温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

俵山温泉 白猿の湯

2017年06月28日 | 山口県
 
山口県俵山温泉には前回記事で取り上げた「町の湯」のほかに、数年前までは「川の湯」という外湯も存在しており、温泉街の宿に泊まった客は宿からこれらの外湯へ通って入浴していたのですが、数年前に「川の湯」が閉鎖されてしまい、その代わりとして2004年に新設されたのが「白猿の湯」です。
日本家屋の小さな旅館が甍を争う昔ながらの温泉街の中で、異様なまでに不釣り合いで目立ちすぎる和洋折衷の巨大施設がその「白猿の湯」なのですが、単にお風呂があるのみならず、地場産品の直売所やレストランなど様々な施設を有しており、「川の湯」の代替ではなく、町おこしや観光振興を図ってパワーアップさせたものと思われます。でも頑張りすぎちゃって、随所に空回りしている感も見られますが、詳しくは以下の本文にて。


 
もしかしたら温泉街の真ん中を貫く一方通行のメインストリートよりも幅員が広いかもしれないアプローチの階段を上がって玄関へと向かいます(エレベータもあります)。階段途中の踊り場には無料で誰でも利用できる足湯が設けられていました。この足湯に用いられているお湯は「薬師混合泉」と称するもので、俵山温泉の5つの源泉を混合して分配しているものです。後述するように足湯で使われているお湯は浴場内の2号湯という浴槽でも用いられています。


 
足湯の上にある別の踊り場には飲泉所が設置されていました。こちらも無料利用可能なのですが、飲泉所に引かれているお湯は足湯と異なる「正の湯泉」という単一の源泉であり、しかも浴場内にも「正の湯泉」単一の浴槽は用意されていないため、この飲泉所のお湯は大変貴重です。実際に飲泉してみたところ、口の中にトロミが広がり、同時にアルカリ性泉によくある微収斂が感じられ、タマゴ味も伝わってきました。ここで入浴はできませんが、もし入ったらならばトロトロでツルツルのローションみたいな浴感が楽しめるかもしれません。
(「正の湯泉」の分析書の抄出は当記事下部に転記しております)


 
階段を上がって玄関を抜けると、建物中央のラウンジへ入るのですが、そのラウンジの名前は「ル・ジャルダン」。レトロで伝統的な街並みを売りにしている温泉地なのに、なぜここで突然フランス語を使ったんだろう? Jardinは庭の意味ですから、庭苑かそれに類する和名にすれば良かったのに・・・。ちなみにラウンジの奥にあるレストランの名前は食事処「涼風亭」という純粋な和名ですから、和洋折衷というより和洋混淆と表現したくなるような軸のブレ方には、むしろ微笑ましさすら覚えます。
さて、そんなラウンジの片隅にある下足場で靴を脱ぎ、受付の前へ回って券売機で料金を支払い、券を生粋な日本人のおじさんがいる受付へ差し出します。ボンジュールなんてフランス語で挨拶する必要はありません。受付から先へ進むと、左手に男女脱衣室の出入口が並び、右側に小さな休憩処、そしてマッサージチェアが複数台並ぶスペースが配置されていました。脱衣室は空調が効いていて使い勝手もまずまずなのですが、いわゆる事務用品に分類される無機質なスチールロッカーが設置されており、やけに武骨な洗面台もあって、それらが新浴場の明るく上品な雰囲気を艶消しているような気がしました。予算の都合でそのようになってしまったのかな。


 

名称や脱衣室に関しては余計なことを申し上げてしまいましたが、さすが歴史のある外湯を継承する浴場だけあり、お風呂のつくりは大変素晴らしい。天井が高くて広々としている浴場内は木材や石材を多用したモダン和風で、大きな窓から外光が降り注いで大変明るく、それでいて無駄な装飾や装置が無いため落ち着きもあり、四肢を伸ばしてゆったりと寛ぎながら湯浴みすることができました。男湯の場合は、浴室へ入って左手に洗い場が、右手に浴槽がふたつ配置されています。


 
洗い場はグレードが高い浴場のように各ブースが袖板で仕切られているので、隣のお客さんとの干渉を気にせず利用できます。このように一つ一つが仕切られているシャワー付き混合水栓は計12ヶ所あり、それぞれにボディーソープやシャンプーが備え付けられていました。なおシャワーから出てくるお湯は真湯です。


 
内湯には浴槽が2つあり、前回記事の「町の湯」と同じく、大小や主副ではなく1号2号というように序数で各浴槽を識別しています。脱衣室側に設けられている浴槽は1号湯。幅3m×奥行2.5mでやや浅いつくりです。屋外アプローチに設けられている足湯には「薬師混合泉」、飲泉所には「正の湯泉」という源泉が引かれていましたが、この1号湯に供給されているのは「川の湯泉」一本のみ。つまり1号湯は廃止された「川の湯」の魂を継承する伝統のお風呂なのであります。この1号湯では完全放流式の湯使いを実施しており(気温の低い期間のみ加温)、何らの手が加わっていない川の湯泉100%のお湯を堪能することができます。分析書によれば湧出時の温度は41.1℃のようですが、この湯船へ供給される時点では38.5℃まで下がっており、私が入浴中に定期計測にやってきた係員のおじさんに伺ったところ、通年38℃前後をキープしているんだそうです。見た目は無色透明で湯の花などはありませんが、チオ硫酸イオンを1.7mg含むだけあってタマゴ感(ゆで卵の卵黄のような風味)がはっきりと現れており、湯面からはいかにも温泉らしい湯の香が漂っていました。そしてタマゴ感以上に感動的なのが、ヌルヌルを伴うツルツルスベスベの大変滑らかな浴感です。前回記事の「町の湯泉」もローションのようなトロミとツルスベ感を有していましたが、こちらも負けず劣らずの素晴らしい極上の滑らかさを楽しませてくれ、自分の腕をさすると、あまりに滑らかでツルツルしすぎるため、さすった手が勢いでつるんと飛んでいってしまうそうになるほどでした。しかも長湯仕様の湯加減ですから、一度湯船に入ると永遠に浸かっていたくなるほど最高の気持ち良さを味わえます。後述する2号湯や露天風呂と比べても、この1号湯から得られるフィーリングは格が全く違い、本当に素晴らしい。これに入るだけでも十分訪れる価値があります。


