温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

丸尾温泉 旅行人山荘 その1(客室・食事など)

2016年12月04日 | 鹿児島県
 
先日アップしました九州最大規模を誇る某所の野湯を楽しんだ日は、私にとってのちょっとしたanniversary。いつもはお手頃な宿で晩を過ごしていますが、せっかくですからこの日ばかりは記念日にふさわしい素敵な宿に泊まろうと考え、霧島山麓の丸尾温泉にある評判のホテル「旅行人山荘」で一晩を過ごすことにしました。インターネット上では一人客の予約を受け付けていないようですが、直接電話すると、空室状況によって受け入れてくれます(一人で宿泊する場合は追加料金が発生します)。


 
山荘という名前とは裏腹に、建物は立派ですし、ロビーもラグジュアリー感が漂っています。ラウンジにはグランドピアノが置かれており、時間によって演奏も行われるようです。



エレベータホールにも臙脂の絨毯が敷かれていました。格調高い館内です。


 
今回の客室は、一般客室よりお値段がちょっぴり高い、改修済みの洋室(禁煙ツインルーム)をチョイスしました。広々している室内はとても綺麗で、ひと通りの家電類も揃っています。Wifiも飛んでいるのでネット環境も問題無し。なぜか枕元には「古事記」が置かれていたのですが、これって特別な意味でもあるのでしょうか。
客室内に取り付けられている洗面台は深くて広い使いやすいタイプが採用されていました。なお、バスルームにはバスタブも設置されていましたが、次回記事以降で紹介するように、館内にはたくさんのお風呂はあるため、客室のお風呂は利用しておりません。体に障害をお持ちの方など、大きなお風呂の利用が難しい方にとっては、こうした部屋付きの風呂が重宝するかと思います。


  
全客室は南側を向いており、霧島の山腹に位置するこのホテルからは、錦江湾へと広がる山懐と国分平野、そして湾越しに聳える桜島を一望することができました。この日は遠方に薄い雲がかかり、またPM2.5の飛来もあったのか、晴れていたわりには視界がいまひとつでしたが、空がクリアに澄むと開聞岳まで眺望できるんだとか。
ホテルの庭では、早朝にシカが餌を啄ばんでいました。



上の画像でシカがお腹を満たしていた芝生の庭へ出てみましょう。


 

庭の一角には、石垣に囲まれた立派な造りの飲泉所が設けられており、石臼のような注ぎ口から無色透明の温泉が落とされていました。説明によれば、このお湯は丸尾12・13・14・15号混合泉という源泉で、泉質名は単純泉ですが、実際に飲泉してみますと硫化水素の匂いが香り、硫黄泉のような味わいが口に広がりました。なおこのお湯は次回記事で取り上げる2つの大浴場などにも引かれていますので、お湯に関する細かなインプレッションはまた改めて記載させていただきます。


 
広い庭の南端には足湯「龍石の湯」が設けられていました。足湯の中央に据え置かれているオブジェを兼ねた湯口が龍石なのでしょうね。もちろん眺望の先には錦江湾が広がり、桜島が聳えています。


●食事

お食事は眺めの良い食堂でいただきます。電話予約の際に夕食のグレードアップをお願いしておきました。鹿児島県産の食材を使った懐石料理とのことですが、果たしてどんな食事を楽しむことができるのでしょうか。まずはアペリティフの梅酒で口の中を湿らせます。


 
上画像はお宿オリジナル「大隈鍋」味噌仕立て。黒豚ばら肉・赤鶏つみれ・地元の野菜などの具材を、名前の通りの味噌仕立てスープでグツグツと煮込みます。


 
左(上)画像に写っているお造りは、白身魚・花エビ・まぐろ。
右(下)画像の上は黒豚軟骨煮(さつまいもやこんにゃくとともに)、そして下の横に長いものは、大名竹の焼き物。酢味噌でいただきます。季節ならではの味覚ですね。


 
溶岩焼きで使われる溶岩は、先ほど客室の窓から眺めた桜島で採れたもの。この上で和牛・エリンギ・そしてお野菜をジュワーっと焼きます。多孔質の溶岩が余計な脂を吸収してくれるので、いい感じに焼きあがるんですね。
右(下)画像はきびなごの天ぷらです。きびなごは鹿児島県の郷土料理には欠かせない、ご当地ならではのお魚ですね。


