語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】蟻地獄あなたの帰り待つてます ~8月28日~

2017年08月29日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<大串章選>
 ①シャガールの恋人達や天の川 (大分県日出町)松鷹久子
 ⑥写真の裏父の遺筆や終戦日 (益田市)井下みね子
 ⑦巨船めく病院の灯や夏終る (伊勢崎市)小暮駿一郎
 ⑧昼寝にも初心達人ありにけり (川西市)上村敏夫
 【評】第一句。ロシアで生まれフランスに永住したシャガール。「天の川」が幻想的な絵を想(おも)わせる。(後略)

<稲畑汀子選>
 ③幽谷の一瀑のこし暮れにけり(西宮市)黒田國義
 ⑦あつけなく逝きたる母や髪洗ふ (徳島県松茂町)奥村里
 ⑧雲海に孤高の山の姿あり (川西市)日塔脩
 ⑨引き返す道消えて無き出水かな (旭川市)大塚信太
 【評】(前略)三句目。深山幽谷の水音だけが暮れた闇に残っている詩情。

<金子兜太選>
 ①蟻地獄あなたの帰り待つてます (長岡市)内山秀隆
 ③考へる人の片手の渋団扇(うちわ)(神戸市)高橋寛
 ⑤風といふ大敵来たる竿灯(かんとう)祭(多摩市)吉野佳一
 【評】内山さん。真っ黒なジョークは軽みの真骨頂。むしろ爽やか。(中略)高橋さん。団扇は動いているのか、止まっているのか。(後略)

<長谷川櫂選>
 ②野球部と書かれし西瓜(すいか)合宿所 (神戸市)藤井啓子
 ③老いといふ泉に耳を澄しけり (三郷市)岡崎正宏
 ⑥無花果(いちじく)の畑又消え全部消ゆ (福岡市)藤掛博子
 ⑨億年の一と日八月十五日 (みよし市)稲垣長
 【評】(前略)二席。練習が終わったら全員でかぶりつくのだ。三席。泉のたとえが新鮮。老いが果して泉であるか、地獄になるか、その人次第。

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年8月28日)
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