 
窓側の浴槽は2号湯。奥行こそ1号湯と同じで、若干浅い構造も共通していますが、幅が約3mとやや大きく、主副で言えばこちらが主浴槽であると言えそうです。こちらには屋外の足湯と同じ「薬師混合泉」という5つの源泉をミックスしたお湯が引かれていますが、混合泉を貯湯槽で集中管理する過程において(つまり浴場へ供給されてくる時点で)加温による衛生管理が行われており、また浴槽への投入に際しても塩素系薬剤による消毒が行われています。こうした措置の影響か、湯加減は41〜2℃という誰もが納得する温度に調整されていましたが、1号湯で得られた明瞭なタマゴ感は消えており、トロミを伴うツルスベの滑らかな浴感こそ伝わりましたが、それでも隣の1号湯に比べるとパワーダウンしているように思われました。とはいえ、決してお湯は鈍っているわけではなく、浴槽縁の上からしっかりとオーバーフローしていたほか、湯面上に設置された細長い吸引口からも排湯されており、おそらく放流式の湯使いではないかと思われます。


 
2号湯の一部は浴槽の広さを活かして「マイクロ・ナノ・バブル」と称する泡風呂装置が稼働していました。説明によれば、温泉水に空気を混ぜ込み極小の泡を発生させる装置で、血行を良くし新陳代謝を促すんだとか。一般的な泡風呂はブクブクと騒々しく、力技でマッサージするような感覚ですが、このマイクロナノバブルを実際に利用してみますと、マイルドに力が加わり、泡の勢いというよりも小さな泡が寄り集まって優しく腰などを押してくれました。ちょっとマイルドすぎるので、ガチガチに凝り固まったお爺さんの腰に歯が立つがわかりませんが、泡風呂が苦手な方でもこれならば平気かもしれません。


 
観光客を意識しているのか露天風呂も設けられているんですね。石州瓦のような朱色の瓦越しには、甍を櫛比させている昔ながらの温泉街を一望することができます。頭上には屋根がかかっていますが、視点が高いため、まずまずの開放感が得られました。


 
露天風呂はいわゆる岩風呂で、サイズは失念してしまいましたが、複数人数が同時に利用しても問題ないほどの大きさを有しており、奥には2人用の寝湯も設けられています。露天風呂に引かれているお湯は「白猿混合泉」と称するもので、「薬師混合泉」と同じ5つの源泉をミックスさせているのですが、その混合比率が薬師と異なるのか、分析書に記された数値を比較すると、薬師と白猿で少々の違いが見られます。とはいえ、その違いもわずかであり、主要な成分の構成要素や比率はほとんど同じであるため、同一と捉えても差し支えないかもしれません。ただ残念なのは、この露天風呂では加温・消毒に加えて循環も行われており、湯加減こそちょうど良いものの、塩素臭が強く、俵山温泉らしい滑らかな浴感も失われていたことです。源泉の供給や供用状況といった事情で循環や消毒を実施せざるを得ないのかと推測しますが、せっかくの源泉の持ち味が消えてしまっては、温泉の楽しみが半減してしまうため、正直なところ、私はこの露天風呂にほとんど入らず、この露天風呂があるテラスのデッキチェアに腰掛けて、風景を眺めながら、内湯で火照った体をクールダウンする場として活用させていただきました。

大きくていろんな設備を擁している分、料金も高めに設定されており(旅館の宿泊客が利用する朝や夕方は安い料金設定あり)、そのためか、私が訪れた時には常に空いており、帰ろうとした時にようやく後客が一人すれ違いに入っていった程度でした。もちろん朝晩は賑わうのでしょうけど、あの空き方ではせっかくの大きなお風呂も寂しそうです。町おこしや温泉街の活性化のために頑張っていろんなものを付加しちゃったあまり、料金設定を高くせざるを得なかったのでしょうけど、それでは本末転倒な気もします。とはいえ川の湯泉100%完全掛け流しの1号湯はとても素晴らしいので、これだけでも入る価値があると思います。


(飲泉所)
正の湯泉
アルカリ性単純温泉 36.4℃ pH9.9 溶存物質0.2047g/kg 成分総計0.2047g/kg
Na+:46.9mg,
Cl-:12.0mg, SO4--:14.9mg, OH-:1.4mg, HS-:0.8mg, S2O3--:0.5mg, CO3--:41.2mg,
H2SiO3:78.5mg,
(平成25年12月4日)

(1号湯)
川の湯泉
アルカリ性単純温泉 41.1℃ pH9.9 溶存物質0.2035g/kg 成分総計0.2035g/kg
Na+:48.1mg,
Cl-:11.5mg, SO4--:13.6mg, OH-:1.4mg, S2O3--:1.7mg, CO3--:43.6mg,
H2SiO3:79.4mg,
(平成25年12月4日)
気温の低い期間のみ加温