 
終盤にいただくのは、かやくご飯やお吸い物、そして締めくくりのフルーツです。
前菜からメイン、そしてデザートに至るまですべてがブリリアント。
品数が多いので、中盤あたりで満腹感を覚えるのですが、それでも美味しさが食欲を後押しするので、次から次へどんどん箸が進み、さすが無芸大食を自認するだけあって、気づけば全てを平らげていました。



こちらは朝食。小鉢類が多くて彩り豊かですね。鉄板で干物を炙るので、焼きあがる頃に鉄板から漂ってくる芳ばしい匂いが、白いご飯をより一層美味しくしてくれました。

さて次回記事からは温泉浴場に関して触れてまいります。

次回に続く。
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霧島神宮温泉 蓬泉館

2016年12月03日 | 鹿児島県
 
南九州屈指の古社である霧島神宮の周辺には参詣客のための宿が点在しており、温泉が引かれている施設も少なくありません。今回はそんな宿の中から温泉ファンの間でしばしば話題に上がる「蓬泉館」で日帰り入浴してまいりました。裏参道に面しているこちらのお宿は昭和初期に開業したそうで、建物の外観はかなり草臥れているのですが、さてお風呂はどんな様子なのでしょう。


 
建物はいくつかの棟に分かれているのですが、道路に最も近い玄関は宿泊専用で、日帰り入浴の受付は別に設けられているようです。駐車場から奥へ進んでゆくと、通路に沿って無銭入浴を警戒する看板類が複数掲示されていました。その手の被害に多く遭っているのでしょうか。一番奥の「入浴料金徴集所」なる場所は厨房の勝手口であり、そこにいたお婆さんへ湯銭を支払うのですが、勝手口から覗く厨房内部は、何と言ったら良いのかわからないほど表現しがたい光景が広がっており、いくら安いとはいえ、果たしてここで入浴して大丈夫なのかという不安を抱かざるを得ませんでした。具体的な描写は敢えて控えますが、以前からそうなのか、あるいは近年こうなってしまったのか…。つげ義春的な空気感を強く覚えました。


 
ま、なんとかなるだろうと開き直って、客室棟(左or上画像)を右に見ながら浴場(右or下画像)へと向かいます。聞きにし勝る鄙び方に、つい腰が引けてしまいました。料金を支払ったものの、本当に営業中なのかな。俺が見たお婆さんは幻ではないのかな。


 
浴場棟の上がり框を上がって右が女湯、左が男湯です。小さく区切られた棚がたくさん並ぶ脱衣室は、下足場を挟んで男女に分かれているものの、ドアやカーテンなど視界を遮るものがないため、奥の方で着替えないと丸見えです。壁の張り紙には「浴場内に犬猫は絶対に入れないで下さい」という俄かに信じがたい文言が書かれており、ペットを宿の風呂に連れ込む客なんているのかと首を傾げざるを得なかったのですが、後で調べたところによれば、この宿はペットと一緒に宿泊可能なんだそうですから、過去には愛犬や愛猫と一緒にお風呂へ入っちゃおうとするお客さんがいたのでしょうね。


 
浴室は完全に鄙びきったガタピシの陋屋。明るい昼間であろうとも、お化けが現れても不思議ではない雰囲気です。霊感が強いことを自称している人は、黒ずんだ壁のシミから何かを感じ取っちゃうかもしれません。自分で言うのもおこがましいのですが、古い温泉に関しては百戦錬磨を自負する私ですら、この光景を目にして気持ちが折れかかってしまいました。室内には後述する丸い浴槽がひとつある他、打たせ湯の跡が残っています。洗い場はありません。


 
ネット上の情報によれば数年前まで打たせ湯は現役だったようですが。私が訪れた時には完全に止められており、足元はコケむしてゴミが散らかっていました。


 
石で縁取られた円形の浴槽は直径約2.5mで4〜5人サイズです。壁を見上げると古い入浴心得が掲示されていました。


 
浴槽にお湯を注ぐ配管は屋外から伸びているのですが、壁を貫通する穴は隙間だらけですし、配管自体も継ぎ接ぎ状態。そんな配管を流れてくるお湯はべらぼうに熱いため、温度調整のために供給量の半分ほどが床に捨てられており、足元の一部は思わず飛び上がっちゃうほど熱くなっていました。ある意味で話題に事欠かないお風呂です。

