見もの・読みもの日記

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年末の東博常設展と特集いくつか

2020-12-22 22:33:44 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京国立博物館・平成館企画展示室 特集『世界と出会った江戸美術』(2020年11月25日~2021年1月11日)

 東博は12月26日(土)から休館なので、たぶん年内最後になるだろうと思いながら、常設展示といくつかの特集展示を見に行った。本展は、海外への自由な往来が禁止されていた江戸時代、厳しい制約のなかで日本とヨーロッパの間を多くの交易品、遠い国々の技術や表現に学んだ美術工芸品を紹介する、企画趣旨に「世界的な鎖国状態の最中にある現在、改めて江戸時代の人びとに思いを馳せ」というのが、今年らしい。

 だいたい見たことのある有名な品が多く、栃木・龍江院のエラスムス立像や長崎奉行所旧蔵の『悲しみの聖母(親指のマリア) 』、『IHS七宝繋蒔絵螺鈿書見台』など。亜欧堂田善の『浅間山図屏風』を久しぶりに見ることができて嬉しかった。青の濃淡だけで洋風の草花を描いた(イギリスのファブリックみたい)『草花図扇面』は安田雷州筆。郎世寧の『準回両部平定得勝図』は東博も所蔵しているのだな(岡田三郎助旧蔵)。シーボルト(1796-1866)が使った携帯用の医療器具一式(外科道具差)は生々しくて怖かった。

■ 東洋館8室 特集『中国近代の上海-海上派の書・画・印-』(2020年11月17日~12月23日)

 アヘン戦争後の南京条約(1842年)を機に開港した上海では、近代化と西洋文明の流入が急速に進み、当時の上海で活動した芸術家たちは、海上派(かいじょうは)や海派(かいは)と称され、個性的な作品を生み出した。絵画では、私が知っている名前は趙之謙と呉昌碩くらい。書は、李鴻章があったり翁同龢、鄭孝胥、康有為などがあったりするので、激動の歴史を思いやってしみじみする。

■本館14室 特集『館蔵 珠玉の中国彫刻』(2020年12月1日~2021年2月21日)

 小さい作品や破損・補修が多い作品など、東洋館で展示の機会がないものの一部を本館で公開。そうだなあ、前漢時代の陶俑なんて、あまり東博で見た記憶がない。よい試みだと思う。早崎稉吉が洛陽で入手したという菩薩立像(東魏時代)は神秘的で素敵。山西省・天龍山石窟(行ったなあ!)に由来する仏頭のいくつかは原位置(第〇窟)が判明しており、元来の仏像の写真とともに掲げられているのは痛々しくて、言葉を失った。

■本館15室 特集『表慶館の建築図面』(2020年12月8日~2021年2月14日)

 表慶館は皇太子嘉仁親王殿下(のちの大正天皇)御結婚の御約を記念して奉献された建物で、設計は片山東熊(1853-1917)が担当した。確か、皇太子はあまりお気に召さなかったのではなかったかな、と思って、あとで調べたら、かつて藤森照信先生がそんな話をしていた(2009年の講演会)。別の機会に藤森先生から、建築図面にはチェックした技師が印鑑を押すことがある、という話を聞いたこともあって、展示品を注意深く眺めていたら「東熊」のハンコを見つけた。近くに、もう2つ違うハンコが押してあったが解読できず。

 このほか、本館11室(彫刻)には、伝・源頼朝坐像(鎌倉時代)が来ていたけれど、長谷寺の地蔵菩薩立像、浄瑠璃寺伝来の十二神将立像(未神、巳神、戌神)、子嶋寺の十一面観音菩薩立像、薬師寺の十一面観音菩薩立像と、奈良の雰囲気が濃厚だった。

 本館18室(近代絵画)には小林古径の『異端(踏絵)』が出ており、長崎奉行所旧蔵の板踏絵を見た直後に見ると、甘美なセンチメンタリズムを通り越して、本当に胸の痛む気持ちになった。


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