じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

荻原浩「上海租界の魔術師」

2019-09-22 13:37:38 | Weblog
☆ 荻原浩さんの「月の上の観覧車」(新潮文庫)から「上海租界の魔術師」を読んだ。

☆ 全体は1(イー)、2(アル)、3(サン)の3部構成。それぞれ、祖父の死、葬式の風景から始まり、祖父との日々が孫娘・かなめの回想で描かれている。

☆ 祖父は3番目の奥さんに逃げられて、ずっと疎遠だった息子(かなめの父)のもとに身を寄せることになった。息子の家族は妻と3人の子ども(兄、姉、かなめ)、3人の子どもの実の母親は病で亡くなり、今は2人目の母親だ。それが受け入れられなかったのか、兄と姉は、実家から出ていった。夫婦とかなめ、そこに祖父がやってきた。

☆ 「よい子」でいることに心身が疲れていたかなめにとって、祖父は癒しの存在でもあった。ずーっと昔、上海で魔術師をしていたという祖父はかなめに数々の魔術を披露した。やがて年をとって、かなめの名前もわからなくなり、魔術もミスが多くなったけれど。

☆ 「つらい時は、とりあえず笑え」「(笑えない時は)泣け。泣くことと、笑うことは、実は双子なのさ」(83頁)

☆ エンディングは見事なイリュージョンだった。
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