湯船のお湯はほぼ無色透明で、底面、特に湯口直下には白い湯の花がたくさん沈殿していました。そして私が入浴すると沈殿が一気に舞い上がり、湯中の私は湯の花まみれになりました。お湯からは軟式テニスボールのようなゴムっぽい硫化水素感(味と匂い)がふんわりと得られますが、変なクセがなくアッサリしていますので、典型的な蒸気造成泉といって良いでしょう。
営業しているのが不思議に思えるこちらのお風呂ですが、それでも先客が2人いらっしゃったので、しっかりと固定客を掴んでいることがわかります。湯浴みしながらそんな先客のおじいさんとおしゃべりしていたのですが、曰くこのお風呂のおかげで元気になったと、まるで自慢するかのようにこのお風呂のことを誇らしげに語っていらっしゃいました。温泉ファンが話題にする理由は、お湯の質云々ではなくその独特な鄙びにあるのでしょうけど、実際のお風呂の様子がどうであれ、心から愛する方がいらっしゃるのですから、私のような一見の他所者があれこれ言う筋合いなんて無いのかもしれません。
いつまで営業できるか不安になる佇まいですが、お風呂を愛する人がいる限りは、是非とも頑張ってお風呂を守りつづけていただきたいものです。


湯之野1号・2号・10号・13号
単純硫黄泉(硫化水素型) 61.0℃ pH5.5 溶存物質135.4mg/kg 成分総計269.9mg/kg
Na+:5.8mg(22.83mval%), NH4+:6.3mg(31.60mval%), Ca++:6.2mg(27.99mval%),
SO4--:8.3mg, HCO3-:59.9mg(81.42mval%),
H2SiO3:43.2mg, CO2:122.5mg, H2S:12.0mg,
(平成20年6月16日)
加水加温循環消毒なし

国分駅もしくは霧島神宮駅より鹿児島交通(路線バス)の霧島いわさきホテル行(重久・霧島神宮経由)で「蓬泉館前」バス停下車すぐ
(路線バスの時刻は「九州のバス時刻表」で検索してください)
鹿児島県霧島市霧島田口2442  地図
0995-57-1171

日帰り入浴7:00〜21:00
200円
備品類なし

私の好み:★+0.5


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福寿温泉

2016年12月01日 | 鹿児島県
 
霧島市牧園町エリアは温泉の宝庫。当エリアに数ある温泉施設の中でも、今回は三体堂地区で営業している「福寿温泉」でひとっ風呂浴びてまいりました。看板に従って山間の道を進んでゆくと、集落のはずれに渋い外観の湯小屋がポツンと佇んでいました。


 
湯小屋の奥には休憩小屋があり、お風呂から上がった常連さんが座敷で寛ぎながら歓談していました。そして、休憩小屋の軒先では野菜が販売されていました。長閑な光景に思わず心がほっこり。ここは時間の流れ方がゆったりしているんですね。


 
浴場に番台や受付の類はなく、男女別に分かれた出入口から館内に入って、脱衣室に設置されている料金箱へ湯銭を納めます。プレハブ小屋に毛を生やした程度の質素な室内には、棚とカゴが備え付けられているばかりなのですが、扇風機も設置されており、湯上がりにクールダウンできるよう配慮されていました。


 
年季が入っている浴室も簡素で実用的な造り。床や腰部はモルタル、側壁上部は白い塗装のコンパネです。室内には温泉浴槽がひとつ据えられている他、壁に沿って洗い場がL字形に配置され、また片隅には小さな水風呂も設置されていました。


 

洗い場にはシャワー付きカランが2基、そしてスパウトのみのカランが3基取り付けられています。カランから出てくるお湯は温泉なので、成分付着によって水栓金具はベージュ色に染まっていました。洗い場に石鹸などの備え付けは無いのですが、その代わりなのか、タワシが用意されているのがちょっとユニーク。



