語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】君以外覚えず高二の文化祭 ~9月18日~

2017年10月16日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<長谷川櫂選>
 ①金亀子(こがねむし)手を貸さずとも起きにけり(一宮市)岩田一男
 ③君以外覚えず高二の文化祭 (筑後市)近藤史紀
 ④西鶴忌よくある別れ話かな (川越市)渡邉隆
 ⑦☆赤とんぼ虚空に翅(はね)を休めをり(米子市)中村襄介
 【評】一席。どうにかこうにか自力で起き直れる。手を貸すのは愛情だが、貸さぬのもまた愛情。人もまた。(中略)三席。不要のものはすべて消去して。記憶とは正直なもの。

<大串章選>
 ①地球てふ仮の住処(すみか)や鰯雲 (今治市)横田青天子
 ②老いてなほ野球少年獺祭忌 (向日市)松重幹雄
 ③餓死といふ戦死もありし敗戦忌 (高槻市)池田利美
 ④敬老会逢ひたき人の来てをらず (山口県田布施町)山花芳秋
 【評】第一句。人間は死んだら何処へ行くのだろう。骨になるだけだろうか。第二句。獺祭忌は正岡子規の忌日。子規は野球が大好きだった。第三句。銃弾や手榴弾で命を落とすだけでなく、食糧不足のため戦地で餓死する兵士もいた。

<稲畑汀子選>
 ①百日紅やうやく疲れ見えはじむ (奈良市)名和佑介
 ⑥☆赤とんぼ虚空に翅を休めをり(米子市)中村襄介
 【評】一句目。百日咲き続けると言われる百日紅も、花の終わりの疲れが見えてきた。長く愛でてきた作者の心の推移。(後略)

<金子兜太選>
 ①桔梗や先生の引く対角線 (立川市)星野芳司
 ②溶岩に木苺熟れてこぼれけり (熊谷市)内野修
 ③生きる者みな遺族なり曼珠沙華(まんじゅしゃげ) (尼崎市)ひじり純子
 ⑦消息は森の奥より法師蝉 (泉大津市)多田羅初美
 【評】星野さん。桔梗が上手(うま)い。直線的な花弁と対角線が重なり清潔感増す。内野さん。素朴な色彩の対比、夏の終わり。ひじりさん。みな遺族。このことに気づけば戦争はなくなる。十句目岸田氏。天候不順の夏は過ぎた。次は台風か。

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年9月18日)
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