私たちの仕事はどういう規定がされてるの？

沙耶　　私たち客室乗務員って機内でサービスだけやってるように
　　　　　見られがちだけど、第一の任務は保安要員だって言われて
　　　　　るでしょう？
　　　　
亮子　　毎年、厳しい緊急訓練受けさせられてて、それに合格しない
　　　　　と飛べないしね・・。

沙耶　　それって何か、法的な規定があるの？

亮子　　客室乗務員の任務についての規定は国際民間条約にあるのよ。
　　　　　その中に「航空機には、客室の保安を担当する客室乗務員を
　　　　　配置すること」が義務づけられてるの。

沙耶　　日本の法律では？

亮子　　航空法で、各航空会社に対し「客室乗務員の保安上の職務、
　　　　　編成、訓練など」に関して求めてるのよ。

沙耶　　じゃあ、「客室乗務員は若い女性がいい」なんて会社が言う
　　　　　のは私たちの仕事をちゃんとわかってないってことね。

亮子　　まだまだそういう遅れた考えの管理職は多いわよね・・。
　　　　　外国では、男性客室乗務員も多いし、４０代、５０代の客室
　　　　　乗務員もたくさんいるわ。

沙耶　　日本では、ANAでも平均勤続年数はたった６年だそうよ。新規の
　　　　　航空会社だともっと短くて、健康で定年まで働ける職場とは
　　　　　とても言えない状態ね。

亮子　　今、JALでは「ベテランには辞めてもらう」と言わんばかりの
　　　　　フライトはずしや、退職のプレッシャーをかけてるけど、
　　　　　経験豊かな人たちを追い出しておいて、いったい「安全第一」
　　　　　はどこへ行ってしまったの？と言いたいわ！
　　　　　
沙耶　　客乗だけでなく、乗員も整備士も、ベテランの人たちはこれまで
　　　　　JALの安全を支えて一生懸命がんばって来たんだものね・・。
　　　　　放漫経営と行政の犠牲にならないで、これからも頑張ってほしい
　　　　　わ！



　　　

イヤイヤ出した退職届けは、撤回できますか？

美奈子　　　どうしよう、もう手遅れだわ・・！

ひげ博士　　どうしたんじゃ、何をオロオロしておる？
　
美奈子　　　私・・、希望退職面談で「そんなに言うんなら辞めます！」って
　　　　　　言っちゃったの。本当は辞めたくなかったんだけど、つい・・。

ひげ博士　　なるほど、よくあるケースじゃの。　心配はいらんよ。民法９５条、
　　　　　　　９６条は、あんたのような人のためにあるんじゃ。

美奈子　　　何ですか、それ？

ひげ博士　　民法９５条には「意思表示は法律行為の要素に錯誤があった時には
　　　　　　　無効とする」とある。今、JALは労働者を自発的な退職に追い込もう
　　　　　　　としているが、整理解雇基準の問題がそもそも客観的合理性に欠けて
　　　　　　　おる。

美奈子　　　そういえば新聞にも『整理解雇は一時帰休や希望退職の年齢枠を広げ
　　　　　　　たりとかの回避努力をした上でなければ、やってはダメ』ってあったわ。　　　　　　

ひげ博士　　そうじゃ！　にもかかわらず、自分は会社が示した基準に該当してる
　　　　　　　から、もう整理解雇になってしまうと思い込んで、会社の退職勧奨に
　　　　　　　応じてしまう。こんなケースを法律的に言えば、「退職の意思表示に
　　　　　　　要素の錯誤がある」というんじゃ。

美奈子　　　じゃあ私の場合、本当は辞めたくなかったのに「辞めなきゃ」と思い
　　　　　　　こまされた・・、これは無効なんですね？

ひげ博士　　そうじゃよ。それと民法９６条というのがある。これは、「詐欺又は
　　　　　　　脅迫による意思表示は取り消すことができる」というものじゃ。
　　　　　　　
美奈子　　　私たちはスタンバイにさせられてるけど、ベテランの乗員さんたちは
　　　　　　　白紙のスケジュールを渡されて、心理的に圧迫を受けてるって聞いて
　　　　　　　ます。それも本当にひどいですよね・・？
　　　　　　　　
ひげ博士　　そうしてストレスを与えた上で、たとえば面談で「あなたは整理解雇
　　　　　　　基準に含まれてるんだから、もし目標数に達しないと、該当者の上位
　　　　　　　になります」なんて事を言われたら、それはここで言う『脅迫』に当た
　　　　　　　るんじゃよ。

美奈子　　　そうなんだ！　じゃあ本心ではないのに辞めますと言ってしまった人は、
　　　　　　　法律で救われるんですね！

ひげ博士　　あんたの本心を大事にせにゃいかんよ。今まで仕事が好きで一生懸命
　　　　　　　やってきたんじゃなかったのかい？
　
美奈子　　　私、この仕事が好きで、ずっと続けたかったんです。お客様に喜んで
　　　　　　　頂くのを励みにやってきたんです。　やっぱり私、辞めたくない・・。

ひげ博士　　それじゃあすぐに組合に行って、一緒に撤回してもらうことじゃ。組合は
　　　　　　　あんたたちのために身体を張って昼も夜も頑張っておる。

美奈子　　　わかりました。本当にJALを再建させるためには、今のベテランを切る
　　　　　　　やり方はマイナスになると思ってます。私たちで健全なJALを築くため
　　　　　　　にやっぱり残って頑張りたいです。　ひげおやじさん、ありがとう！

ひげ博士　　わしはひげ博士じゃ！ まあいい、頑張るんじゃぞ・・・！

「二次破たん」ってあるの？

JALの職場では、希望退職に応じさせるため「二次破たんが
あるかも・・」との話を管理職がしています。

本当にそうでしょうか？

「二次破たん」とは、一義的には資金が足りなくなる状態です。
２０１２年までにJALの二次破たんが懸念されるタイミングと
して例えば「更生計画が許可されない場合」を考えてみましょう。

再生計画に対し債権者の過半数の反対にあった場合は再生
計画が許可されません。その場合はJALは二次破たんし、
清算に向かうことになります。

この時点の二次破たんの影響はどのような事が想定されるでしょう
か？
　まず債権者（主に銀行）は、更生計画では87．5％（5215億円）の
再建放棄を求められていますが、残りの12.5％（745億円）が更に
不良債権（債権放棄）になります。また、更生債権を含めると更に
数百億円の損害が出ることになります。

　また、政府（国）への影響はどうでしょうか？
現在、様々な事前調整によってJAL便はすべて運航されていますが、
二次破たんとなった場合は、運航の継続が不可能になります。

その場合、利用者・国民に与える影響は、経済への影響も含めて
甚大なものとなります。報道によると、財務省が試算した経済への
影響は、数十兆円にものぼると言われています。

この他、金融機関によるリファイナンスがされない場合等も考え
られますが、経済へのマイナス影響は上記の通りです。

これらの悪影響を鑑みると、どの利害関係者も「二次破たん」を
望んではいません。

また、雇用を確保したとしても、JALが二次破たんすることは
ありません。弁護士も「解雇しなければJALが維持できませんと
いうことにはならない」とはっきり言っています。

航空産業の経営基盤は「安全」です。その安全を担うのは働く
人たちです。そこを削減しベテランを追い出すことが、JALの
将来にとってどうなのかが今、問われています。