分厚いコンクリの小浴槽は水風呂。そんなに冷たくなかったので、水風呂が苦手な方でも入れるかもしれませんよ。


 
全体的に簡素な感じの強い浴場ですが、一点豪華主義というべきか、浴槽に限っては総檜の立派なもの。2m×2.5mで4〜5人サイズの浴槽に、石積みの湯口からお湯が滔々と注がれており、湯船のお湯はウグイス色を伴う薄い山吹色に淡く濁っています。とはいえ濁り方は強くなく、半透明に近い状態であり、浴槽の底ははっきりと目視できました。
源泉名は轟3号。お湯を口に含むと、金気味と甘みを伴う石膏味、そして弱い炭酸味が感じられ、湯口からは金気臭と石膏臭がほんのりと放たれていました。湯中ではツルスベとキシキシが混在する浴感が得られ、やや重みがあるしっとりとしたフィーリングに包まれました。湯使いは完全放流式で湯量豊富。湯船のお湯は檜の縁から惜しげも無く溢れ出ています。
こちらのお湯を大雑把に表現すると、前回取り上げた「横瀬温泉共同浴場」に似たタイプでなのすが、こちらのお湯の方が、知覚的特徴が総じて薄いような気がします。それゆえ、クセが少なくて入りやすいかもしれません。100円で湯量豊富な掛け流しの温泉に入れるのですから、とってもありがたいですね。


 

福寿温泉は浴場よりも鉱泉水としての知名度の方が高いかもしれません。道を挟んだ浴場の向かいには、「福寿鉱泉水」をボトリングしている工場があり、その敷地内には温泉を汲むためのコイン式温泉スタンド(浴用)も設置されていました。工場やスタンドは湯小屋よりも手前にあり、建物としてもはるかに大きく目立っているので、国道223号からやって来た私は、勘違いしてこちらへ車をとめて「浴場はどこだ」と辺りをキョロキョロ見回してしまいました。なおスタンドで汲めるお湯は轟1号という源泉で、浴場とは別源泉となっていました。


轟3号(浴場で使用している源泉)
ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 49.5℃ pH6.6 溶存物質1.437g/kg 成分総計1.621g/kg
Na+:160.0mg(42.00mval%), Mg++:56.1mg(27.88mval%), Ca++:67.4mg(20.28mval%), Fe++:1.2mg,
Cl-:68.1mg(12.58mval%), SO4--:75.5mg(10.29mval%), HCO3-:717.6mg(77.06mval%),
H2SiO3:225.0mg, CO2:184.1mg, 
(平成21年12月25日)

轟1号(温泉スタンドで提供されている源泉)
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 44.2℃ pH6.8 溶存物質1.251g/kg 成分総計1.639g/kg
Na+:181.5mg(56.32mval%), Mg++:31.9mg(18.70mval%), Ca++:50.4mg(17.92mval%), Fe++:0.7mg,
Cl-:79.1mg(17.21mval%), SO4--:61.2mg(9.80mval%), HCO3-:577.2mg(72.99mval%),
H2SiO3:227.0mg, CO2:387.5mg, 
(平成21年12月25日)

鹿児島県霧島市牧園町三体堂2306  地図
0995-76-2083

9:00〜20:30
100円
備品類なし

私の好み:★★★
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横瀬温泉共同浴場

2016年11月29日 | 鹿児島県

霧島市の旧牧園町上中津川地区にある共同浴場を目指し、レンタカーを走らせて地区内の某所へやってまいりました。その浴場には自身の存在を知らせる看板類が一切無いので、あらかじめ存在を知らないと見つけることができません。事前の情報によれば、川沿いに湯小屋が建っているらしいのですが・・・。
とある橋の上から集落を眺めていると、周囲の民家に潜むような感じで、屋根に湯気抜きを戴く建物を見つけました。


 
付近の路肩に車を止め、歩いて丹色屋根の建物へとやってまいりました。間違いなくこれが温泉浴場ですね。



湯小屋の近くでは小さな水車が回っていました。実用的には見えませんから、集落を飾るために設置されたのかもしれません。


 
湯小屋の右手には小さな祠が祀られており、その裏手に源泉井と思しき構造物がありました。いまから入るお風呂には、ここで湧いた温泉が注がれているのかな。


 
温泉名が記された扁額が掲げられている玄関を潜って内部へお邪魔します。玄関ホールの壁には、寄付者の札がたくさん提っていました。この浴場は多くの方々から愛されているんですね。