(2号湯および屋外の足湯)
薬師混合泉(正の湯泉・森の湯泉・町の湯泉・川の湯泉・河内湯泉の5源泉混合)
アルカリ性単純温泉 42.9℃(※) pH9.9 溶存物質0.1994g/kg 成分総計0.1994g/kg
Na+:46.1mg,
Cl-:12.1mg, SO4--:15.9mg, OH-:1.4mg, CO3--:42.4mg,
H2SiO3:76.3mg,
(平成25年12月4日)
(※)白猿の湯2号湯にて採水(加温後)
2号湯の湯使い
加温あり(貯湯槽を有するため衛生管理の目的から加温)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

(露天風呂)
白猿混合泉(正の湯泉・森の湯泉・町の湯泉・川の湯泉・河内湯泉の5源泉混合)
アルカリ性単純温泉 30.2℃ pH9.8 溶存物質0.1932g/kg 成分総計0.1932g/kg
Na+:45.7mg,
Cl-:11.9mg, SO4--:15.7mg, OH-:1.1mg, CO3--:40.0mg,
H2SiO3:74.2mg,
(平成25年12月4日)
露天風呂の湯使い
加温あり(貯湯槽を有するため衛生管理の目的から加温)
循環あり(衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

下関駅や長門湯本駅からサンデン交通の路線バスで「俵山温泉」バス停下車
山口県長門市俵山5172  地図
0837-29-0036

7:00~21:00 無休(ただし年2回の大掃除時のみ休業)
730円(7:00~9:00および19:00~21:00は530円)
ロッカー(100円有料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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俵山温泉 町の湯

2017年06月26日 | 山口県
古くから湯治場として知られている山口県の俵山温泉。昨年(2016年)に立ち寄り入浴でちょっとお邪魔しました。

●温泉街
 
 
公共駐車場に車を止めて温泉街を歩くと、昭和どころか大正明治の時代までタイムスリップしちゃったようなとてもレトロな街並みに、思わず立ち止まってカメラを構えずにはいられなくなりました。車一台通るのがやっとの狭い路地に沿って、民家のような日本家屋の小規模旅館が櫛比しているのですが、これらの古い宿では内湯を持たず、湯治客は宿から外湯へ通うという伝統的なスタイルをいまだに貫いているんだそうです。


 

はじめ私は内湯を持つ自家源泉の旅館「富士屋」を訪れたのですが、全ての窓でカーテンが掛けられ、玄関の扉も固く施錠されていました。残念ながらクローズしてしまったようです。おそらく離れの白い小屋が湯屋だと思われるのですが、閉鎖されてそれなりの月日が経っているのか、湯屋のまわりは雑草が生い茂っており、これから荒れてゆくのは必至な状況でした。


 
当地には2つの共同浴場がありましたが、その中のひとつである「川の湯」も、新たな施設である「白猿の湯」開業に伴い閉鎖されてしまいました。このような閉鎖されたお宿や施設が昔ながらの街並みの中で軒を連ねていると、ただでさえ鄙びた温泉街の哀愁がより一層募ります。


●町の湯
 
さて魂が消えて抜け殻になってしまった2つの施設を目にして寂しい気分になった私は、ちゃんとお風呂に入って心身を温めるべく、当地の共同浴場のひとつである「町の湯」を訪ねることにしました。鄙びた渋い温泉街の中央部に位置しており、どのお宿からも通いやすいロケーションです。


 
自動ドアの玄関を入ってすぐ左側にある券売機で湯銭を支払い、右斜め前にある受付のおじさんに券を手渡します。その受付があるホールの正面にはちょっとした喫茶カウンターがあり、左手には立派な飲泉所が備え付けられていました。その場で飲むなら無料ですが、お湯を持ち帰る場合は有料です。


 
脱衣室にはいくつかの張り紙が掲示されているのですが、その中でも私が注目したのは上画像の2枚。
まず左(or上)画像の張り紙で説明されているのは湯使いに関してであり、浴場内には2つの浴槽があって、1号という浴槽は「源泉100%かけ流し」、その一方、もうひとつの湯船である2号浴槽は「一部循環かけ流し」である旨が記されていました。なるほど湯使いに関してはよくわかりましたが、浴槽の呼び名を大小や主副ではなく、1号2号という序数が用いられている点が珍しく、私にとっては興味深い点でした。
もうひとつ、右(or下)画像の張り紙では、「町の湯」と「川の湯」の違いや飲泉に関して触れられており、この「町の湯」はリュウマチ・神経痛・肩こり・腰痛・打撲など、「川の湯」は慢性的皮膚炎や傷などに対して、それぞれ効能が有しているんだとか。ということは、かつて俵山で湯治をしていた人は、自分の症状に合わせて浴場を選んでうたのでしょうね。でも「川の湯」が過去帳入りしてしまった今、皮膚炎や外傷を湯治したい人はどうすればよいのでしょう(「白猿の湯」へ行けば良いのかな?)。


 
お風呂は内湯のみですが、タイル張りの浴室内は天井が高くて明るく、「町の湯」という名前がもたらす銭湯風情のこぢんまりしたイメージを根底から覆すシティーホテルの大浴場並みの立派な造りにびっくりしてしまいました。間口の狭い木造家屋が密集している俵山という土地にありながら、これだけの広さを確保できるとは驚きです。いや、むしろ各旅館の宿泊客がこぞってやってくるのですから、それなりの空間を確保して然るべきなのかもしれませんね。


 
洗い場は二手に分かれており、計6基のシャワー付きカランが設置されています。また出入口の脇には小さな上がり湯槽も設けられています。



洗い場の上には「効果的な入浴」と題して入浴方法が解説されていました。内容に関しては割愛させていただきますが、やはり湯治の場ですから、単に汗を流して湯船に浸かるだけではなく、いかにして湯浴みをするか、その方法こそが大切なのでしょう。


 

