高校野球の話だが、昨日(29日)の準々決勝で地元の「明豊高校」(別府市)が「6ー4」で近畿の雄「智弁学園」に打ち勝ち「ベスト4」に進出しました。素直にうれしいです!
家内によると、野球部員たちとすれ違うときはいつもきちんと挨拶するし、とてもいい子たちよ~。
この勢いで「深紅の大優勝旗」をと思うが、ちょっと虫が良すぎるかな~(笑)。
さて、このところオーディオがらみの話が続いているのでボチボチ「音楽ネタ」でもと、思っていたところ恰好の本が見つかった。
著者:エリック=エマニュエル・シュミット(フランス)、2021年1月、音楽之友社刊
ショパンを何とかしてうまく弾きたいという青年が師匠の「マダム・ピリンスカ」(ポーランド人)から非常にユニークな教え方をされるという物語である。
その教え方というのは次のとおり。
1 露
今週はピアノに触ってはいけません。そして、毎朝公園の芝生にひざまずいて露を落とさずに花を摘む練習をしなさい。露は花びらか葉っぱの上にのったままでなければダメ、余計な動きは禁物!
何故なら、あなたはピアノの鍵盤をまるで木こりみたいに叩いている。その指を献身的で、敏感で、知的で細やかな指に変えたいの。たった今から、私はあなたに体のデリケートさを要求します。
2 静寂
静寂を聴きなさい。寝室で気持ちを落ち着けて、呼吸を整えたら沈黙に耳を澄ますこと。ショパンは静寂の上に書いた。彼の音楽は静寂から生まれ、静寂へと戻っていく。そのように織りなされているの。沈黙を味わうこともできないあなたに、彼の音楽が分かるはずがありません。
3 波紋
公園に行って池の水面に波紋を描く練習をしてらっしゃい。そうすれば響きとは何か、あなたにも理解できるんじゃないかしら。水平に広がる滑らかな水面を静かに眺めて、そして穀物の小さな種を一粒投げ込みなさい。
水は揺らめくでしょ? その動揺が引き起こすこと、輪が浮き上がり、広がり、消えていくまでの時間を観察しなさい。けっして力んではダメ。そしてしっかり目を開けて見るのよ。
水のように液体になる練習をしなさい。波に逆らわず、しがみつかず、音と音の間の空間を感じ取って、その成り行きに身を任せて、自由と柔軟性の幅を広げるのよ。
4 恍惚
愛し合ってから(レッスンに)来なさい。あなたをほぐしたいのよ。ポーランドにこんな友達がいたわ。
マグダレーナというソプラノのオペラ歌手で、ミミやリュウ、蝶々夫人、マルグリット、マノンにもってこいの歌手だった。
がっちりした体型で、やり投げの選手みたいだったけど、まあそこは腕のいい衣装係がいれば何とかね・・。
彼女は舞台に立つ直前に愛し合ったときだけ、素晴らしい高音を出すことが出来たのよ。本当よ!この前提条件さえあれば彼女のシ♭(フラット)の高音はふっくらとして、肉感的で、輝かしく、神々しいまでの域に達した。でなきゃ、機関車の汽笛みたいだったわ。
そこで、彼女の夫のボグダンがどの公演にも付き添って、楽屋で彼女の高音のお支度をしたというわけ。彼女の契約はワルシャワ、ウィーン、ベルリン・・・と増え続けた。ボグダンは機械工の仕事を辞めて彼女の世話をしたの。
悪いことに彼女がワーグナーを歌い始めたもんだからボグダンの髪はどんどん薄くなっていった。
なぜなら、ワーグナーのオペラって何時間も大音響の噴火が続くけど場面が変わるたびに中断が入るから地獄のように大変なのよ。妻がきちんとこなせるように、ボグダンは休憩ごとにお膳の準備をし直さなければならなかった。
テストストロン過剰ね。セックスのやり過ぎは薄毛を促進するのよ。その後彼女は<ニーベルングの指輪>の契約にサインし、これがボグダンをやっつけた。心臓発作、脳卒中、車椅子、そして幕!
以上のとおりだが、1~3までは真面目な話で素直に頷けるが4については思わず「アハハ・・」と笑ってしまったが、もしかして実話かもしれないと思わせる信憑性がありますね。
ほら、芸術にエクスタシーはつきものでしょうが(笑)。
本書の中で一番印象に残った言葉を載せておこう。
「マダム・ピリンスカ、ショパンの秘密って何でしょう?」と青年。
「突き止めようなんてしないこと、ただ一緒にいるだけでいい秘密ってあるのよ。寄り添っていると自分が磨かれる、そんな秘密がね」
これまでショパンはあまり好きではなかったが、このショパン愛に満ち溢れた本書を読んで久しぶりに聴いてみる気になった。
「アンダンテスピアナートと華麗な大ポロネーズ」(クラウディオ・アラウ)
下降旋律がとても美しくてショパンの中では一番好きな曲目だが、たまに聴くとやっぱりいいですねえ(笑)。
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