 
寄付者の名札の下には、かつての共同浴場を写したセピア色の写真が飾られていました。旧施設時代のプリミティヴな浴場にも入ってみたかったなぁ。


 
この共同浴場は無人で、お風呂はきちんと男女別に分かれています。フローリングの脱衣室は清掃がよく行き届いており、無人とは思えないほど綺麗です。室内に料金箱が取り付けられていますので、私もこちらへ100円玉を2枚投入しました。なお都度の支払いをする必要が無い地域住民の方は、室内に括り付けられている札入れに利用証を入れて入浴するようです。


 
管理が行き届いた脱衣室からもわかるように、この共同浴場を管理なさっている方は几帳面な性格でいらっしゃるらしく、そんな一面が垣間見えるのが、館内に張り出されている様々な掲示物です。たとえば、その中のひとつが湧出量の推移。平成2年から毎年10月に計測した湧出量が数値と棒グラフで示されています。これによれば、平成5年から12年にかけて湧出量が減ったものの、翌13年から急激な回復を見せ、その後は多少の増減を繰り返しつつも、全体的には年々増加の傾向にあることがわかります。急激な減少は地震が原因であり、お湯がほとんど枯れてしまったため、源泉を掘り直して湧出量を回復させたんだそうです。わざわざこうした数値を明示してくれる共同浴場なんて滅多にお目にかかれません。
この他、湯銭箱に納められた収入の推移も明らかにされていました。こちらには平成19年度から23年度の計5年にわたって男女別に集計した年間収入が表示されており、この5年間のおける年間平均収入は約10万円とのこと。湯銭は一人200円ですから、年間500人、一日1〜2人の外来客が利用していることになります。10万とはいえ、浴場の維持管理にはそれをはるかに上回るコストを要しますから、やっぱり地元や有志の方々による支援が重要になってくるのでしょう。


 
浴室はシンプルで装飾性がなく、実用的な浴槽と洗い場があるだけで、洗い場と言っても水道の蛇口が3つあるにすぎないのですが、共同浴場にしては広い空間が確保されており、浴槽も二つ設けられていました。ただ、左側の浴槽は空っぽで、右側だけにお湯が張られていました。なお浴室の床は水はけを良くするため、中央部が山形に盛り上がっていました。


 
実用本位の浴場らしく、浴室内には風呂道具置き場が取り付けられていました。こうした小さな配慮にも管理なさっている方のお人柄が表れているようです。室内で思わず笑ってしまったのが「洗わない お尻は危険」と書かれた張り紙。言わずもがなですが、入浴中に体を洗っているとどこからともなく巨漢プロレスラーがやってきてヒップアタックを仕掛けてくるのではなく、悪い菌類が繁殖するので浴槽の中でお湯を洗ってくれるな、ということなのでしょうね。


 

お湯が張られている右側の浴槽は(目測で)2.5m×2mの四角形で、7〜8人は同時に入れそうなキャパを有しています。ほんのり赤みを帯びた潮汁的な濁りを呈しており、43.8℃というちょっと熱めの湯加減でした。湯船を満たしたお湯は縁の切り欠けよりふんだんに溢れ出ていました。


 
トゲトゲに覆われた湯口から吐出される温泉の温度は45.8℃。この湯口には加水用のバルブもあるのですが、加水など一切することなく自然冷却で43〜44℃に落ち着いていましたので、この時は加水せずそのままの状態で入浴させていただきました。お湯を口に含むと、赤錆系の金気感、甘味を伴う石膏感、清涼感を有するほろ苦味、そして弱い炭酸味が感じられ、弱い金気臭と土気臭が嗅ぎとれました。湯中ではギシギシと引っかかる浴感があり、毛穴の一つ一つに砥粉が入り込んでくるような感覚が得られ、そして全身に毛布が掛けられているようなホールド感に包まれます。湯上がりのホコホコ感も長い時間にわたって持続します。味や匂い、そして浴感などその全ての特徴は、重炭酸土類泉(あるいは塩化土類泉)の典型例と言って良く、妙見や塩浸など新川渓谷温泉郷の各温泉地と同じような部類に属する温泉だと思われます。