上述の張り紙で説明されていたように、浴室内には大小2つの浴槽があります。
漏斗のような形状をしている大きな浴槽が、循環と放流式を併用している2号浴槽。窓側の最長辺で約3m、幅は広いところで約2m、狭い湯口側で1.5mといったところ。浴槽の中央部ではジェットバス装置が稼働していました。湯口はあるものの、私の訪問時にはほとんど吐出されておらず、後述する1号浴槽から流れ込む受け湯と循環湯が供給源のようでした(日によっては湯口からお湯が出るのかも)。ややぬるい湯加減(40℃前後)に調整されており、一部循環とはいうものの、浴槽の縁から洗い場へ向けてお湯がザバザバと惜しげも無く溢れ出ていましたから、ほとんど完全放流式に近い湯使い状態と言っても差し支えないでしょう。


 
その左手に据え付けられている2m×2.5mの四角く小さな浴槽は完全掛け流しの1号浴槽。壁から突き出た湯口よりお湯がドバドバ投入されていて、その勢いを見ているだけでも豪快な気分になれます。湯加減は41℃前後。浴槽のお湯は全量が隣の2号浴槽へと流れ出ています。見た目だけでは1号も2号も同じお湯のように思われますが、実際に入るとフィーリングが全然違い、もちろん1号の方がはるかに素晴らしく、鮮度感が抜群です。

こちらで使われているお湯は「町の湯泉」と称し、浴場の敷地内で湧出している源泉のようです。無色透明で大変清らかに澄んでいます。飲泉所で飲んでみますと口の中でトロミを感じ、しっかりとしたタマゴ味が得られました。アルカリ性ですから口当たりがまろやかなんですね。冷やして飲むと、さぞかし美味しいことでしょう。1号浴槽の湯口付近では温泉由来のタマゴ臭も漂っていました。そして湯船に足を入れた瞬間に、トロトロ・ヌルヌルそしてツルツルといった滑らかさが肌に伝わり、肩までお湯につかると、まるで自分がローションの中に浸っているかのような極上の滑らか浴感に包まれ、いい歳こいたオッサンの私ですら「あれ? アタシって美人になっちゃった?」と勘違いして、湯中でスベッスベな自分の肌をさすってしまいました。これぞまさに美人の湯。このお風呂で昔ながらの湯治をするのも結構ですが、それとは違う観点で美肌効果を期待するのも良いかもしれません。

上述したように俵山温泉では内湯を持つ旅館が少ないため、宿泊する客はこの浴場に集まります。このため夕方以降は混雑するのですが、私が訪れた昼間は空いており、かなりの長い時間、独占することができました。素晴らしいお湯でした。


町の湯泉
アルカリ性単純温泉 41.3℃ pH9.9 溶存物質0.2048g/kg 成分総計0.2048g/kg
Na+:47.8mg,
Cl-:12.1mg, HS-:0.6mg, S2O3--:0.8mg, OH-:1.4mg, SO4--:14.6mg, CO3--:43.6mg,
H2SiO3:79.0mg,
(平成25年12月4日)
1号浴槽:100%掛け流し
2号浴槽:一部循環掛け流し

下関駅や長門湯本駅からサンデン交通の路線バスで「俵山温泉」バス停下車
山口県長門市俵山湯町5113  地図
0837-29-0001

6:00〜22:00
420円
ロッカー(10円有料)・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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柚木慈生温泉

2017年06月24日 | 山口県
 
引き続き山口県の温泉を取り上げます。今回は温泉ファンから評価の高い「柚木慈生温泉」です。所在地は山口市ですが、レンタカーのナビが指し示した場所は、市街からとんでもなく離れた山の中。とても「市」だと信じられません。それもそのはず、後日知ったのですが、この「柚木慈生温泉」がある一帯は、2005年の市町村合併で山口市に吸収されるまで徳地町という独立した町だったらしく、今でも山口市市域の約40%はこの旧徳地町なんだとか。
宿自体は国道沿いに位置しており、看板も立っているので迷うことなくたどり着けますが、こちらは湯治を主目的としているためか、宿泊は2泊以上から受け付けているので、日程が限られている今回は立ち寄り入浴で利用させていただくことにしました。


 
駐車場の隅には源泉井戸があり、薪がたくさん積み上げられていました。湧出温度が17℃であるため、入浴には加温が必要であり、そのために薪がたくさん用意されているわけですが、こちらでは加温に際してちょっとした工夫がなされています。その工夫に関しては後述します。
玄関を入ると奥へ廊下が伸びており、右手に軽食カウンターが設けられ、左手に浴室入口のドアが並んでいました。そしてカウンターの中で作務衣姿のご主人がランチ営業の準備をなさっていました。


 
廊下の壁には鉱泉について、そして湯使いについての説明が掲示されていました。「リチウムイオンは温泉基準法値の約3倍、遊離二酸化炭素は約8倍の高濃度」とのこと。日本の温泉法では指定された物質が一定量以上含まれていれば温泉であると認められるのですが、館内掲示されている分析書によればリチウムイオンは2.66mg、遊離炭酸は2107mgと記されていましたから、その定義の中に含まれる「リチウムイオン1mg以上」や「遊離炭酸250mg以上」という項目は余裕でクリアしていますね。更に言及すれば「フェロ又はフェリイオン(総鉄イオン)10mg以上」「フッ素イオン2mg以上」「総硫黄1mg以上」「メタホウ酸5mg以上」「メタけい酸50mg以上」そして「溶存物質総量1000mg以上」といった項目も満たしているので、温度以外の数値はその辺りの温泉なんて目じゃないほどいろんな成分を含んでいるのです(参考:総鉄イオン14.77mg、フッ素イオン3.11mg, 硫化水素イオン1.22mg、メタホウ酸121.2mg、メタけい酸11.29mg、溶存物質3.527g/kg)。

