「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~「タンノイ・ウェストミンスター」の今と昔~

2011年06月28日 | オーディオ談義

日頃、我が家の第二システムとして「アキシオム80」の後塵を拝しているタンノイのウェストミンスター」。

購入してもう15年以上になるだろうか。

今でこそ第二システムになっているものの、自分のオーディオ歴の中でまさに”酸いも甘いも”知り尽くしたスピーカーである。

購入したときのエピソードも鮮明に覚えている。

当時、もう欲しくて、欲しくて堪らずとうとう業者に発注したのはいいけれど、そのことをずっと切り出せないままに、自宅に到着する前日になってようやく「カミさん」に告白したところ、物凄い怒りをかって1週間ほど口をきいてもらえなかった想い出も今となっては懐かしい。

五味康祐さん(故人、作家)の「西方の音」などの著作に傾倒し、圧倒的な影響を受けていたのでずっとタンノイの大ファンだった。

まず始まりは当時「黄金の組み合わせ」といわれたラックスのSQ38FD(真空管プリメインアンプ)とタンノイの「スリー・エル・ゼット(オリジナル・イン・キャビネット)」で出発、そのうちスケール感が物足りなくなって15インチのユニットを使った「インパルス15」に移行。

この「インパルス15」(現在は友人宅)にも飽き足りなくなって、とうとう「ウェストミンスター」に行き着いてしまった。

使い出してから5年ほどはおとなしくしていたものの、やはりジャズがまったく鳴ってくれないのがこのSPの致命的な弱点だった。ベースの切れが鈍いし、シンバルの響きも実に冴えない。

何とかクラシックもジャズも両方聴けるようにしたいものだと、そこから果てしない迷走が始まった。

まずネットワークに懐疑の眼差しを向け、思い切って「裏蓋」を開けて配線を切断し、独自にコイルとコンデンサーを使って自作した。もちろんユニットへの接続は全てハンダ付け。

いまだに記憶に残っているが、最初の「裏蓋」開けのときに何だか神聖な領域に土足で踏み入るような気がして実に緊張したものだった。

今となってはタンノイも営利を目的とした普通のメーカーで、随所に手を抜いているのが分かっているので神格化する気持ちは毛頭なし。

しばらくすると、もっと欲が出てきてとうとうタンノイのユニットを取り外してJBLの130Aユニットを取り付けた。

これは同じサイズの口径38cmなので簡単だったが、
当然、中高域のユニットもJBLで統一。中域にLE85ドライバー、高域にはツィーターの075を配置。

結局、タンノイのボックスにJBLのユニットをズラリと配置するという前代未聞のシステムが出来上がった。

これはこれで、しばらく満足していたものの、やっぱりタンノイのあの芒洋(?)とした低音も捨てがたいような味があって懐古に浸ることもしばしば。

結局、JBLのユニットは”切れ”はいいものの、あのバックロードホーンを利用した深々とした低音の再生は無理だと分かったのでオリジナルのユニットに戻したのがつい1年ほど前。

そういうふうに、あれこれ悩んでいたときに出会ったのが「アキシオム80」だった。クラシックもジャズも両方いける「自分の求めてきた音はこれだ」と一気にフォーカスが定まった。

爾来”タンノイそっちのけ”でまい進し、苦労の連続だったアキシオムさんも最近どうにか思い通りに鳴ってくれるようになったのでようやく一段落。

そうなると、「虞や、虞や、汝を如何せん」(項羽)
ではないけれど、ようやく「ウェストミンスターを如何せん」と眼を向けるゆとりが生じてきた。

ちなみに、日頃このウェストミンスターだけで音楽を聴く分には何ら不満は感じないのだが、アキシオム80と比べて聴くとどうしても、音像が1枚も2枚もベールを被っている印象を受ける。

