表題の「~その3~」からの続きです。
☆ 6日(火)
この3月にKさんと一緒にお見えになったMさんも同じく大分市の方で、爾来、週に一度くらいのペースで交流が続いている。自作派でパワーアンプからチャンネル・ディヴァイダーまで何でもござれだが、とりわけプリアンプづくりに、凄腕を発揮されている。
名器として知る人ぞ知る「クリスキットのマークⅣカスタム」(プリアンプ)だが、テープモニター回路、バランス回路を外した改造機が大いに気に入ったので懇願して譲っていただき、その後も独自の試作品を次々に持参されてきて二人で楽しませてもらっている。
我が家ではレコードをいっさいやらないこともあって、ずっと以前のブログでプリアンプの存在価値に疑問を呈したことがあるが、今の心境では「良質のプリアンプ」なら使った方が断然いいと思っている。
ご都合主義でゴメンナサイ(笑)。
それはともかく、クリスキット・シリーズの生みの親の「桝谷」氏の説によると、プリアンプだけは「真空管」を増幅素子にしたものに限ると仰っている。
たしかに、これまでマークレヴィンソン(「No.26SL」)などの有名どころも織り交ぜていろいろ使ってきたが、個人的にはこの説に大いに賛成。
現在Mさんから2台お借りしており、この日は3台目(「12AX7」を3本使用)を持参されたが、クリスキットとは甲乙つけがたい出来栄えで「ほんとにいい音ですねえ」。
お伺いしたところによると「無線と実験」誌に記載された「疑似定インピーダンス型アッテネータ」を参考にした左右独立の「ボリューム」を使ってあるそうで、その辺の技術的な話は当方にはサッパリだが音質はたしかに際立っていた。
このプリアンプで、Mさんと例によってJBLの「LE8T」の聴き比べをしたが、「クラシックなら大きい箱の方に、ジャズなら小さい箱に軍配が上がる」とのことで引き分け~。
そして、次のお客様に移ろう。
☆ 7日(水)
小さな箱に入った方の「LE8T」の持ち主Sさん(日出町)のご登場である。テスト用に女性ボーカルのCD盤を持参されたのでまず小さな箱の方から試聴してみたが、ロック調の曲にすっかりノックアウト。実に小気味よく低音域が弾んでくるのだ。
音声信号に対する反応が早くて音の切れが抜群。「こういう音はまったくJBLの独壇場ですねえ」と、ほとほと感心した。総合的には「AXIOM80」に一歩譲るが、中低音域の質感はこちらの方が上だろう。
この時点で、迷いなくSさんから箱を譲ってもらうことを決めた。
あとはSさんに頼んで「LE8T」の入れ替え作業をやってもらった。お借りしていた「8Ω」仕様からこの度落札した「16Ω」仕様への交換。この際とばかり箱の内部を拝見させてもらったが、ていねいな内部補強をしてあって木材同士の接合にネジを1本も使わず、「ほぞ」を使ってあって本格的な大工さん並みの工作ぶりだった。
こういう風に箱がしっかりしているから低音域がカチッと締まって弾んでくるんだと納得。
最後に、Sさんから貴重な「LE8T」の資料をいただいた。
この中にオーディオ界の大御所ともいうべき「菅野沖彦」氏による「改良後のLE8T」に対するコメントがあったので紹介しておこう。
「このスピーカーの素晴らしさは積極的に訴えかけてきながらバランスを損なわないで、きちんと全帯域にわたってコントロールされている点ですね。マルチウェイシステムに比べれば周波数レンジは狭いわけですが、それほどレンジの狭さは感じさせない。
特に高音域の繊細な弦の感じは不満なく出てくるんです。それに中音から低音にかけての積極的な押し出しもよく再現されますので、とりたててどこかに欠陥があるかと探しても見当たらないわけですね。やはり全帯域型としてもっともウェルバランスでしかも万人が納得せざるを得ないようなソースの質感を素直に出してくれるスピーカーという感じです。
欲を言えばクラシックよりもジャズにちょっと不満があることです。テナーサックス独特のダーティなサウンドが出ずに、滑らかにしなやかになってしまうんですね。これは今までのLE8Tに対するぼくのイメージとちょっと違うところです。」。
以上のとおりだが、加えて資料の中に再現されたウェスタンエレクトリック仕様のバッフルに取りつけられた「LE8T」の写真があった。
「バッフル」と一口に言ってみても、こんなに凄いモノがあるとは想像もしなかった。
おそらく、これが究極かつ本来の「LE8T」の音だろうと推察している。
この本格的な「バッフル」に一度挑戦してみたい気もするが部屋のスペースが足りないのが残念(笑)。