「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

ロシア人の寿命が短い理由

2017年04月03日 | 復刻シリーズ

今回の「復刻シリーズ」は6年前に投稿した「ロシア人の寿命が短い理由」です。それでは以下のとおり。

ピアニストの「エフゲニー・キーシン」、ヴァイオリニストの「ワディム・レーピン」ともにまだ40歳前後と芸術家としては比較的若年ながらも現代のクラシック界を背負って立つほどの逸材だが、いずれもロシア出身
というところが共通項だ。

文学界の頂点に位置するドストエフスキーをはじめ昔から幾多の優れた芸術家を輩出してきた「芸術大国ロシア」。

ただし日本ではロシアという国に対してあまりいいイメージを抱かない方が多い。自分もそうだ。

第二次世界大戦終了時に日ソ不可侵条約を踏みにじって、まるで火事場泥棒のように北方領土を強引に奪った事実は歴然として残っている・・・。

表と裏の顔の落差が激しそうな国だが、なにしろ興味のある国なので何でも知っておこうと日頃からそれとなくアンテナを張っているところに、なかなか面白い本が見つかった。

「ロシア人しか知らない本当のロシア」(2008.11、日経新聞社)

                                      

著者の「井本沙織」さんは、モスクワ生まれ。ソ連崩壊直前の1991年に中央大学の研修生として来日、98年経済学博士、02年日本に帰化、05年より内閣府、06年大和総研入社とある。

完璧な日本名だが本書を通読してみると生粋のロシア人のようで、道理で
現代のロシアの実状を知るには実に分かりやすいと思える書籍。

第一章 オンリーイエスタデイ 様変わりした祖国

第二章 ロシア経済を救ったのは火星人?

第三章 ソ連の風景 ロシアの暮らし

第四章 新生ロシアの祝祭日事情

第五章 ロシアは資本主義国になったのか

この中で一番興味を引かれたのは第三章の中の「ロシア人はなぜ寿命が短いのか」というくだり。

ロシアの人口は1993年の1億4860万人をピークに減少傾向にある。直近の2007年1月時点では1億4220万人で1年間で56万人減少した。

国際連合の世界人口予測(06年)によると、ロシアの人口減少のスピードは日本を上回って推移し、2050年時点では1億783万人とピーク時の約4分の3に縮小する。21世紀末には半減するという悲観的な予測もある。

その人口減少が加速している要因だが出生率低下という先進国共通の問題だけではなくアフリカ並の異常に高い死亡率
が挙げられる。

ロシア人の平均寿命は男性がおよそ59歳、女性が72歳で日本の79歳、85歳と比べて短命ぶりが際立っている。

1965年~2005年の40年間で日本人男性の平均寿命は10歳延びたが、ロシア人男性は逆に5歳短くなっている。

高死亡率の原因は一概には言えないがアルコールが原因の一つであることは明白。

一人あたりの年間消費量は英国と並ぶ水準だが、英国はビールが主流なのにロシアはウオッカなどのスピリッツ(蒸留酒)が70%超でアルコール度数が高い酒の大量摂取が心臓血管疾患、肝硬変の要因になっている。

おまけにロシアは離婚率も高いがその最大要因もアルコール中毒が51%を占めている。

ソ連解体後の社会・経済的な混乱に伴うストレスからの逃避による飲酒、それと「ウオッカが安すぎる」ことも一因とか。

要約すると以上のとおりだが、あの広大な国土に人口が日本と同じくらいというのがまず驚きだが、何といっても男性の寿命が日本とは20歳も違っていて59歳というのは要注目
である。

平均的なモノサシになるが自分などはロシアに生まれていればとっくの昔にこの世に存在していない勘定になるのでホントに身につまされてしまう。

本書は女性の視点から書かれたものなのでアルコールの摂取に厳しい見方をしているが、ああいった厳寒の地ではアルコールを止めろといっても皮下脂肪に恵まれた女性は別として男性はとても無理だと思う。

以前のブログ
「寒い地域でイスラム教が広まらなかったのはなぜ?」で書いたとおり、厳寒地では身体を中から温めて寒さを凌ぐ習慣が根強くアルコールは生活必需品並で、豚肉のタブーには耐えられても禁酒というタブーにはイスラム教といえども耐えられなかったというのがその理由だった。

