見もの・読みもの日記

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フランドル絵画の宇宙/ブリューゲル展(東京都美術館)

2018-03-27 22:55:15 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京都美術館 特別展『ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜』(2018年1月23日~4月1日)

 16、17世紀のヨーロッパにおいてもっとも影響力を持った画家一族のひとつであったブリューゲル一族の作品と、同時代のフランドル絵画約100点を展示する。最も著名はピーテル・ブリューゲル1世(父)のほか、ピーテル・ブリューゲル2世(子)、ヤン・ブリューゲル1世(父)、ヤン・ブリューゲル2世(子)、さらに次の世代の画家たちも紹介されている。

 私はフランドル絵画の奇怪な空想が好きなので、ピーテル・ブリューゲル1世の下絵によるエッチング『最後の審判』や『最後の戦い』は堪能した。サカナやフクロウの怪物、大好きだ。小品だが、会場がそんなに混んでいなかったので、近くでじっくり眺めることができた。ヤン・マンデインという画家の油彩画『キリストの冥府への降下』はヒエロニムス・ボスの地獄絵風。暗闇の中で真っ赤な炎が燃え、怪物が空を飛ぶ。錫杖(いや杖)を持ったキリストが光に包まれながら降下してくるのだが、印を結ぶような手つきといい、地蔵菩薩っぽかった。ファン・クレーフェの『バベルの塔』など、フランドル絵画は、いくつかのモチーフを共有して、繰り返し作品化している。

 自然の風景を描いた作品は、やはりモチーフの共有なのか、写生なのか、よく分からないが、とにかく美しい。フランドル絵画には「緑」をあまり感じない。地面は茶色く、深い緑陰は黒に近い。そして遠方の森と山並みは限りなく青に近い。このはっきりした色彩感が、現実のフランドルの自然を知らない私には、とても幻想的に見える。またヤン・ブリューゲル1世、2世には、紙にインクで描いたスケッチ画が多数残っていて、とても素敵だった。

 ヤン・ブリューゲル1世、2世には『ノアの箱舟への乗船』や『地上の楽園』をモチーフにした寓意的な油彩画も描いた。長いたてがみの白馬をはじめ、つがいの鳥や動物たちが仲良く集っている。『ルドルフ2世の驚異の世界』展で見た絵画に似ていると思ったが、あちらはルーラント・サーフェリーの作品だった。

 花の静物画も多数展示されていた。花の種類はよく分からないので、花瓶や花籠に注目して見ると面白かった。ヤン・ファン・ケッセル1世の『蝶、カブトムシ、コウモリの習作』2点は、どちらも大理石に油彩で描いたもの。本物の蝶やトンボを大理石に貼り付けたのかと思うほど、真に迫っている。

 最後に農民たちの生活風俗を描いた作品群。本展の目玉である、ピーテル・ブリューゲル2世の『野外での婚礼の踊り』(個人蔵)が来る。これもピーテル・ブリューゲル1世以来、繰り返し描かれている作品だ。男も女も慎みを忘れて、乱痴気騒ぎの楽しみ。この作品もそうだが、本展の出品作は、ほぼ全て「個人蔵」であることに驚く。一体どなたの持ちもの?

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