見もの・読みもの日記

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関西旅行9月編(3):西国三十三所展(奈良博)

2008-09-16 00:10:47 | 行ったもの(美術館・見仏)
○奈良国立博物館 特別展『西国三十三所-観音霊場の祈りと美』

http://www.narahaku.go.jp/

 この日は、近鉄奈良駅で友人と待ち合わせ。1人は京都在住、1人は東京からやってくる。いつもの見仏仲間である。9時集合のところ、8時に携帯が鳴ったので、遅れる連絡かと思いきや、8時45分には着くというので、私も慌てて駅に向かう。7月の『法隆寺金堂』展がいまいちだった分、この『西国三十三所』展には期待大なのだ。

 奈良博には開館30分前の9時頃に到着。「誰も並んでいなかったら淋しいよね」と言い合っていたが、チラホラと物好きの姿。ほどよい盛り上がり方である。開館を待つ間、警備のおじさんが「おはようございま~す」と声をかけながら、出品目録と会場案内図を配ってくれる。だから、奈良博は好き! 東博はしませんね、こういう気配りサービス。会場図を見ながら、最初にどの展示物に向かうか、狙いをしぼる。

 友人が「やっぱり清水寺の千手観音(展覧会のポスター、チラシになっている)でしょう」と言うので、入場後は、そこに直行。京都・清水寺の奥の院の御本尊として「長らく秘仏とされてきた」だけあって、ほとんど損傷がなく、美しい。2003年に243年ぶりに寺内で開帳され、「寺外での公開はこれが初めて」と解説にあった。私は、2006年に横浜のそごう美術館で行われた『奥の院御本尊開帳記念・京都清水寺展』でも千手観音を見た記憶があるのだが、調べてみたら、これは御本尊の御前立ちだった(そごう美術館が、まだ展覧会のホームページを残していたことに感激)。ご本尊は、よく見ると、光背の化仏が、ひとつひとつ姿が違う。僧形もいれば女性っぽいのもいるし、立ち上がって笛を吹いているのもいる。実は、化仏が観音の三十三応現身を表しているのだそうだ。なるほど、それもあって『西国三十三所』展のシンボルキャラクターに選ばれたわけだな。

 隣りの十一面観音立像(紀三井寺)も、春風駘蕩とした雰囲気がよかった。ひときわ巨大な十一面観音(華厳寺)は、頭頂面の左右に腕のようなものがあって、ポニョがバンザイしているように見える。しかし、いちばん我々の関心を引いたのは、兵庫・一乗寺の観音菩薩立像。50センチほどの小さな銅像だが、「頭部の大きさに比して著しく手足の小さい全体のプロポーション」は、ちょっと想像を絶したインパクトがある。私はずっと考えていたのだが、吉田戦車のキャラクターに似ていないかしら。あとで出品目録を見直して「あれって重要文化財だよ」「うそ!!」とまた盛り上がってしまった。業界では有名な仏像なのだろうか。宣伝用バナーフラッグに写真が使われているのも見つけた(欲しかった~)。

 第1室のあとは、絵画や文献が中心になるのかなあ、と思っていたが、そのあとも要所要所に仏像が配されていて、うれしかった。小品だが美しい岡寺の菩薩半跏像とか、気合入りまくりの華厳寺の毘沙門天とか。何度も行っている六角堂に都ぶりの毘沙門天があるとは知らなかった。神奈川・龍峰寺の千手観音は、2本の腕を頭上に組む清水寺式との関連で出品(調べたら、海老名在。たぶん一度行っているが、拝観できたんだっけ?)。

 絵画作品も、滋賀・長命寺が所蔵する元代の仏画『勢至菩薩像』、奈良博蔵の高麗仏画『水月観音像』などの名品を堪能したが、あとで図録を見たら、ほかにも名品・有名作品がぞろぞろ出品されていたことが分かった。絵画は展示替えが多いので、1回では半数以下しか見られないのが残念。

 後半は、巡礼にかかわる参詣曼荼羅、名所図会、地図などを取り上げる。会場の床に西国三十三所の絵図を貼り付け、「歩いて体験してみましょう」というのは、奈良博ではあまり無かった試み。同行の友人のひとりは、既に三十三所巡りを達成しており、私も半分以上は回っているので、「この寺は駅から至近」「ここのルートは厳しい」など、ウンチクを語り合うのも楽しかった。

 いったん外に出て、柿の葉寿司の平宗で昼食。また戻って、常設展示を楽しむ。今回の収穫は水牛の頭(大威徳明王の乗りものらしい)! 浄瑠璃寺の馬頭観音もよかった。かくて、予想どおり奈良博を後にしたのは夕方4時過ぎ。京都駅に出て、冷たいビールで喉をうるおし、10月の粉河寺のご開帳、来年1月の小浜の『地域の秘仏』展など、今後の予定を語り合い、散会したのである。
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