トラが好きです、ちょっと前…秋の初めの頃ですが、こんなご本を読みました。

馬上の偉丈夫は、タイトルにもありますように加藤虎之助清正であります。帯に(小さい文字で)「この男が生きながらえていれば、豊臣家の運命は変わった。」(そして大きく)「家康がもっとも恐れた男」とあります。帯が裏に回ると「本能寺の変、天下統一、朝鮮出兵、関ヶ原の戦い…報恩の思いを胸に秘め、戦国動乱期を駆け抜けた豪傑。その人生と謎めいた末期に新たな光を当てる傑作歴史小説」。
これで、どんな内容の本かはほぼ明らかですが、蛇足を加えますと…「報恩の思い」というのは、清正は夜叉若と呼ばれていた頃から六尺一寸(185㎝)という大男でしたが、郷里が秀吉と同じ尾張中村であり、長浜城主であった秀吉に近習として召し抱えられ、秀吉を烏帽子親として元服して清正と名乗ります。数々の戦で武勲を立てますが常に秀吉を実の親とも仰ぎ、秀吉亡きあとは遺児・秀頼を守り抜きます。関ヶ原の戦いでは石田三成に組しなかったため、戦後、家康から肥後一国を与えられ熊本藩主となりますが、その篤実な性格から領民から敬慕される良き領主でした。家康の招きを受けて上洛した秀頼と家康の対面の場で、常に傍らにあって未然に暗殺を防ぎます。彼の死因は「腎虚の病」と言われていますが、この小説では家康に「主計頭(清正)を早う世を去らせる手段はなきか」と言わせ、側臣・本多正信が「伊賀者を使い、毒飼(どくがい)を試みまするかや」と答えることで毒殺を匂わせています。ともかく痛快な小説です。

こちらの小説の舞台は江戸。主人公のこれも大男の南町奉行同心・虎之助は安政の大地震がきっかけで臨時の見回り同心に任命され、江戸の町を駆け巡ります。東北大震災の記憶も消えない今の世相を彷彿とさせる状況の中で、さまざまな人間模様が描かれ事件が起こります。事件解決のヒントを虎之助に与える母親と二人の出戻りの姉。父親の代からの目明しで虎之助を助ける「噛み付き犬の松五郎」、虎之助がほのかな思いを寄せる町娘とその妹、友人の同心などが五つのエピソードを紡いでいきます。
いわゆる人情捕り物帖のスタイルですが、「灰色の北壁」や「ホワイトアウト」しか読んでいなかった私には、真保裕一が時代小説を書くのも新鮮な驚きでした。しかし、欲をいうと出だしは快調ですが、後半から次第に政治?も絡む重い話になってきて、読むのがしんどくなってくるのが残念でした。
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