「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~「音楽と絵画は一緒?」~

2009年04月04日 | 音楽談義

「音楽とオーディオ」が取り持つ縁で、メールの交換をしている高校時代の同窓生たちが福岡から我が家のオーディオ装置の試聴にやって来てくれた。

S藤君、U都君、O畑君の3名。いずれも昨年4月のメンバーと同じだが、そのうちO部君は重要な職責を担っているため日程の都合がつかず残念なことに今回はお留守番。

3月30日(月)というのは年度末も押し迫っての平日ということで何とも中途半端な日になるが、大分の
「ふぐ刺し」がそろそろ終了の時期になるという理由で半分決まったようなもの。

結局、今回の訪問目的も「聴く気半分」「食い気と飲み気半分」といったところだが、音楽を聴いた後で音質やオーディオ装置の批判(?)をしながら気心の知れた友だちと泊り込みでワイワイ言いながら春の宵に一献傾けるというのは至福の楽しみである。

別府インター近くのレストランで待ち合わせし、満開の桜並木を通って我が家まで先導し13時頃から試聴を開始。

最初の試聴盤は最近聴くことの多いワディム・レーピンが弾く「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」。そもそもワディム・レーピンを知るきっかけになったのはO畑君のブログによる推奨なのでもちろん異論のないところ。

やっぱり”レーピンはいいなあ~”と一同傾聴したが、音楽家(桐朋学園大学卒で指揮科専攻)のO畑君は”オーディオ”にはまったく無関心だが、この装置ではヴァイオリンの弓の”返し”がはっきり分かるほど実に鮮明に再生しているなあと感心していた。

ただし「指揮者は誰?」、「リッカルド・シャイー」だけどと答えると「ゲヴァントハウスの演奏にしてはドイツ的な重厚な響きが足りない」。

また、S藤君はレーピンにいたく感心し、この演奏を聴くと定評のある「オイストラフ」でさえ必要ないとまで極言する。(ブラームスのヴァイオリン協奏曲に限っての話だが)。

ただし、「アキシオム80」(中高域専用のSPユニット)の個性である高域の独特な響きが一長一短あって6000Hz前後で少し暴れ気味とはオーディオに造詣の深いU都君の弁。

この辺はたしかに論議があるところでジャズのシンバルなどの生々しい再生にはピッタリ向いていて大きな魅力の一つになるが、クラシックの場合にはやや歪みすぎの印象を与えるのかも。難しいところだがクラシックもジャズも両方聴きたいと欲張っている装置なのでこれは承知の上で片目をつぶらざるを得ないところ。

次の試聴盤は、これまたO畑君推奨のピアニスト「キーシン」による
「ショパンのバラード一番。」名曲である。一音出ただけで、「スタンウェイ」だなとO畑君。じっと聴いていたS藤君はヴァイオリンよりもピアノの音の方が(この装置では)「自分の好み」だと”さりげない”一言。

ピアノはクラシックもジャズにも共通の楽器だがヴァイオリンはクラシックオンリーの楽器なので、この発言は自分にとってむしろ望むところ。

さて、手持ちの2曲を聴き終わったのでここでご持参のCDをかけてはと伺ったところ、O畑君がやおら取り出したのが、作曲家セルゲイ・プロコフィエフの「スキタイ組曲<アラとロリー>作品20。

指揮者はセルジュ・チェリビダッケ。           

チェリビダッケは、かってベルリン・フィルの常任指揮者をカラヤンと争ったほどの大物だがO畑君は卒業後ドイツに留学してこのチェリビダッケに師事していて随分と厳しい指導と練習だったそうだが、そのチェリビダッケの個性が最もよく発揮された曲目だという。1975年録音で演奏はシュトゥットガルト放送交響楽団。

この曲目の聴きどころは、各楽器の音の強弱と響かせ方にあり、横一列に並んだオーケストラの中で楽器ごとの音色が見事な遠近感をもって表現されることにより、演奏を聴いているとまるで「一幅の絵を見る思い」がするところだという。

ずっと以前、何かの本で「音楽と絵画の鑑賞は一緒」という言葉を見かけたことがあるが、「ナルホドそういう意味だったのか」とようやく合点がいった。

作曲家の手になる楽譜を演奏という行為で鑑賞する音楽(間接芸術)と画家が描いた作品を直接鑑賞する絵画(直接芸術)の違いこそあれ「いい歳をして今ごろ分かるなんて」と笑われそうでいささか遅きに失する感があるが、これまでメロディー主体の感性でもっていろんな曲目を追いかけていたのに、「こういうクラシックの鑑賞法と楽しみ方もあるなんて」と新たな発見。やはり凡人には独りよがりの世界は禁物であると痛感。

あとは、ジャズ好きのU都君が持参したCD盤キース・ジャレットの「スタンダーズ・ライブ」(1985年パリでの録音)、「モントルー・ジャズ・フェスティバル」(エリック・クラプトンほか4名)によるバンド”レジェンズ”の奇跡のステージをDVDで鑑賞したがいずれもいい録音で楽しませてもらったがこういうジャズを聴くと不思議にウィスキーかブランデーが欲しくなる。

その後、途中から合流したM平君の口ききで利用させてもらった湯布院の別荘に場所を移して「ふぐ刺し」「地鶏料理」「各地の銘酒」などを持ち込んで5人で夜遅くまで談笑したが、録音技師によって左右されてしまう再生音楽の限界などの話題から、とうとう眼、耳、鼻、歯などが衰えていくと残るは舌ということで
「人生最後の楽しみは酒」という話になってしまい海外旅行の豊富なO畑君から各地のとっておきのブランディーやウィスキー、ワインなど薀蓄の披露があった。

自分は「マッカラン18年」に格別の思い入れがあるがお酒談義は別の機会に譲るとしよう。

「マッカラン18年」 シングルモルト スコッチ・ウィスキー 

さて、翌日(31日)はかねて予約してお願いしていた湯布院のA永さん宅を4人で訪れてウェスタンの555ドライバーと15Aホーンを聴かせてもらった。チェリビダッケ指揮の「ブルックナーの8番」をはじめいろいろと聴かせてもらったが、相変わらずスケールの大きい図太い低音を堪能させてもらった。

「音のレンジ」を追いかけずに、一貫して「音の分厚さ」で勝負するA永さんのようなオーディオ愛好家は稀な存在だし、こういう力感のある音は全国でもそうそう聴くことは出来ないはずで貴重な体験として自分も紹介のしがいがあったというもの。

しかもA永さんはいまだに現状の音に満足することなくご自身の理想の音を求めているいわば「音の求道者」、マニア垂涎の真空管「DA100」の超ど級アンプの製作などにも意欲をみせられているので将来聴かせてもらうのが楽しみ。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする