hiyamizu's blog

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薬丸岳『罪の境界』を読む

2023年08月11日 | 読書2

 

薬丸岳著『罪の境界』(2022年12月15日幻冬舎発行)を読んだ。

 

幻冬舎の内容紹介

無差別通り魔事件の加害者と被害者。決して交わるはずのなかった人生が交錯した時、慟哭の真実が明らかになる感動長編ミステリー。「約束は守った……伝えてほしい……」それが、無差別通り魔事件の被害者となった飯山晃弘の最期の言葉だった。自らも重症を負った明香里だったが、身代わりとなって死んでしまった飯山の言葉を伝えるために、彼の人生を辿り始める。この言葉は誰に向けたものだったのか、約束とは何なのか。

 

明香里は、26歳の誕生日に恋人の航平が予約していた松濤の高級イタリアンに向かっていた。途中で航平は仕事で来られなくなったと連絡が入る。
明香里が怒ったまま渋谷のスクランブル交差点を横断中に、若い男(26歳の小野寺圭一)と目が合って、突然斧で襲われた。「死ね――死ね――」と遠くから聞こえる。明香里を助けてくれた男(48歳の飯山晃弘)は刺され倒れて死ぬ前に、明香里の耳元で、「約束は守った……伝えてほしい……」とつぶやく。

 

明香里は、全身を17か所刺されながらも、なんとか身体は回復したが、心に大きな傷を負い、静岡の実家に戻った。しかし、PTSDに悩まされ事件前の明るさはどこかに、家族ともうまくいかなくなって、航平とも距離を置き、酒びたりとなる。

やがて、飯山はどんな人だったのか、誰とどんな約束したのか、手掛かりがなかったが、なんとか調べ始め、必死に前を向いて生きていこうとする。

 

航平も、待ち合わせをドタキャンしたことを後悔し、原因となったわがままな担当作家に反感を持ち、担当を外され、明香里からは拒否されて会えない。

 

一方、風俗嬢にインタビューして週刊誌に記事を売り込むライターの溝口省吾は、母からひどい虐待を受けたという共通点を持つ通り魔の小野寺圭一に興味を持ち、何を望んで事件を起こしたか、調べ始める。

 

 

明香里の視点から、恩人・飯山の過去をたどる話と、ライター・溝口が犯人・圭一と面会するなど犯人側からの話が交互に繰り返されて、話は進んでいく。

 

 

本書は、地方新聞17紙に連載したものを加筆修正した。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

死刑にはなりたくないが、刑務所に入ったままでいたいと、一人だけ殺し、成功したとうそぶく犯人が実は母親……や、その母親が実は……という最後どんでん返し?はなかなか良い。

 

しかし、明香里を助けて死亡した飯山晃弘が死の間際に残した言葉の謎などは、ひっぱった挙句に普通!

 

全体に良く書けているが(えらそうに)、人をたどり、たどりしてついにたどり着く過程が長く、途中がダレル。

 

 

薬丸岳の略歴と既読本リスト

 

罪の境界

「人を殺した時点で人間ではなくなる。…少なくとも自分で人間だなんて語る資格はない」

「一線を越えてしまった〇〇……の願いを聞いてやるわけにはいかない。それが〇〇がとるべき最後の責任なんだ」

 

人の死は二度ある。一度目は肉体そのものの死で、二度目は人々の記憶から忘れ去られることだ。

 

コメント
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