語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】世界中でバッシング? ~加工肉での発がん性リスク~

2015年11月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)10月26日、世界保健機関(WHO)の外部組織の国際癌研究機関(IARC)は、発癌性の評価で、加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージ・コンビーフなど)を一番リスクの高い
   「グループ1(人に対して発癌性がある)」
に、レッドミート(赤肉)を二番目にリスクの高い
    「グループ2A(人に対しておそらく発癌性がある)」
に分類すると発表した。
 赤肉は、脂肪分の少ない赤身肉ではなく、
    「牛肉、豚肉、羊肉、馬肉、山羊肉などすべての哺乳動物の肉」
のことである。さらに、加工肉は
    「一日50g摂取するごとに、大腸癌のリスクが18%増加する」、
赤身肉は、
    「1日100g摂取するごとに、大腸癌のリスクが17%増加する」
としている。

 (2)すると、世界中からIARCに対してバッシングが起こった。
   「結論ありきでデータを歪曲した」【北米食肉協会】
   「ソーセージを食べることを恐れるべきではない」【ドイツ農相】
   「笑い種(ぐさ)」【オーストラリア農相】
など、食肉の大生産国や大消費国では、まるで「IARCはウソつき科学者集団」かのように批判した。そのためWHOは、「加工肉を食べないように要請するものではない」という声明を出さざるを得なくなった。

 (3)日本のマスコミ、専門家の間でも、どちらかというと批判的なコメントが多い。
 巨大な利益が絡む食肉と食肉加工肉だけに、「そのとおりだ」と肯定する意見は少ない。
 しかし、冷静に考えて、IARCが公表したことが間違ったとは言えない。 

 (4)日本の食品安全委員会は、
 「IARCの分類は発癌性を示す証拠があるかどうかを重視しており、ハザード(ヒトの研究に影響を及ぼす可能性のあるもの)の毒性の影響の強さや曝露量(食べる量)はあまり考慮していない。これをもって「食肉や加工肉のリスクが高い」とは言えない。多くの種類の食品をバランスよく食べることが大切だ」
 との見解を示している。
 つまり、リスクの大小は別として「発癌性がある」という見解を否定しているわけではない。

 (5)「2013年の調査では、日本人の赤肉・加工肉の摂取量は1日あたり63g(赤肉50g、加工肉13g)なので、大腸癌の発生に関して、日本人の平均摂取量の範囲であれば、リスクは無いか、あっても小さい」【国立がん研究センター】
 さらに、「食肉には、たんぱく質、ビタミンB、鉄、亜鉛などの健康維持に有用な成分も含まれているが、飽和脂肪酸も含まれているので、摂りすぎは動脈硬化からくる心筋梗塞のリスクが高くなり、少なければ脳卒中のリスクを高める」【同】

 (6)食品安全委員会と国立がん研究センターの両者が言っているのは、
   「食べる量が多くなければ問題ないだろう」
ということだ。逆に言えば、 
   「食べる量が多ければ問題だ」
ということだ。
 今回指摘されている赤肉と加工肉も、摂取量が多ければ
   「心筋梗塞だけでなく、大腸癌のリスクも高くなる」
というのが正しい見方ではあるまいか。加工肉13gはソーセージなら1本、ハムなら2枚程度だ。肉を食べてはいけないというわけではないが、
   「肉大好き人間は要注意」
ということになる。

 (8)「食肉は安全」というよりも「食肉はこういったリスクがある」ということを正直に伝えるべきだ。
 冷静なリスク評価を消費者に伝えたほうが、結果的には生産者や経済界にとっても利益になる。

□垣屋達哉「世界中でバッシングが巻き起こる 加工肉での発がん性リスク」(「週刊金曜日」2015年11月20日号)
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