見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

不折コレクション、ベストセレクション。(書道博物館)+通り過ぎの子規庵

2010-12-30 12:24:08 | 行ったもの(美術館・見仏)
台東区立書道博物館 開館10周年記念『不折コレクション、ベストセレクション。』(2010年10月9日~12月23日)

 開館10周年を記念して、館蔵の中村不折コレクションから、選りすぐりの中国書画や古写経などを展示。いやほんとに、区立の博物館に、こんなにすごいものがあっていいのかと唸るようなセレクションである。1・2階吹き抜けの大きな展示ケースを飾るのは『広開土王碑』の第1面、第2面。しみじみヘンな字体は「古隷」と言うそうだ。調べると、「波磔(はたく)がない」とか「篆書の円折を省いて直とし横とした」とか、難しい説明が並んでいるが、要するに、マッチ棒を並べて作ったような、単純素朴で、遠目にも読みやすい字体である。大きな石碑に長文を刻むにはふさわしかったのだろう。

 『急就章塼』は、後漢時代(3世紀)の塼(せん、焼成レンガ)に文字学習のテキストの冒頭を刻んだ珍しいもの。当時の文字資料としては多数の竹簡が知られるが、幅の狭い竹簡に書かれる場合とは、書体が全く異なる。文字の姿って、メディアに影響(制約)される点が大きいのかなあ、と思う。

 いつもは「書」に特化したこの博物館の展示だが、今回は絵画も出ていた。米芾って画も描くひとだったのか、と今さら再認識。筆の腹を押しつけた点描で山容を描いている。こんな描き方をする画家が日本にもいたなあ、と思ったが、村上玉堂だったかしら(訂正:浦上玉堂)。明代の画家、辺文進の花鳥図は、鳥の表情(目つき、及びポーズ)が人間くさくて、親しみが持てる。いろいろ調べていたら、台湾の故宮博物院の楽しいサイトが見つかった。→辺文進三友百禽特展(日本語解説も詳しい)。

 中村不折記念室には、正岡子規の書(俳句、手紙)も。『遼左画稿乙集』は、不折が子規とともに日清戦争に従軍記者として清国に渡った際のスケッチ集である。展示箇所には、中国の看板、風景、雑器などが細密な筆で写されていた。素麺屋の看板に「上々面々 蹙雪欺霜」とあるのが面白い(不折も面白かったのだろう)。大連の天后宮と読めるスケッチもあった。

 この日(12/23)、斜め向かいの子規庵では、今年も蕪村忌(12/24)に合わせて、子規の好きだったココアの振る舞いが行われていたが、人が多そうだったので遠慮する。塀にはられた『坂の上の雲』の大きなポスターを横目に、静かになったらまた来ることにしよう、と思う。余談だが、先日読んだ『チョコレートの世界史』によれば、ココアは、森永製菓がロウントリー社と提携して輸入販売していたという。森永が国産ココアの製造を始めるのは1919年だそうだから、子規が飲んだのはロウントリー社製だろう。まだ滋養強壮に効く「薬品」という認識が強かったのかもしれない。

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