結局、アルコール摂取という高いハードルを前にしてロシアにおける高死亡率改善の難しさが伺えるところだが、こういう状況を踏まえてロシアの男性は「短命」
に対してどういう人生哲学を持っているのだろうかとつい気になってしまう。

厳寒、荒涼たる大地などの厳しい外的要因と否応なく短く終えてしまう人生は「芸術」などへの内省的なアプローチの密度の濃さと決して無縁ではないような気もする。

そういえばロシア出身の芸術家といえば男性に限られており、女性はいっさい見かけないようだが自分が知らないだけかな~。


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オーディオ訪問記~2017・3.29~

2017年04月01日 | オーディオ談義

先月(3月)中旬に初めて我が家に試聴にお見えになったKさんとMさん(大分市内在住)。

ブログにも掲載していたとおり、お二人とも年期の入った真空管アンプビルダーさんだったが、辞去の際に「今度は是非、お宅のシステムを拝聴させてください。」とお願いしていたのだが、ようやく待望のその日がやってきた。

せっかくの機会なのでオーディオ仲間のYさん(別府市)ともどもKさん宅へお伺いすることにした。

丁度、大分市と別府市の境界線近くにお住まいで、クルマで25分ほどの地点で落ち合ってご自宅まで案内してもらった。

Kさんは50年以上にもなるアンプ製作のベテランでオークションでの評価も700件以上だからたいへんなものだが、ご自宅のすぐそばに独立した「真空管アンプ製作の専用ルーム」を作られていた。まったく贅沢の極み~(笑)。

さっそくシステムを聴かせていただいたが、二つあって一つはアルテックの「A7」、もう一つは三菱のスピーカーでずっと昔、NHKがモニタースピーカーとして使っていた型番だった。

駆動するアンプはプリ、パワーともいずれも自作だが、パワーアンプは2台あって、セトロンの300Bシングルと大型真空管「845シングル」。

「百聞は一見に如かず」で、画像の方が分かりやすい。

      

これまで他家の音を聴かせていただいて、最初からフィーリングが合うことは滅多にないのだが、この音は別格で周波数レンジは広いし、情報量がとても豊かだし、ケチのつけようがない音とはこのような音を言うのだろう。

初めに「300B」アンプ、次に「845」アンプを聴かせていただいた。

大出力アンプになると、どうしても大味というイメージがあって「真空管アンプはお金とパワーをかければかけるほど音が悪くなる」という法則があり(笑)、その伝で「845」にはあまり期待していなかったがどうして、どうして・・。

中低音域の厚みと重厚感は小出力アンプにはとても望めないもので「845」を大いに見直した。しかし、製作時には1000V近くのとても大きなプレート電圧がかかるので、巷の噂では感電死覚悟だそうで細心の注意を要するようだ。

「このアンプは出力トランスに何を使っているんですか?」

「はい、調所電器(山形県)製作のトランス(リスト)です。先代の社長さんの時代のもので300Bアンプにも使っていますよ。今やプレミアムが付くほどの稀少品です。」

「エッ、我が家のPX25アンプも調所電器の先代の社長さんが作ったリストのトランスですよ!道理で何だか聴き慣れた音だと思いましたよ。」


音楽ソースはCDとレコードと両方聴かれているが、どちらかといえばレコードがメインでNHK仕様のデンオンの大型レコードプレイヤーシステム(右側)には度胆を抜かれた。

こんなプレイヤーなら自分も鳴らしてみたい(笑)。

同行したYさんもとても気に入られたご様子で、真空管アンプを自作されるとあって、細かい技術的な話に大いに話が弾んだ。

Kさんはアンプ系とあれば何から何まで修繕されるそうで、あのゲルマニウム・トランジスターを使った往年の名器JBLの「SA600」パワーアンプの修繕が済んだばかりとのことだった。

2時間ほどたっぷり堪能させていただいて「今後ともよろしくお願いします。」と辞去したが、帰りの車中でYさんがポツリと洩らされたのが「今日はいい日でした。」

どうやら、身近にアンプづくりのノウハウの相談相手ができて良かったらしい(笑)。


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