やはり、何事につけ「比較対照」は大切で、細部に亘って相互の弱点をきちんと認識できるところがいい。

そういうわけでシステムが二つ以上あると、いろいろと探求の間口が広がってオーディオはさらに面白くなる。
 

それに、どんなに「いい音」でも毎日、「同じ音」ばかり聴いていると飽きが来る。人間の脳は単調さを
嫌うのでときどき目移りさせてやるほうが長い目で見るとシステムが長持ちする。

とにかくテレビの視聴用に限定しているウェストミンスターを何とかもっとうまく鳴らせたいものかと、つい最近のことだが”ひと工夫”してみた。

基本テーマは「プアな中高域の改善」と「雄大な低域の再生」。

☆ 中高域ユニットの差し替え

周知のとおりタンノイのユニットは同軸2ウェイとして中高域のホーンを内蔵しているが、率直に言ってこの帯域(1000ヘルツ~)がちょっと弱い。

そこでこれを使わない代わりにJBLのLE85ドライバーにウッドホーンを装着してウェストミンスターの上に載せてみた。

   

  

色合いがピッタリなのであまり違和感を感じない。音象定位のほうが多少犠牲になるものの情報量の豊かさを求めてみた。駆動するアンプは2台目の「PX25」真空管シングルアンプ。   
                        
     
           

☆☆ 雄大な低域の再生

これまでウェストミンスターを骨の髄までしゃぶってきた経験から言わせてもらうと、この長大なバックロードホーンを十分に生かした低音を再生しようと思えば駆動するアンプに相当のパワーが求められる。

電源対策に特別の工夫を凝らしたアンプは別として、たかだか10ワット程度の真空管アンプではこのSPの能力を充分に引き出せない。

以前、福岡のオーディオ仲間のO君がタンノイの「GRFメモリー」を強力な出力菅「845」のプッシュプルアンプで鳴らしていると聞いて「成る程」と思ったことがある。

五味康祐さんはオートグラフをマッキンの「275」(KT88プッシュプル)で鳴らしていたが、とにかく強力な駆動力を持ったアンプを低域用に使うことがタンノイの大型SPをうまく鳴らすコツだと思う。

自分の場合は、高出力の真空管アンプを持ってないので、スペアとして保有している4台のケンウッドの「01-A」アンプ(出力100ワット、パワーアンプに改造)のうちの1台を持ってきた。

☆☆☆ 自作のネットワーク

結局、今回の改造は低域には従来どおりタンノイのユニットを使い、中高域にJBLのドライバーを使うという異色の組み合わせとなった。

オリジナルのネットワークは”さらさら”使う気になれないので当然のごとく、コイルとコンデンサーの手持ち部品を使っての自作。

低域と中高域のクロスを1000ヘルツ前後に設定し低域のスロープを12dbとし、中高域については6dbのスロープに決定。

次に「クロスオーバーネットワーク早見表」をチェックしてコイルとコンデンサーを選択。

(コイルとコンデンサーを駆使してクロスオーバーを自在に設定するのはオーディオの醍醐味のひとつ。)

汚い楽屋裏を見せるようで気が引けるが、「百聞は一見にしかず」で次の写真を。(低域用のコイルはウェスタン社の「鉄芯入り」ですぞ!)

        

さ~て、これで聴くウェストミンスターの音は?

ウ~ン!

一番心配していたヴァイオリンの音色もウッドホーンのおかげで実に柔らかい響き。JBLのピアノはもとより定評があるので言うに及ばず。

取り分け印象に残ったのが木管楽器(クラリネット)で適度の膨らみを帯びて音響空間にふんわりと漂い、これはと思わず絶句
。アキシオムを上回る要素があるのを発見!

おっと、調子に乗ってあまりしゃべりすぎるとヤバイ。

「こいつは日頃からややオーバーな表現をして自慢気味のところがある」と、読者の皆さんにきっと思われているに違いない。

あまり嫌われたくないのでこれ以上のコメントは差し控えるが、まったく第二システムにしておくのは勿体ないような音・・・。


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