次に湯使いに関してですが、文章をまるごと抜粋すると「泉質が高濃度のため源泉100パーセントでは皮膚の弱い方は肌荒れを起こす場合がある。そのために85度の沸かし湯を30パーセントと17.6度の源泉を70パーセントの目安で混ぜ合わせ入浴に適した温度に保ち、常時かけ流しにしている。(温泉専門医のアドバイスによる)」とのこと。この説明によれば鉱泉が濃くて皮膚トラブルを招きかねないから温度調整も兼ねて沸かしお湯を加えて薄めているようですが、マニア的に捉えると、源泉の鉱泉を直に加温すると炭酸ガスが飛んでしまうので、鉱泉は冷たいまま浴槽へ注ぎ、そこへ薪を焚いて沸かした真湯を加えることで、鉱泉の持ち味を活かしたまま入浴することができるんですね。

さて、成分的にも湯使いも立派な鉱泉であることを確認した後は、湯銭を支払ってお風呂へ。


 
こちらのお風呂は湯治が主目的であるため、歓楽的要素はなく、シンプルで実用的な内湯のみです。とはいえ、天井以外の壁・床・浴槽などには赤い御影石が用いられていますし、浴槽の独特な形状をしており、そうした各要素が旅館ならではの非日常を感じさせてくれます。浴室の左手には洗い場があり、カランが4基並んでいました(うち1基はシャワー付き)。なお洗い場に備え付けられているのは石鹸のみですから、シャンプーなどが必要な場合は各自で持参しましょう。


 
浴槽は数字の9を膨張させたようなスタイルで、5〜6人同時に入れそうな容量を有しており、縁の上からお湯が溢れ出て、オーバーフローが形成した石灰華により床は千枚田状態になっていました。湯船のお湯は若干緑色掛かったオレンジ色に濃く濁り、赤茶色の浮遊物(及び沈殿)も目立っています。廊下の張り紙には沸かし湯:冷鉱泉=3:7と記されていましたが、その割合のおかげか、長湯仕様のぬる湯に設定されており、時間を忘れていつまでも浸かっていたくなるような、まどろみを誘う湯加減でした。



湯口は一つですが、その内部をよく見ると流れが2本あり、平べったい口の右側は冷たく、左側からは熱いお湯が吐出されていました。つまり右側が源泉100%の冷鉱泉で、左側が薪で沸かしたお湯なのでしょう。湯口内の冷鉱泉は無色透明ですから、湯船で外気に触れたり温度が変わったりするうちに、濁りを濃くするのでしょう。弱い金気臭を放つ濁り湯に浸かると、全身に浮遊物がまとわりつき、ギシギシの引っ掛かる浴感が得られます。


 
何よりもこのお風呂で特徴的なのは、湯船に入った途端、肌にびっしりと付着する夥しい炭酸ガスの気泡です。湯中では全身があっという間に泡だらけになり、何度拭っても気泡まみれになるのです。この気泡の付着により、本来ならギシギシが優るはずの浴感に気泡がもたらすフワフワ感やスルスル感も混在していました。
その一方、あまりに多くの気泡が付着するため、肌の上で気泡がパチパチと弾く感触がはっきりと伝わります。特に湯船から上がる時には気泡が一斉に弾けるのですが、その刺激はなかなか強烈です。館内表示で「源泉100パーセントでは皮膚の弱い方は肌荒れを起こす場合がある」と記されていましたが、なるほど源泉のままでしたら、皮膚の弱い方には肌荒れはもちろん、このパチパチですらも痛く感じてしまうかもしれません。でも、それだけ炭酸ガスのパワーがはっきりとわかるのですから、温泉マニア的には非常にありがたいお風呂です。源泉の個性を生かす湯使いといい、ぬるめの湯加減といい、夥しい気泡の付着といい、温泉ファンの皆さんが絶賛するのも納得です。しかも長湯と炭酸ガスの温浴効果により、体の芯からしっかりと温まり、しばらくは汗が引きませんでした。

お風呂上がりに軽食カウンターにいらっしゃったご主人が、源泉100%の鉱泉を湯呑みに注いで飲ませてくれました。湯呑みの中に気泡がびっしり着くほど炭酸ガスが多く、まだ酸化していないので綺麗な無色透明でした。実際に口にしてみますと、酸化鉄がまださほど発生していないためか金気はあまり感じないものの、カルシウムと思しき硬い味、そして炭酸水の味がはっきりと口腔に広がりました。ヨーロッパで売っている硬水の炭酸水みたいです(ゲロルシュタイナーみたい)。そういえばここの鉱泉水にはリチウムが多く含まれているんでしたっけ。リチウムを含む鉱泉は飲泉すると効果的といいますが、確かに言われてみると体の中に鋭気が注入されたような気分がしました。リチウムといえば、バッテリーですよね。その感覚を通じて、バッテリーが充電される時の気持ちが少しだけ理解できたのかもしれません。素晴らしい鉱泉のお風呂でしっかりとチャージした私は、元気溌剌になって次の目的地へと向かったのでした。


斉藤泉
含二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉 17.1℃ pH6.20 78.7L/min(動力揚湯・深度70m) 溶存物質3.527g/kg 成分総計5.634g/kg
Na+:475.6mg(43.35mval%), Mg++104.4mg(18.00mval%), Ca++:346.1mg(36.18mval%), Fe++&Fe+++:14.77mg, Li+:2.66mg,
F-:3.11mg, Cl-:716.1mg(41.59mval%), Br-:2.18mg, HCO3-:1717mg(57.94mval%), HS-:1.22mg,
H2SiO3:121.2mg, HBO2:11.29mg, CO2:2107mg,
(平成20年2月25日)
温水注入あり(85℃の沸かし湯を30%、源泉の冷鉱泉を70%の割合で混ぜ合わせている)

