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卍の城物語

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十二人の怒れる男

2008-06-01 17:11:05 | 映画
映画100選。第12回。

57年作品。モノクロ作品。

監督・シドニ-・ルメット
脚本・制作・レジナルド・ローズ
主演・制作・ヘンリー・フォンダ

私達は来るべき裁判員制度にどう向き合っていくべきであろうか?
個人的にこの制度には大反対であり、中途半端な陪審員制度の猿真似などやめるべきなのだが、決まったものは仕方ない。
そもそも自分は裁判の一般傍聴に行くくらい裁判そのものに興味がある。弘前の地裁レベルなので、大きな事案は扱われない。
大抵、ちょっとした詐欺だの、ちょっとした窃盗だの、可愛い犯罪ばかり見てきたが、傍聴は実に面白く、それは、「演技無き舞台」である。
裁判に興味を持ってもらい、もっと一般社会と密着するといったテーマであれば、この制度を考えた愚人たちが思っているほど、庶民は裁判に興味があるのではないかと思われる。
実際、有名な犯罪事件の傍聴は、全く関係ない人たちが抽選してまで見たいと思っているわけだし。
裁判員制度は重犯罪しか扱わないとしているので、可愛い犯罪をお気軽に評決を出すなんてことは出来ない。
ずぶの素人に、なんでもかんでも簡単に死刑が決めれるのであれば、それは個人としては理想的な法曹界になるが、実際問題一人殺しただけで死刑になんかなかなかならないわけだし、新しい判例を創る事は、ただ面倒という理由だけで出来やしないのが現状である。結局実験的に行って、うまくいかないようであれば、さっさと廃止してしまえばいいのであるが。

前置きが長くなりましたが、この映画は陪審員たちの一室でのディベートをリアルタイムで撮ったものである。
ある父親殺しの容疑者の少年犯罪を、ある程度の証拠によって陪審員達は深く考える間もなく、有罪と決め込む。
だがある一人だけが、単純な疑問から無罪と言い出し、他の陪審員たちも、状況や証拠を熟慮し始め、立場は一転してしまう。そんな話。

陪審員達も一般人であり、生活もある。
この日は記録的な猛暑で、一室は蒸し風呂状態。早く評決を出して帰りたいところ。
仕事が忙しい者、ナイター観戦の予定の者もいる。事件の表面だけを見れば、父親を殺したのは一目瞭然。色んなニュースで、人は一定の先入観を形成してしまっている。
ある一人だけが有罪にするには疑問があるという理由で無罪を主張。まわりの陪審員達は事件と真っ向から向き合いだす。
一人、また一人無罪の主張をし始める。はかどらない状況に陪審員達はディベートを通り越して罵りあう。
犯罪現場の証言や証拠はどこまで信憑性があるのか?仕方無しに選ばれた国選弁護人はきちんと弁護をしたのか?そして裁判の素人の陪審員達に正当な評決は出せるのか?見所は多い。

一室(トイレシーンが少しと、最後に裁判所外のシーンが少しある)のみでの撮影と、編集なしのリアルタイム撮影により、緊張感と圧迫感が伝わる。
リアルタイムなので、なんなしの日常会話もあり、そこからまたストーリーに徐々に密接に関わらせる脚本も見事。
ヘンリー・フォンダを始めとする他の役者達もいい演技である。なので低予算の映画なのだが、完成度はずば抜けて高い。
犯罪事件そのものを取り上げるのではなく、人を裁く恐さや、先入観の恐さに主題を置いているのが素晴らしい。
多分少年は父親を殺したと思うけど、そんなことは重要ではないのである。

人は過ちを犯す。過ちから犯罪を生む。過ちから人を殺す。過ちを犯した人が人を裁く。
無常の世の中で平和に暮らす為に見るべき映画である。

オススメ度(映画評価)・☆☆☆☆

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