。1980年代を思い出すグラフです。日本はなんて遠回りしたのでしょう。そしてまた史上最高値はまた上だ。
返信する
Unknown (えばら)
2023-07-02 07:58:45
植田総裁、ジョーク飛ばすんですね。みんな笑ってますよ。ラガルドもパウエルも。驚きました。
返信する
Unknown (七里ヶ浜のW)
2023-07-02 08:18:14
閲覧数が10000に迫る! 植田さん効果?笑
返信する
Unknown (おちゃ)
2023-07-02 09:02:37
Frenchyさん

やっとここまで帰って来たか、あとちょっとで
史上最高値だなと、日本株好きなみなさんは、
とても今元気です。

浮かれた雰囲気にもうならないのはシニアな
方です。まったく別のバブル期を知らない
若い世代は、Defined Contributionの年金投資
などで、新たな投資にここ10年くらいで芽生え
血気盛んです(笑)。

海外在住の日本人の日本株投資はシンガポールの
フィリップ証券を使えと、会計士さんのウェブ
サイトに書いてありました。
ここだそうです。
https://www.phillip.com
最後に「.sg」を付けてください。

さすがFrenchyさん、ジャパンラインをご記憶
でしたか。合併は1989年でした。私は合併など
まったく知らずに1988年にそれを買いました。
よくわからないままにスルスルと株価は上がり
、私は恐ろしくなって売却、その益で生まれて
初めてパソコンを買いました。その後も
それはすごい上昇を続け、私は早まったと
後悔しました。しかしその後山下新日本汽船との
合併が発表となり、合併比率の関係から
ジャパンラインの株価は暴落し、1989年には
両社が合併しナビックスラインとなりました。
その直後に仕事でナビックスラインと取引が
あったのでよく記憶しています。しかしそれも
また商船三井と合併することになりました。

バブル期は法人も個人もおカネを借りてでも
株式や土地建物に投資することが当たり前でした
ね。それでひどい目に合った人は多くいます。
返信する
Unknown (おちゃ)
2023-07-02 09:05:16
鎌倉山のおじさん

本当に、よくここまで来たもんだと思います。
30,000円なんて二度と見ることはないだろうと
わずか何年か前まで思って来ました。
しかし行く時は行くんですね。

東京証券取引所はおそらく先進国で
日本だけであろうPBR<1、つまり清算した方が
株主には得になるような企業が林立する
状態を放置しないつもりのようで、やっと
これで日本もまともになるのかと誰もが期待して
いますね。
返信する

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