山口県山口市徳地柚木2178  地図
0835-58-0430
紹介ページ(山口市観光情報サイト「西の京 やまぐち」内)

10:00~20:00 毎月5日・18日定休
500円
ロッカー・石鹸あり、他備品類無し

私の好み:★★★

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湯田温泉 西村屋(2016年9月宿泊)

2017年06月22日 | 山口県
※当記事は2016年9月に訪問した際の様子をレポートしております。西村屋は2017年6月1日付で山口地方裁判所より破産手続の開始決定を受け閉業してしまいました。旅館の建物は現在別会社に譲渡されており、リニューアル工事が行われています。今年(2017年)9月にリニューアルオープンを予定しているとのことです(出典元:帝国データバンク「倒産速報記事」2017年6月9日付


 
昨年(2016年)9月に山口市の湯田温泉を訪れた際には、明治39年創業の老舗旅館「西村屋」で一泊お世話になりました。


 
上画像はロビーの様子です。


 
ロビーから客室へ向かう途中の廊下からは庭園が眺められました。庭園の池では冷泉が湧いているんだそうです。



湯田温泉は詩人中原中也の出身地としても知られていますが、氏はこの宿で結婚式を挙げたんだそうです。浴場へ向かう途中にある「葵」という部屋で式が行われたんだとか。


●客室など
 
複雑に入り組んだ廊下を進みながら2階に上がった先が、今回案内された客室です。10畳の和室で、トイレや洗面台が付いている便利なお部屋です。夕食なし朝食付きのプランでお願いしたため、入室時にはすでに布団が敷かれていました。


 

部屋にはお風呂も付いていました。この日は全く使わなかったのですが、どんなお湯が出たのかな。


 
朝食は別室にていただきます。いかにも日本旅館らしいオーソドックスな献立でした。


●浴場
 
お宿には浴場が2つあり、夜9時に男女の暖簾を替えます。しかしながら、私は夜9時を過ぎてからチェックインしたため、片方の浴場しか利用しておりません。私が利用できたのは「錦香泉」と称する浴場です。


 
脱衣室は古いながらも広々しており、ストレスなくゆったりと使うことができました。室内にはタオルが積まれており、宿泊者は自由に使うことができます。この脱衣室で目を引くのが湯田温泉の源泉集中管理を図説したプレートです。これによれば、1号(71.0℃)、3号(65.0℃)、10号(71.5℃)、12号(71.0℃)、18号(72.0℃)、19号(61.5℃)、近藤1号(49℃)という7つの源泉から、容量223トンを誇る貯湯槽一箇所にお湯を集め、そこから各施設へお湯を分配しているようです。集湯管延長は1149.8m、配湯管延長は4420.4m、送湯量は毎分880リットルとのこと。毎分880リットルという量は一見すると多いように見えますが、これを規模の大きな各旅館で分け合うのですから、一軒当たりの割り当ては決して多くなく、それゆえお風呂のお湯を循環せざるを得ないのでしょう。にもかかわらず、この西村屋では掛け流しの湯使いを実践しているのだから素晴らしい。私がこちらのお宿を選んだ理由は、リーズナブルである点、そして温泉が掛け流しであるという点、この2点です。


 
古い建物なので天井の低さは目を瞑るとしても、浴場内はとても広く、非日常性を享受するには十分です。室内の中央に丸くて大きな浴槽が設けられ、それを取り囲むように周囲の壁に洗い場が配置されています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が7基取り付けられていました。


  
壁の一部には秋吉洞で採れた大理石が用いられていました。壁一面が大理石だなんて、さすがご当地ならではの贅沢ですね。


 
浴室の一角には2本の打たせ湯が設けられていました。私が利用した「錦香泉」の特徴は、この打たせ湯の他、臥せ湯、そして露天風呂が備え付けられている点であり、今回私が入れなかったもう一つの浴場である「千代の湯」はジェットバスがあるんだとか。
この打たせ湯の近くにはお湯に関する説明が掲示されており、こちらでは、集中管理されているミックス泉に、自家源泉である「西村屋1号泉」(30℃未満)を加えて温度調整した上で、掛け流しているんだそうです。


 
大きく丸い浴槽は楕円形。石材で縁取られ、内部はタイル張りです。最も長い部分で奥行3.5m×幅2.5m強といったところでしょうか。その大きな浴槽へ、湯口からお湯がチョロチョロと注がれていました。石樋には熱いミックス泉が流れているのですが、その上の塩ビ管(竹でカバー)から冷たい自家源泉が落とされており、つまりこの湯口で両源泉が混合されているのです。湯口に「飲用可」と書かれていたので実際に西村屋1号泉を飲んでみますと、タマゴ味やゴムテニスボールのような風味がほんのりマイルドに感じられました。
湯船のお湯は無色透明でほぼ無味無臭。浮遊物や気泡などは見られません。少々のトロミがある優しく滑らかなお湯ですが、アルカリ性泉らしいツルスベ浴感は弱く、あっさりとした単調なお湯でした。浴槽の大きさに対してお湯の投入量は少ないため、お湯の鮮度が心配になりますが、少なくとも私が入った時には特にお湯が劣化しているような様子はなく、まずまずのコンディションだったようでした。私は夜と朝の計2回入浴したのですが、両方とも他のお客さんと遭遇しなかったので、この時は宿泊客自体が少なく、それゆえお湯が疲れずに済んだのでしょうね。


