僕の去って以来、10年ちかく経った実家の屋上に、
今年もアロエのバーミリオンな花たちが、
げんきいっぱいに、鮮やかに空へと向かっている。
長いあいだ、ちっとも水やりをしていないにも関わらず、
屋上に取り残してしまった草花たちは
ふしぎとげんきよく、いのちの響きを織りなしつづけている。
そんな今日、ふと想った。
僕が実家に住んでいたときは、毎朝
この屋上にあがってきて、時間を忘れて草木の世話をしていた。
とっても、やさしくて温かな、愛の空間だった。
「天空はこべステーション」と名前までつけて、
友達を呼んだり、パートナーとチャイを飲んだり、
稲刈りに祖母が来たり、夏の夜に父が虫の唄を聴きに寄ったりしていた。
誰も来なくなったいま、一見朽ち果ててみえるけれど、
ずっと息づきたる植物たちは、
もしかすると、
あの頃の思い出をたよりに、
また
あのころのような毎日を夢みて、
こうして生きつづけているのだと、
かんじてしまった。
僕はたまらず、土もない所に繁って
伸びてひらいている、アロエの花のひと房をそっと抱いて、
ささやいた。
「ありがとう。待っててくれて」◎☆☆
これからは、実家に行くたびに屋上を
ちょっとずつでも片づけて手を入れ、
お水を注ぎたい。
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