わかりにくい場所にありながら外来者にもオープンで、しかも広くて管理の行き届いた環境のもと、自家源泉の温泉がしっかり掛け流されているのですから、温泉ファンにとって利用価値が高い共同浴場と言えるでしょう。


ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 50.5℃ pH6.1 54L/min(自然湧出) 溶存物質1.557g/kg 成分総計2.077g/kg
Na+:167.3mg(41.96mval%), Mg++:54.7mg(25.94mval%), Ca++:94.3mg(27.15mval%),
Cl-:126.2mg(20.90mval%), SO4--:94.0mg, HCO3-:701.3mg(67.47mval%),
H2SiO3:259.5mg, HBO2:27.1mg, CO2:520.8mg,
(平成21年8月21日)

鹿児島県霧島市牧園町上中津川(場所の特定は控えさせていただきます)

7:30〜22:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★
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九州最大の某野湯 2016年5月

2016年11月28日 | 鹿児島県
※今回取り上げる場所は地熱活動が活発であるため、火傷や硫化水素ガス中毒となる恐れがあります。もしこの場所へお出かけになる場合は、自己責任でお願いします。なお場所の特定などお問い合わせには応じませんので悪しからずご了承ください。

 
今年(2016年)5月某日。自分にとって記念すべき日を迎えた私は、自分で自分にささやかなお祝いをすべく、雲ひとつない真っ青な五月晴れの中、九州某所の林道をテクテク歩いていました。


 
この山は人工植樹による針葉樹が多いのですが、ところどころに九州らしい常緑樹も見られ、また路傍の日当たりが良いところでは、ミヤマキリシマが自生しており、綺麗な花を咲かせていました。


 
林道の途中から踏み跡へ逸れ・・・


 
林の中の斜面を下ってゆくと・・・


 
急に視界が開けて、目の前に白く濁った川が流れる河原にたどり着きました。今回の目的地に到着です。
ここは温泉ファン、とりわけ野湯愛好家の方にとっては超有名であり、九州のみならず西日本最大の野湯地帯と言っても過言ではないでしょうから、今回の記事で地名を秘匿したところで、当記事をご覧の方はもう既に「あそこだな」とお気づきのことと思います。


 
 
この広い河原では全体的に活発な地熱活動が露呈しており、あちこちで真っ白な蒸気と火山性ガスを噴き上げながら、熱湯をフツフツと煮えたぎらせています。


 
いくつもある熱湯湧出箇所のひとつに温度計を突っ込んでみたら、88.8℃という末広がりのゾロ目が表示されました。これは目出度いぞ。なお水素イオン濃度はpH2.44ですので、ここで湧く温泉は酸性硫化水素泉といえるでしょう。結構な高温ですから、卵を持参したら温泉卵が作れるでしょうね。


 
川が白く濁っているのは、硫黄泉の温泉が川水に混じっているため。場所によっては川水と熱い温泉が混じってちょうど良い天然の湯船が出来上がっていますので、適当なところを見つけて野湯を楽しむことができるんですね。実際に、この地熱地帯の川下で十分な深さを有する湯たまりに遭遇したので、そこで入浴してみました。ウヒャーッ、最高だ!


 
今度は川を遡って上流方へ行ってみたところ、もっと入浴に適した湯だまりを発見。手で石を移動させて湯だまりを深くし・・・


 
もちろんその湯だまりでも湯浴みしました。当地は前々日に記録的な大雨に見舞われた影響なのか、川の水かさが多く、この湯だまりも水の流入が多くて34.7℃というぬる湯だったのですが、抜けるような青空が広がっているこの日はポカポカ陽気で絶好の野湯日和ですから、むしろこのくらいの温度の方が気持ち良いんです。しかも適度な風が吹いていたので、硫化水素ガスの滞留も心配無用。あまりに極上であるため、この湯だまりで1時間ほど長湯してしまいました。

九州の大地の恵みを思う存分楽しむことができる、記念日を祝うに相応しい素晴らしい野湯でした。



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