 
内湯の出入口から長い通路を抜けた先にあるのが露天風呂。市街地の中にあるため目隠しの塀が目立ち、多少の閉塞感は否めませんが、植栽で日本庭園風の趣きにしており、なかなか良い雰囲気が作り上げられていました。建物の庇に護られている露天の浴槽は、長方形で4〜5人サイズ、縁には白木の板を載せ、浴槽内は鉄平石が採用されています。


 
内湯と同様に熱いミックス泉と冷たい自家源泉が一緒に注がれており、それぞれ別の配管から投入されていました。しかしながら、こちらも投入量は少なく、もし複数人数が同時に入って大量にオーバーフローしたら、湯嵩の回復に長い時間を要することが必至なほど、心細い量でした。たしかに掛け流しなのかもしれませんが、掛け流すというより掛け注ぐと表現した方が良いかもしれません。湯船のお湯は湯尻から溢れ出て、下にある小さな槽へと落ち、そこから更に溢れて排湯されています。この小さな槽はあまりに小さすぎるため、大人は一人でも入ることはできないでしょう(せいぜい子供一人がいいところ)。なぜこのようなものを設けたのか謎です。

残念ながらこの「西村屋」は経営破綻にともない2017年5月に閉館してしまいました。しばらくはこのお風呂に入ることができませんが、今年(2017年)9月に新たな事業者の手によりリニューアルオープンするそうですから、新たに生まれ変わった後も掛け流しのお風呂を維持していただきたいと願うばかりです。


西村屋1号泉 
単純温泉 26.8℃ pH8.0 16L/min(動力揚湯) 溶存物質0.4359g/kg 成分総計0.4385g/kg
Na+:63.6mg(59.78mval%), Ca++:29.4mg(31.70mval%),
F-:1.3mg, Cl-:37.0mg(21.86mval%), Br-:0.1mg, HCO3-:194.6mg(66.82mval%),
H2SiO3:80.6mg,
(平成24年12月11日)

ミックス泉 
アルカリ性単純温泉 63.1℃ pH9.2 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質0.6426g/kg 成分総計0.6426g/kg
Na+:206.6mg(94.14mval%),
F-:12.5mg, Cl-:271.0mg(78.74mval%), Br-:0.8mg, OH-:0.3mg, CO3--:16.8mg,
H2SiO3:80.8mg,
(平成27年6月5日)

山口県山口市湯田温泉4-1-30
083-922-0250
ホームページ
(2017年5月に閉業してしまいました)

私の好み:★★
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湯田温泉 亀乃湯および温泉舎

2017年06月21日 | 山口県
山口県山口市の湯田温泉は、県内のみならず山陽地方随一の温泉街であり、旅館や歓楽街が渾然となりながら温泉街が形成されています。
当地には大小様々な規模の宿があり、その一部では立ち寄り入浴も受け入れていますが、そもそも歓楽街的な要素が強い土地柄だからか、入浴のみを専業とする温泉銭湯は「亀乃湯」と「天然温泉 清水湯」の2軒しかありません。そこで、当地へ泊まった昨年(2016年)某日の晩に、その中の一軒である「亀乃湯」を訪れてみることにしました。


●亀乃湯
 
老舗旅館「松田屋」の向かい、旅館「西村屋」の左隣に位置しており、建物の前には4〜5台分の駐車場が用意されています。歴史ある温泉地の銭湯ですが、トラディショナルな佇まいをしているわけではなく、建物の外観は至って質素でこぢんまりとしており、やたら看板だけ目立っていました。



上画像は翌朝改めて撮った「亀乃湯」です。浴場名の看板がなければ、倉庫かポンプ室ではないかと勘違いしてしまいそうな外観ですね。

建物の右脇に出入口があり、館内に入ってから券売機で料金を支払い、番台のおばちゃんに券を差し出してから、脱衣室へと向かいます。脱衣室内にロッカーは無いので、貴重品を携行している場合は、番台前に設置されているダイヤル式のロッカーを利用することになります。またこの番台の前にはちょっとした休憩スペースが用意されており、お風呂上がりに自販機で飲料を買ったドリンクで水分補給しながらひと息つくことも可能です。
外観から予想できる通り、脱衣室はコンパクトな作りで、混雑時には譲り合いが求められるような状態になりますが、そんな空間でも洗面台が2台設置されていたり、ドライヤーも2台備え付けられていたりと、狭い点に目を瞑れば使い勝手はまずまずと言えるでしょう。


 
浴室も決して広いとは言えませんが、限られたスペースを有効に活かすべく、浴槽や洗い場、そしてサウナなどが、隙間なく嵌め込まれたパズルのように配置されていました。男湯の場合、浴室へ入った正面すぐ目の前に2つの浴槽が並んでおり、その左手前方に洗い場が、同じく左手の手前側にサウナと水風呂(2人サイズ)が設けられています。洗い場に取り付けられているシャワー付きカランは計5基。シャンプー類の備え付けはありませんので、持参するか番台で購入するなど、事前に用意しておく必要があります。

