「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書コーナー~至高の音楽~

2023年04月01日 | 読書コーナー

「永遠の0」「海賊とよばれた男」などのベストセラー作家「百田尚樹」さんの著作「至高の音楽~クラシック永遠の名曲~」の131頁に「文学は音楽に適わない」の言葉があった。

                       

これが音楽家から発せられた言葉なら「我田引水」なので信用できないが、負の立場にある文学者側の言葉となると大いに信憑性が増してくる。

日頃から暇つぶしに読書と音楽に勤しんでいるが、ややキザなことを言わせてもらうと「文学=多角的なモノの見方を養う」、「音楽=美的感性を磨く」ものだと思っている。したがって、これまでどちらかの優位性なんて意識したことはなかったのでこの言葉はなかなか新鮮に感じた。

「文学」は読解力を通じて「理詰め」で迫ってくるし、その一方「音楽」は「情緒的」に人の心に浸透してくるし、で、どちらが好きか?と問われたら
やはり音楽かなあ・・。

文学も音楽も鑑賞するうえで脳を使うのは同じだが、前者の方が理屈っぽくてハードなので歳をとるにつれ段々億劫になっていく~。

さて、本書を半日かけて読み上げたが、百田さんがこれほどのクラシック通とは思わなかった。常にクラシック音楽を鳴らしながらの執筆だそうで、ちなみに「永遠の0」のラストの執筆中は泣き濡れながら「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲をエンドレスで聴かれていたそうだし、レコード、CD合わせて2万枚の所蔵とは、恐れ入りました!

本書の狙いはクラシックをよく知らない読者とよく知っている読者の双方を満足させたいという狙いで、著者が愛してやまない曲目を一曲づつ8頁前後でもって紹介する形で展開されている。

クラシック通にとっては全25曲の顔ぶれがかなりポピュラーな面に片寄っているのもそのせいかな。折角なので10曲ほど順に挙げてみよう。この中で、一曲でもふと聴いてみようかという気になったら著者の狙いは成功である。ただし、興味のない方もおありでしょうからそういう方は読み飛ばしてください。

 ベートーヴェン「エロイカ」~不意に凄まじい感動が舞い降りた~

 バッハ「平均律クラヴィーア曲集」~完璧な音楽~

 モーツァルト「交響曲第25番」~天才がふと見せた素顔~

 ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」~当初酷評を受けた、20世紀を代表する名曲~

 ショパン「12の練習曲集」~超絶技巧の演奏でなければ真価は味わえない~

 ベルリオーズ「幻想交響曲」~失恋の苦しみが生んだ狂気と前衛の曲~

 モーツァルト「魔笛」~田舎芝居に附された「天上の音楽」~

 ベートーヴェン「第九交響曲」~聴力を失った後の「最後の戦い」~

 シューベルト「魔王」~最後にデーモンが顔を出す~

 ヴァーグナー「ヴァルキューレ」~新手法「ライトモティーフ」の麻薬的な魅力~

 パガニーニ~「24の奇想曲」~はたしてこれは純粋に音楽か?~

読後に印象に残った点を2点ほど挙げてみると、

1 「決定盤趣味」について

上記のそれぞれの曲目にはベスト盤も紹介されているが、著者は「決定盤趣味=この曲目の演奏の決定盤はこれだ」という決めつけをしないタイプで、CDで発売されるほどの演奏家なら、いずれも優れているはずとの“おおらか派”。芸術はスポーツではない。優劣を競うものではないし、数値化できるものでもないとのこと。

たしかに、「この演奏でなきゃダメだ」という見方もよく分かるが、自ら選択の範囲を狭めているだけなので音楽鑑賞に当たってはいろんな演奏の良い点を汲み取る幅広い包容力も必要だと思う。まったく同感です。

オーディオだって「絶対にこのブランドでなくてはいけない、絶対にこの真空管でなくては」とよく決めつける方がいるが、ま、別のものもそれぞれ何かしらいいところがあるので、柔軟性が一番。

「お前は攻守ところによってカメレオンみたいに変わるなあ!」なんて、どうか言わないでくださいな(笑)。

2 オペラ「魔笛」について

「またお前の好きな魔笛か、いい加減にしろ」と言われそうだが、こと魔笛となると黙っちゃおれない(笑)。本書の関連個所にこうある。(61頁)

「ひどい台本にもかかわらず、モーツァルトの音楽は言葉を失うほどに素晴らしい。魔笛こそ彼の最高傑作という音楽評論家は少なくない。モーツァルトは最晩年になると、音楽がどんどん澄みわたってきて、悲しみを突き抜けたような不思議な音の世界を描くようになるが、魔笛はまさしくそんな音楽である。曲はどこまでも明るく、軽やかで、透明感に満ち、敢えて恥ずかしげもなく言えば、もはや天上の音楽と呼びたくなるほどである。」

モーツァルトの音楽の本質を言葉で表現するのは難しいが、百田さんの「最晩年になると音楽がどんどん澄みわたってきて、悲しみを突き抜けたような不思議な音の世界」という表現には心から納得。

さすがに文学者の語彙は豊富で表現力が一枚も二枚も上だ。百田さんは「魔笛」が分かっている!

最後に、執筆中にクラシックを聞き流すという百田さんにならって、このブログを作りながら音楽をかけ流した。なにぶん、まだ寝静まった早朝(4時頃)なので我が家の「猛虎=寅年生まれの雌」を刺激しないようにひっそりと秘めやかな音での話。

そして発見!「AXIOM80」は小さ目の音の方が圧倒的にいい。


「ブルックナーの8番」(チェリビダッケ指揮:リスボンライブ盤)を聴き終えたところで、このブログがあらかた出来上がり。丁度1時間ってとこかな~(笑)。



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