見もの・読みもの日記

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夢は世界を駆けめぐる/BIOMBO屏風(サントリー美術館)

2007-09-27 23:33:21 | 行ったもの(美術館・見仏)
○サントリー美術館 開館記念特別展『BIOMBO/屏風 日本の美』

http://www.suntory.co.jp/sma/

 9月の第1週に行ってきた展覧会なので、いま、記憶に頼りながら書いている。8月末に「出品作品リスト」を見たら、大幅な入れ替えがあるので、これは、最低でも前半と後半の2回は行かねばなるまい、と思ったのだ。

 前半でどうしても見たかったのは、サントリー美術館所蔵の『泰西王侯騎馬図屏風』である。同美術館の赤坂見附時代から、絵葉書やグッズを通して、おなじみの作品だが、実は一度もホンモノを見たことがなかった。ようやく巡ってきた機会を逃すわけにはいかない。そう思って、会場に入ると、いきなり、この迫力ある作品と対面することになった。

 金地を背景に、馬に乗った4人の西洋人が大きく描かれている。いずれの人物も王冠を戴き(右端の1人はターバン)、豪奢な衣装に身を包み、槍や王笏を手に持つ。私は左から2番目の赤い衣装の人物がいちばん好きだ。重たげな黒マントをひらりと(というより、ばさりと)翻し、正面を向いたところである。カッコいい。同美術館のコレクションデータベースの解説によれば、ギーズ大公フランソワ・ド・ローランか、あるいはカール五世である由。4人の王侯が誰であるかは、いろいろ論じられているが、定説はないそうだ。

 少し興奮から醒めると、使われている色が意外と少ないことに気づいた。黒、金、赤、緑が主体で、青がない。そういえば松本典昭さんの『パトロンたちのルネッサンス』にも、青(ウルトラマリン)がいかに特別な色だったかが述べられていたっけ。それから、人物に比して馬が意外と小さいように思った。波打つ巻き毛のタテガミが可愛いけれど。馬の姿態は、たとえば『随身庭騎絵巻』に比べると、ずいぶん生硬である。

 この屏風が小さな銅版画集をもとに作られたらしいことや、キリシタン大名蒲生家を通じて会津若松の鶴ヶ城(!)に伝わったものであることも初めて知った。

 それから、京都国立博物館の『山水屏風』(平安時代=11世紀後半! 草庵に維摩居士ふうの隠士)や、金剛寺の『日月山水屏風』(黒いレースのような松の木と水波)にも感激したのだが、話をはしょって『レパント戦闘図』に進もう。

 これは昨年、国立歴史民俗博物館の『歴史のなかの鉄炮伝来』で偶然、出会ったもの。そのときは、鉄砲の構え方にばかり興味が集中してしまったが、あらためて全体を眺めると面白い。画面の左から攻め寄せるローマ軍の兵士は、槍ぶすまの中で鉄砲を構えている(こんな接近戦じゃ撃てないだろう、と思う)。右側のトルコ軍は押され気味の形勢。ターバン姿の男たちの間に、かなり多くの女性が加わっている。兵士の乗り物であり、重要な戦力であるはずの象が、丸っこくて妙に愛らしいのがおかしい。背景には、海に浮かぶ帆船と海岸の要塞らしき高い塔。ジブリのアニメーションを思い出すような、童話的な光景である。

 南蛮屏風以外でも、桃山~江戸初期(17世紀)の屏風は抜群に面白い、と思った。洗練の極みみたいな『誰が袖図屏風』もあれば、享楽的な風俗を赤裸々に描いた『邸内遊楽図屏風』もある。もうひとつ、私がどうしても見たい作品『豊国祭礼図屏風』は、展覧会後半に出品される。また来なければ。
コメント
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