上述のように浴槽は2つあり、一つは画像左(or上)の小さな槽。寸法は(目測で)1.5m×1.0mの2〜3人サイズ。この浴槽では底部から熱いお湯が供給されており、43〜4℃というちょっと熱めの湯加減が維持され、この浴槽に張られたお湯は、槽内のスリーブを通じて隣の大きな浴槽へと流れています。
その大きな浴槽(画像右or下)は、小さな浴槽の倍近い大きさがあり、小さな槽からの流れ込みの他、専用の湯口から適温のお湯が供給され、湯船自体も42℃前後の万人受けする湯加減に調整されていました。浴槽の底には吸い込み口が2つあってそこからお湯が吸引されていましたから、そうした構造やお湯のフィーリングから推測するに、おそらくお湯は循環利用されているものと思われます。画像を見るとわかりますが、この大きな浴槽には「壺湯」と称する窪みが3つあり、それぞれが丁度一人だけ入れる深い造りのお風呂になっていました。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、少々の消毒臭が感じられます。大小両浴槽ともオーバーフローは見られず、槽内吸引や供給が行われており、お湯からフレッシュさはあまり感じられなかったので、循環消毒が実施されているものと思われます。ネット上の情報によれば、お湯は温泉街で集中管理しているミックス泉に、30℃未満の自家源泉を混合させているらしいのですが、その点に関する詳しい情報を入手することができなかったので、湯使いに関してこれ以上の言及は控えさせていただきます。湯船に浸かると、アルカリ性泉らしいトロミが肌に伝わりましたが、決してツルツル浴感がはっきりしているわけではなく、正直なところ掴みどころのない没個性なお湯と化していました。この時は夜遅い時間だったため、最混雑時間帯を過ぎた後で、お湯が相当疲れていたのでしょう。連日の残業とお局様のイビリが重なって目の下に真っ黒いクマができてしまったOLさんと深夜にお見合いするようなもので、私が訪れたタイミングが悪かったのかもしれません。今度はコンディションの良い時に改めて利用させていただきたいものです。



壁にはタイル絵が埋め込まれていたのですが、そのタイル絵は全て白狐を描いたもの。全国津々浦々の歴史ある温泉は、鹿・猿・鷺・鶴など、えてしてその開湯伝説に動物が関係していますが、湯田温泉の場合は白狐がお湯を見つけたと言い伝えられており、それゆえ白狐のタイル絵が埋め込まれているのでしょう。


湯田温泉ミックス泉
アルカリ性単純温泉 63.6℃ pH9.14 溶存物質626.54mg/kg(※) 成分総計626.54mg/kg(※)
Na+:206.8mg,
F-:11.42mg, Cl-:274.8mg, HS-:0.02mg, OH-:0.24mg, CO3--:15.96mg,
H2SiO3:72.43mg,
(平成19年12月19日)
(※)掲示されている分析書に記載なかったため、著者が計算。

12:00〜24:00(受付終了23:30)
390円
ロッカー・ドライヤーあり、石鹸類販売あり

私の好み:★+0.5


●温泉舎や足湯
 
湯田温泉では「おもてなし西の京湯田温泉街プロジェクト」という活性化プロジェクトを進めており、実際に街中を歩いていると、巨大旅館や歓楽街の間に、無料で利用できる足湯や温泉を流すモニュメントなど、明らかにここ数年のうちに設置されたであろうと思しき施設が目につき、散策して楽しめる街づくりを目指していることが伝わってきます。その象徴たるものが、温泉街の南東に位置する「温泉舎(ゆのや)」。温泉街の中で屹立する高い櫓が目印です。湯田温泉の複数ある各泉源は建物の間に隠れるように存在しているため、その泉源に光を当てて温泉街としての風情を出すべく、2010年にオープンしたものです。温泉風情を醸し出すべく、黒色基調のシックな和テイストですが、ロゴなど随所に現代的なデザインが採用されています。


 
当地の開湯伝説に基づき、白狐の石像が据え置かれた庭園。その狐の足元から流れている川は「湯の川」。


 
櫓は高さ7.9mで木造。実際の揚湯に使われている訳ではなく、単なるオブジェとして建てられたようです。黒板の塀に囲まれた中心部には円筒形の泉源塔が据え付けられ、その傍らには自然石の上に注連縄をしめた飲泉場が設けられています。こちらの泉源は「市有19号泉」と称し、複数ある湯田温泉の源泉のひとつ。とても熱いので、ふぅふぅ吹きながらゆっくり飲んでみますと、トロミとともにはっきりとしたイオウ感が得られました。それもそのはず、なんと総硫黄が2.4mgも含まれているのです。ここで湧いたお湯は他源泉をミックスされて各旅館へ配湯されるわけですが、個人的な希望を言えばこの源泉単独のお風呂に入ってみたいものです。


 

泉源塔の配管には温度計が取り付けられており、64℃を指し示していました。この泉源塔には喉き窓が設けられており、塔の中でお湯が流れる様子を目にすることができるのですね。私も実際に見学しましたが、かなりの勢いでお湯が流れており、結構な迫力が伝わってきました。なおその量は1日約2000トンとのことです。

市有19号泉
アルカリ性単純温泉 62.0℃ pH9.4 溶存物質0.5826g/kg 成分総計0.5826g/kg
Na+:175.3mg,
F-:12.9mg, Cl-:243.8mg, Br-:0.7mg, OH-:0.4mg, HS-:1.5mg, S2O3--:0.9mg, , OH-:0.4mg, CO3--:20.8mg,
H2SiO3:78.6mg,
(平成22年12月1日)



●足湯
 
温泉街には無料で利用できる足湯も複数設けられています。上画像は、湯の町街道(県道204号線)と錦川通りを結ぶ細い路地「湯の香通り」にある足湯。



こちらは同足湯の湯口。定期的に清掃が行われているらしく、前夜訪れた時にはお湯で満たされていましたが、この画像を撮影した次の日の朝にはお湯が抜かれていました。ただ単につくるだけでなく、きちんと維持管理されているところが素晴らしい!


 
観光案内所の前にも足湯がありました。



足湯のみなたず、路地の角にも温泉を流す白狐のモニュメントが建てられていました。
従来の湯田温泉は歓楽街としての色彩が強かったため、温泉地なのに温泉風情に欠けていたわけですが、このような活性化事業により、少しずつ温泉街としての風情を取り戻しているようでした。

さて、次回記事では実際に当地で宿泊したお宿についてレポートさせていただきます。

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